【標準】置き換えて展開する
【基本】展開の公式では、簡単なケースでの式の展開を見ました。展開は分配法則を繰り返して使うと、必ず計算できるのですが、工夫をすることで計算量が減ることがあります。ここでは、「置き換えて展開すると計算が楽になる例」を見ていきましょう。
例題1
まずは、次の計算をしてみましょう。
$(x+y+3)(x+y-1)$
分配法則を使って地道に計算することもできます。しかし、よく見ると「同じ部分」が含まれていることに気づきます。この部分をまとめて考えることで、少し計算が楽になります。
計算量が減ることが分かるように、まずは何の工夫もなく展開してみます。
\begin{eqnarray}
& &
(x+y+3)(x+y-1) \\
&=&
x(x+y-1)+y(x+y-1)+3(x+y-1) \\
&=&
x^2 +xy-x +xy+y^2-y +3x+3y-3 \\
&=&
x^2 +2xy +y^2 +2x +2y-3 \\
\end{eqnarray}項が9個出てくるので、計算は面倒です。
しかし、$x+y$ をひとかたまりだと考えれば、少し楽になります。これを $A$ とおけば、元の式は\[ (A+3)(A-1)=A^2+2A-3 \]となることがわかるので、これを利用して計算すると
\begin{eqnarray}
& &
(x+y+3)(x+y-1) \\
&=&
(x+y)^2 +2(x+y) -3 \\
&=&
x^2 +2xy +y^2 +2x +2y-3 \\
\end{eqnarray}となります。計算がだいぶ楽になりました。
例題2
似たような計算ですが、次も解いてみます。
$(a-b+c)(a+b+c)$
今度は先ほどの例とは違って少し気づきにくいですが、$a+c$ が共通していますね。これを$X$とおけば、元の式は
$(X-b)(X+b)=X^2-b^2$となります。このことを利用して計算すると、次のようになります。
\begin{eqnarray}
& &
(a-b+c)(a+b+c) \\
&=&
(a+c)^2 -b^2 \\
&=&
a^2 +2ac +c^2 -b^2 \\
\end{eqnarray}これも、直接計算するより楽になりますね。
3項の和の2乗
最後に、これは計算量が減る話ではないですが、「置き換えて展開する」ことに関連するので紹介します。
これが成り立つことを示すには、まず $a+b$ を1つのかたまりとして考え、それから展開して計算するといいでしょう。次のように計算できます。
\begin{eqnarray}
& &
(a+b+c)^2 \\
&=&
(a+b)^2 +2(a+b)c +c^2 \\
&=&
a^2 +2ab +b^2 +2ac+2bc +c^2 \\
&=&
a^2 +b^2 +c^2 +2ab +2bc +2ca \\
\end{eqnarray}
文字の並び順についてですが、 $a$ を $b$ に、 $b$ を $c$ に、 $c$ を $a$ に入れ替えた場合、 $a^2\to b^2 \to c^2$ や $ab\to bc\to ca$ となります。このようにぐるぐる巡回するような順番のことを「輪環の順」(りんかんのじゅん)と呼びます。普通はアルファベット順で答えを書きますが、対称性を優先して輪環の順で答えを書くケースもあります。
おわりに
ここでは、置き換えて展開する例を見てきました。共通部分があれば、そこをまとめてから展開したほうといいことがわかりました。計算量が抑えられるんですね。
計算量が抑えられる、というのは、計算にかかる時間が減るということでもあるし、計算ミスを減らせるということでもあります。やみくもに展開する前に、少し工夫する余地はないか考えてみましょう。
なお、計算量を減らす方法には、「並び替えて展開する」(【標準】並び替えて展開する)という方法もあるので、そちらも確認しておきましょう。