【発展】三角比とヘロンの公式
【標準】三角比と三角形の面積では、三角形の3辺の長さがわかっているときに、その三角形の面積を求める問題を考えました。これを一般化したものは、「ヘロンの公式」と呼ばれています。ここでは、ヘロンの公式の紹介をします。
ちなみに、ヘロンの公式を紹介している教科書はありますが、基本的には高校の範囲では習わない公式です。
ヘロンの公式
辺 $\mathrm{AB}$, $\mathrm{BC}$, $\mathrm{CA}$ の長さを、それぞれ、 $c,a,b$ と書き、角 $\angle \mathrm{ CAB }$, $\angle \mathrm{ ABC }$, $\angle \mathrm{ BCA }$ の大きさを、それぞれ、 $A,B,C$ と書くことにします。
【標準】三角比と三角形の面積の例題のように、 $a,b,c$ がわかっているときに、この三角形の面積を求めましょう。
まず、余弦定理から、次のことがわかります。
\begin{eqnarray}
\cos A = \frac{b^2+c^2-a^2}{2bc}
\end{eqnarray}三角形の面積を求めるには、 $\sin$ が必要なので、相互関係から次のようにして求めます。少し複雑ですが、「2乗引く2乗」の因数分解を繰り返し使っているだけです。
\begin{eqnarray}
& &
\sin A \\[5pt]
&=&
\sqrt{1-\cos^2 A} \\[5pt]
&=&
\frac{\sqrt{ (2bc)^2-(b^2+c^2-a^2)^2 } }{2bc} \\[5pt]
&=&
\frac{\sqrt{ \{2bc +(b^2+c^2-a^2)\} \{2bc -(b^2+c^2-a^2)\} } }{2bc} \\[5pt]
&=&
\frac{\sqrt{ (b^2+2bc+c^2-a^2) (-b^2+2bc-c^2+a^2) } }{2bc} \\[5pt]
&=&
\frac{\sqrt{ \{(b+c)^2-a^2\} \{a^2-(b-c)^2 \} } }{2bc} \\[5pt]
&=&
\frac{\sqrt{ (b+c+a)(b+c-a)(a+b-c)(a-b+c) } }{2bc} \\[5pt]
\end{eqnarray}
これから、三角形の面積は、次のように計算できます。
\begin{eqnarray}
& &
\frac{1}{2} bc\sin A \\[5pt]
&=&
\frac{\sqrt{(a+b+c)(-a+b+c)(a-b+c)(a+b-c)} }{4}
\end{eqnarray}右辺は辺の長さだけで書かれた式なので、辺の長さがわかればそれだけで三角形の面積を出すことができます。
なお、この式が紹介されるときは、この形ではなく、次のような変形をすることが多いです。 $\displaystyle s=\frac{a+b+c}{2}$ とおくと、上の式の右辺は
\begin{eqnarray}
& &
\frac{\sqrt{(a+b+c)(-a+b+c)(a-b+c)(a+b-c)} }{4} \\[5pt]
&=&
\frac{\sqrt{2s(2s-2a)(2s-2b)(2s-2c)} }{4} \\[5pt]
&=&
\sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)} \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。通常は、このすっきりした形を使うことが多く、これを「ヘロンの公式」と呼びます。
確認
【標準】三角比と三角形の面積の例題で確認してみましょう。 $a=5$, $b=6$, $c=7$ の場合、 $s=9$ です。よって、この三角形の面積は
\begin{eqnarray}
\sqrt{9\times(9-5)\times(9-6)\times(9-7)}=6\sqrt{6}
\end{eqnarray}となります。確かに、一致してますね。
入試問題などでは、計算結果の確認として使うようにしましょう。高校数学の範囲外なので、記述式の答案には書かないほうが安全でしょう。入試問題の方も、ヘロンの公式を使って終わるだけの問題は出題されないはずですが。
おわりに
ここでは、3辺の長さから三角形の面積を求める公式、ヘロンの公式を見ました。少し複雑な式ですが、計算結果の確認で使える場面は多いので、余裕があれば覚えておきましょう。