【導入】指数関数・対数関数とマグニチュード
ここでは、指数関数や対数関数を学ぶ前に、これらがどういうときに役立つのかを見ていきます。
マグニチュード
地震が起こったとき、震度と一緒に「マグニチュードいくつ」という数字が発表されますよね。震度は各地域の揺れの大きさを表していますが、マグニチュードとは、その地震のエネルギーそのものの大きさを表しています。数値が大きいほどエネルギーは大きい、つまり、大きな地震だったことを表します。このマグニチュードは、よくニュースになるものだと、5から7くらいであることが多いですね。
ところでこのマグニチュード、数字が1増えると、エネルギーはどれほど大きくなるのでしょうか。また、2増えるとどうなるでしょうか。
マグニチュードという単位は、数字が1増えると、エネルギーは、約30倍になります。2増えたときは、60倍ではなく、1000倍になります。すごく大きな数になるんですね。マグニチュードが7だと、マグニチュードが1のときから考えれば6増えているので、1000倍の1000倍の1000倍、つまり、1000000000倍(10億倍)のエネルギーであることを表しています。
こんなに大きな数を聞いてもピンとこないですね。しかし、マグニチュードという指標を使えば、大きなエネルギーでも比較しやすくわかりやすい数字に置き換えて考えることができます。
水素イオン指数
先ほどは大きな数字の例を見ましたが、今度は小さくなる数字の例を見てみましょう。
酸性・アルカリ性というのを理科で学んだことがあると思います。これは、中性を境目にして、水素イオンの濃度の高さで分かれます。この濃度を表すものを「水素イオン指数」とよび、pH(ペーハー)という単位で表します。中性のpHが7で、これより小さい値なら酸性、大きい値ならアルカリ性となります。
だいたい、0から14の値になることが多く、7から離れるほど強くなります。具体例でいうと、純水のpHは7です。酸性の例では、お酢のpHは3、胃液のpHは1です。アルカリ性の例では、石鹸水が10、カビ取り剤が13です。(pHの値はおおよその値です)
このpHですが、1大きくなると、水素イオン濃度は、 $\dfrac{1}{10}$ となります。2大きくなると、さらに $\dfrac{1}{10}$ 倍されて、 $\dfrac{1}{100}$ となります。
なので、pHが7の中性のときから考えると、pHが14というのは、水素イオン濃度が $\dfrac{1}{10000000}$ 倍になるということです。
こんなに小さな数を聞いてもピンとこないし、0の数も間違ってしまいそうですね。pHを使って表せば、わかりやすい数字に置き換えて考えることができます。
指数関数・対数関数
ここまでに紹介したように、自然界には大きすぎる数字や小さすぎる数字を扱うことがよくあります。また、比較をするときに、差があり過ぎて比較しづらいこともあります。
こうした場合に、新しい単位を導入して、「値が1増えたら、10倍を表すようにしよう」といったルールを導入すると、今まで扱いづらかった数字が、急に扱いやすくなることがあります。実際、マグニチュードや水素イオン濃度の例からもわかるように、新しい単位を導入することで、数字がわかりやすくなりましたね。
この「値が1増えたら、10倍を表す」というのは、数学的に言えば、 $10^x$ を考えているのと同じです。具体的に計算すると、10の2乗から3乗に変化すれば、10倍になりますね。指数関数の分野では、こうした $y=10^x$ などといった関数を扱っていきます。
また、この変換の逆を行う必要もあるでしょう。「マグニチュードが2増えれば、エネルギーは1000倍になるようにしよう」というだけでは不十分で、「エネルギーが基準値の $a$ 倍になったということは、マグニチュードはいくつかな?」も計算できないといけません。こうした計算は、対数関数の分野で学んでいくことになります。この話からも分かる通り、対数関数は指数関数の逆にあたります。
おわりに
ここで見たきたように、指数関数・対数関数を学ぶことで、大きすぎる数字や小さすぎる数字を扱ったり、比較・計算することが易しくなったりします。また、両者は、お互いに逆の変換となっています。これらを踏まえ、指数関数・対数関数を学んでいきましょう。