【応用】漸化式と等比数列の極限
ここでは、漸化式が与えられている数列の極限値を求める問題を考えます。一般項が求められないのに、極限値は求められる、という例を見ていきます。
一般項を求めずに数列の極限値を求める準備
あまり見たことのない形の漸化式ですね。両辺を2乗したくなりますが、2乗したところで、やはりよくわかりません。そもそも、この数列の項を具体的に書いていくと
\begin{eqnarray}
a_2 &=& \sqrt{2} \\[5pt]
a_3 &=& \sqrt{2+\sqrt{2} } \\[5pt]
a_4 &=& \sqrt{2+\sqrt{2+\sqrt{2} }} \\[5pt]
a_5 &=& \sqrt{2+\sqrt{2+\sqrt{2+\sqrt{2} }} } \\[5pt]
\end{eqnarray}となり、求めたい極限というのは、\[ \sqrt{ 2+\sqrt{ 2+\sqrt{ 2+\sqrt{ 2+ \cdots} }} } \]という形になります。なんだかすごい式ですね。この第 $n$ 項をきれいな式で求めるのは、少し難しそうです。しかし、以下で見るように、極限値だけは求めることができます。
【標準】漸化式と等比数列の極限で見たように、極限値の予想はすることができます。収束すると仮定して、この極限値を $\alpha$ とおきましょう。すると、漸化式の\[ a_{n+1}=\sqrt{a_n+2} \]で、 $a_n,a_{n+1}$ を $\alpha$ に置き換えた式\[ \alpha=\sqrt{\alpha+2} \]が成り立ちます。どちらも $\alpha$ に収束するからですね。この方程式を解けば、 $\alpha\geqq 0$ であることから、 $\alpha=2$ となります。
よって、もし収束すれば、その極限値は $2$ となります。が、まだ、収束するかどうかはわからないので、今の時点では、「極限値の予想」でしかありません。まだ答えにはできませんが、これは重要な情報です。
一般項を求めずに数列の極限値を求める
答えの予想ができたところで、今度は収束することを示すことにしましょう。
これはよくあるテクニックなのですが、 $a_n\to 2$ を示すよりも、 $a_n-2\to 0$ を示すほうが簡単になることが多いです。さらに、はさみうちの原理を使うことを見越して、 $|a_n-2|\to 0$ を示すことにしましょう。こうすれば、 $|a_n-2|$ より少し大きい、 $0$ に収束するものを見つければOKとなります。片方は「0以上」なので、この形にするとはさみやすくなります。
漸化式があるので、これを利用して $a_{n+1}-2$ を変形していきましょう。【標準】数列の極限で見たような、有理化の変形も行っていきます。
\begin{eqnarray}
|a_{n+1}-2|
&=&
|\sqrt{a_n+2}-2| \\[5pt]
&=&
\left| \frac{(a_n+2)-2^2}{\sqrt{a_n+2}+2} \right| \\[5pt]
&=&
\frac{|a_n-2|}{\sqrt{a_n+2}+2} \\[5pt]
&\leqq&
\frac{1}{2}|a_n-2| \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。最後の不等式は、ルートの部分が0以上だから成り立つことがわかります。
すべての自然数について、\[ |a_{n+1}-2|\leqq \frac{1}{2}|a_n-2| \]が成り立つので、これを繰り返し用いれば、\[ 0 \leqq |a_n-2| \leqq \left(\frac{1}{2}\right)^{n-1}|a_1-2|=\left(\frac{1}{2}\right)^{n-2} \]となります。右辺は $n\to\infty$ のとき、 $0$ に収束するので、はさみうちの原理から、 $|a_n-2|\to 0$ となること、つまり、\[ \lim_{n\to\infty} a_n=2 \]となることがわかります。これで、予想が正しいことがわかりました。
このように、極限値を予想して、それをもとに収束することを示せることがあります。問題には誘導がついていることもありますが、極限値が予想できる場合は、予想してから考えるといいと思います。
なお、この極限は、【発展】無限多重根号で、値だけを求めたことはあります。ただ、収束することが示せないと、この計算にはあまり意味がありません。【標準】漸化式と等比数列の極限で見たように、「無限大=無限大」という形になってしまっている可能性があるからです。上で見たような、収束することを示してはじめて、予想した極限値の値が意味を持つようになります。
おわりに
ここでは、漸化式から数列の一般項を求めずに、極限値を求める問題を見ました。極限値を予想し、その差の絶対値が $0$ に収束することを示す、というのは、よくある流れです。 $0$ に収束することを示す方法は数列によって異なりますが、上で見た方法は、その中でも典型的なものの1つです。