【応用】文字の入った絶対値の計算
ここでは、絶対値の中に文字が入っている場合の計算について見ていきます。一次不等式を習っていないので今の時点では定期テストには出てこないかもしれませんが、入試では普通に出題される内容なので、ここで紹介しておきます。
一次不等式を習っていなくても内容がわかるようにしていますが、一次不等式を知っているとより理解しやすいと思います。
絶対値の復習
さて、【基本】絶対値で書いた通り、実数の絶対値は、次のように定義されるのでしたね。
\begin{eqnarray}
| x |
=
\begin{cases}
x & ( x \geqq 0 ) \\
-x & ( x \lt 0 )
\end{cases}
\end{eqnarray}絶対値が含まれている式では、絶対値を含まない式に変形しないと計算できないことがあります。ただ、絶対値は、中身が0以上か負かによって、外し方が変わってきます。0以上の場合はそのまま外し、負の場合はマイナスを掛けて外します。
これを踏まえて、次の例題を解いてみましょう。
例題1
絶対値の外し方は、$a-1$ が0以上か負かで変わってきますが、正か負か決まっているわけではありませんよね。 $a=2$ のときは正だし、$a=0$ のときは負です。aの値によって状況が変わるので、場合分けをして考えなくてはいけません。
場合分けは、中身が0以上か、負かで行います。
まずは、中身が0以上のとき、つまり、$a\geqq 1$ のときを考えましょう。このときは、そのまま絶対値を外すことができるので、
\begin{eqnarray}
a-1 &=& 2 \\
a &=& 3
\end{eqnarray}となります。これは、$a\geqq 1$ の条件を満たしていますね。なので、これは解になります。
次に、中身が負のとき、つまり、$a\lt 1$ のときです。このときは、マイナスをつけて絶対値を外すことになります。
\begin{eqnarray}
-(a-1) &=& 2 \\
-a+1 &=& 2\\
-a &=& 1\\
a &=& -1\\
\end{eqnarray}これは、$a\lt 1$の条件を満たしています。なので、これも解になります。
以上から、求める答えは、$a=3,-1$となります。2つとも答えになります。実際、元の式に代入してみると成り立つことが分かります。
それぞれの場合に分けて答えを出した後は、その範囲内に収まっているかどうか、確認する必要があります。なぜそのような確認が必要なのかは、次の例題を見てみるとわかるでしょう。
例題2
絶対値が複数ある場合は、それぞれの絶対値が0以上か負かで場合分けします。次の問題を解いてみましょう。
それぞれの絶対値が0以上か負かで場合分けをします。1つ目の絶対値は、$x\geqq 0$ か $x\lt 0$ かで分かれますね。また、2つ目の絶対値は、$x\geqq 3$ か $x\lt 3$ かで分かれます。なので、少しめんどくさいですが、$x\lt 0$, $0\leqq x \lt 3$, $3\leqq x$ の3つの場合分けが必要です。
$x\lt 0$ のときは、次のようになります。
\begin{eqnarray}
-2x-(x-3) &=& 9 \\
-2x-x+3 &=& 9\\
-3x &=& 6\\
x &=& -2\\
\end{eqnarray}今は $x\lt 0$ の場合を考えていますが、 $x=-2$ は $x\lt 0$ を満たすので、 $x=-2$は解になります。
$0\leqq x \lt 3$ のときは、次のようになります。
\begin{eqnarray}
2x-(x-3) &=& 9 \\
2x-x+3 &=& 9 \\
x &=& 6 \\
\end{eqnarray}$x=6$ という答えが出てきましたが、今考えている範囲は $0\leqq x \lt 3$ なので、これは解にはなりません。実際、 $x=6$ としても、元の式は成り立ちません。
最後に、$3\leqq x$ のときです。
\begin{eqnarray}
2x+(x-3) &=& 9 \\
3x &=& 12 \\
x &=& 4 \\
\end{eqnarray}$3\leqq x$ の範囲を考えているので、$x=4$ は解になります。
以上から、$x=-2,4$ が解となります。
場合分けをしたら、それぞれの場合にあっているかどうか、確認しないといけません。この例題の2つ目のケースでは、 $0\leqq x\lt 3$ の場合を考えていたのに、 $x=6$ という値が出てきてしまいました。これは、範囲外の値なので、除かなくてはいけません。
おわりに
ここでは、文字の入った絶対値の計算を見てきました。次がポイントになります。
絶対値を外すためには、場合を分けて計算していかなくてはいけません。絶対値を外した後は、普通の計算と同様に解きます。最後に、考えている範囲にあってるかどうかのチェックをすれば答えになります。