【基本】直線のベクトル方程式と成分
ここでは、直線のベクトル方程式を成分を使って表し、直線の方程式と関連していることを見ていきます。
直線のベクトル方程式と成分
2点 $\mathrm{ A }(2,-3)$, $\mathrm{ B }(-4,2)$ を通る直線について考えてみましょう。
この直線のベクトル方程式は、【基本】2点を通る直線のベクトル方程式で見たように、媒介変数 t を用いて\[ \vec{p}=(1-t)\vec{a}+t\vec{b} \]と表すことができます( $\vec{a}$, $\vec{b}$ は A, B の位置ベクトル、 $\vec{p}$ は、この直線上の点 P の位置ベクトル)。
これを成分を用いて表してみましょう。 P の位置ベクトルを $(x,y)$ で表します( P の座標が $(x,y)$ である、ということと同じ意味です)。これを用いれば、
\begin{eqnarray}
(x,y)
&=&
(1-t)\vec{a}+t\vec{b} \\[5pt]
&=&
(1-t)(2,-3)+t(-4,2) \\[5pt]
&=&
(2(1-t),-3(1-t))+(-4t,2t) \\[5pt]
&=&
(2(1-t)-4t,-3(1-t)+2t) \\[5pt]
&=&
(-6t+2,5t-3) \\[5pt]
\end{eqnarray}と変形することができます。
このことから、この直線上の点の座標は、 t を使って、次のように書くことができます。
\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
x=-6t+2 \\
y=5t-3
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}このように、媒介変数 t を用いて直線上の点の座標を表したものを、媒介変数表示と呼びます。
なお、この2つの式から、 t を消すことができます。1つ目の式を5倍し、2つ目の式を6倍して辺々足せば\[ 5x+6y=-8 \]が得られます。これは $(2,-3)$, $(-4,2)$ を通ることがわかるので、直線の方程式となっているんですね。同じ直線を考えているので、媒介変数表示を経由しても、【基本】ある2点を通る直線の方程式と同じ直線の方程式が得られます。
直線の媒介変数表示
上では、直線の媒介変数表示が出てきました。
\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
x=-6t+2 \\
y=5t-3
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}これです。これは、 t を消して $5x+6y=-8$ とすることができ、さらに $y=-\dfrac{5}{6}x-\dfrac{4}{3}$ と変形することもできます。
最後の式(3つ目の式)は、 x を $1$ 増やすと $\dfrac{5}{6}$ 減ることがわかりますね。2つ目の式は、 x を動かしたときに y がどう変化するかは、わかりにくいです。1つ目の媒介変数表示も、わかりにくいですね。
媒介変数表示は、 x, y の関係はわかりにくいのですが、 t を動かしたときに、 x, y がどう変化するかはすぐにわかります。上の場合なら、 $t$ を $1$ 増やすと、 $x$ は $6$ 減り、 $y$ は $5$ 増えることがわかります。ベクトルの成分表示から導かれたことを考慮すれば、このように変化することはすぐにわかりますね。
「媒介」というのは、もともと、「間に立って仲立ちをすること」という意味です。 x, y の間に立って、 $x,t$ の関係、 $y,t$ の関係を使って、 x, y の関係を表そうとしています。
直線の場合は、 t を消すことで、直線の方程式が導けます。そのため、「どうしてわざわざ媒介変数表示を使うんだろう」と、思う人がいるかもしれません。ただ、将来、もっと複雑な例(しかし、グラフはきれいな例)を見ることになります。そのときのために、今、ベクトルの分野で媒介変数表示について、軽く確認しておこう、というのがここの趣旨です。
おわりに
ここでは、直線のベクトル方程式を成分で表示してみました。直線の媒介変数表示があらわれ、さらに直線の方程式も導くことができました。媒介変数表示は、将来、別の分野でも出てくることがあるので、こうした表示にも慣れておくようにしましょう。