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【応用】ベクトルの終点の存在範囲(直線)

ここでは、ベクトルの終点の存在範囲を求める問題を見ていきます。係数の和が1になることを利用する問題を取り上げます。

📘 目次

2点を通る直線のベクトル方程式の復習

【基本】2点を通る直線のベクトル方程式で見た内容を軽く復習しておきましょう。

異なる2点 $\mathrm{ A }(\vec{a})$, $\mathrm{ B }(\vec{b})$ を通る直線について考えます。この直線上の点 $\mathrm{ P }(\vec{p})$ は、ある実数 t を用いて\[ \overrightarrow{ \mathrm{ OP } }=\overrightarrow{ \mathrm{ OA } }+t\overrightarrow{ \mathrm{ AB } } \]と書けることから、これを整理して\[ \vec{p}=(1-t)\vec{a}+t\vec{b} \]と書けるのでしたね。また、係数の和が $1$ なので、 $s+t=1$ として\[ \vec{p}=s\vec{a}+t\vec{b} \]とも書けるのでした。

ここまでの話は、【基本】2点を通る直線のベクトル方程式で見た内容です。以下では、少し見方を変えてみましょう。

先ほどは、直線 AB を式で表す、と考えましたが、逆に、式がどんな図形を表すか、と考えてみましょう。同じことですが、視点を少し変えるわけですね。 $s+t=1$ という条件で\[ \vec{p}=s\vec{a}+t\vec{b} \]を満たしながら s, t が動く場合、点 P が動く範囲(存在する範囲)は、直線 AB を表します。先ほど見た内容を逆に考えているだけですね。

ここで重要なのは、和が $1$ である、ということです。

ここまでの内容を踏まえて、次の問題を考えてみましょう。

ベクトルの終点の存在範囲

例題
平行四辺形 ABCD がある。 AB, AD の中点をそれぞれ E, F とし、 AE, AF の中点をそれぞれ G, H とする。
また、 $\overrightarrow{ \mathrm{ AP } }=s\overrightarrow{ \mathrm{ AE } }+t\overrightarrow{ \mathrm{ AF } }$ とする。
(1) $s+2t=1$ を満たしながら s, t が動くとき、点 P の存在範囲を求めなさい。
(2) $s+2t=2$ を満たしながら s, t が動くとき、点 P の存在範囲を求めなさい。

先ほど見た式と見比べると、係数が少し変わっていますね。 $\overrightarrow{ \mathrm{ AP } }=s\overrightarrow{ \mathrm{ AE } }+t\overrightarrow{ \mathrm{ AF } }$ という式は、基準が A になっていますが、ここは先ほど見た内容と同じように考えられます。しかし、(1)では、 $s+2t=1$ となっています。もちろん、 $s+t=1$ であれば、先ほど見た通り、点 P の存在範囲は、直線 EF です。では、 $2t$ となっていたら、どうすればいいでしょうか。

これは、ベクトルのほうをいじって調整します。

ベクトルの係数の和が $1$ であれば、 P の存在範囲はすぐにわかります。 $s+2t=1$ の方はこれ以上いじれないので、ベクトルの係数に $s, 2t$ が出てくるように、次のように無理やり変形していきます。
\begin{eqnarray} \overrightarrow{ \mathrm{ AP } } &=& s\overrightarrow{ \mathrm{ AE } }+t\overrightarrow{ \mathrm{ AF } } \\[5pt] &=& s\overrightarrow{ \mathrm{ AE } }+2t \times \frac{1}{2}\overrightarrow{ \mathrm{ AF } } \\[5pt] &=& s\overrightarrow{ \mathrm{ AE } }+2t\overrightarrow{ \mathrm{ AH } } \\[5pt] \end{eqnarray}こうすると、係数の和 $s+2t$ が $1$ となるように動くことになるので、点 P の存在範囲は、直線 EH となることがわかります。

(2)は、 $s+2t=2$ なので、そもそも和が $1$ ではありません。しかし、これは両辺を $2$ で割って、 $\dfrac{1}{2}s+t=1$ とすれば、とりあえず和は $1$ となります。

あとは先ほどと同じように、ベクトルのほうをいじって、 $\dfrac{1}{2}s+t=1$ が使える形にします。つまり、
\begin{eqnarray} \overrightarrow{ \mathrm{ AP } } &=& s\overrightarrow{ \mathrm{ AE } }+t\overrightarrow{ \mathrm{ AF } } \\[5pt] &=& \frac{1}{2}s \times 2\overrightarrow{ \mathrm{ AE } }+t\overrightarrow{ \mathrm{ AF } } \\[5pt] &=& \frac{1}{2}s \overrightarrow{ \mathrm{ AB } }+t\overrightarrow{ \mathrm{ AF } } \\[5pt] \end{eqnarray}となります。よって、点 P の存在範囲は、直線 BF となることがわかります。

ベクトルの式の係数の和が $1$ になるように、ベクトルの式を変形する、という点がポイントです。

おわりに

ここでは、ベクトルの終点の存在範囲を見てきました。係数の和が $1$ のときなら存在範囲がすぐにわかるので、 $1$ でないときは $1$ となるように変形していく、という方針で考えましょう。

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