【基本】数量の関係を文字を使った式で表そう
ここでは、2つの数量の関係を式で表す方法を見ていきます。
等しいことを表す式
【基本】一次式の加法や減法などで、一次式同士の和や差を求める方法などを見てきました。このような、2つの一次式に対して、足したり引いたりするだけでなく、比較をしたいこと・比較を表したいこともあります。
例えば、「120円のジュースを $x$ 本買い、140円のパンを買ったら、500円だった」という状況を考えてみましょう。この場合、「ジュースとパンを合わせた代金」と「500円」とが、同じ値を表します。このような「等しいこと」を式で表してみましょう。
ジュースの代金は $120\times x=120x$ 円です。これに140円を合わせたものが、500円になります。このように、2つの量が同じであることを表すには、等号「=」を使って、次のように書きます。\[ 120x+140=500 \]このように、等号を用いて、2つの数量が等しいことを表した式を、等式(equality) といいます。等号の左の部分を左辺、右の部分を右辺と呼び、両方を合わせて両辺と呼びます。
等式では、左辺と右辺は同じなので、両辺を入れ替えた式も成り立ちます。先ほどの例であれば、\[ 500=120x+140 \]という等式で表すこともできる、ということです。ただ、一般的には、片方が数字だけなら、そちらを右辺にすることが多いです。
大小関係を表す式
先ほどは、等しいことを表す式を見ましたが、片方が大きいことを表したいこともあります。
例えば、「120円のジュースを $x$ 本と140円のパンを買って、500円より安くなるようにしたい」という状況を考えてみましょう。今回も、「ジュースとパンを合わせた代金」と「500円」との関係ですが、今回は、前者が後者よりも小さくなる、という状況ですね。
このように、2つの量を比べたときに、片方が大きい・小さいことを表すには、不等号を使います。不等号は、後で紹介するように4種類ありますが、今の場合は、 $\lt$ という記号を使い、次のように表します。\[ 120x+140\lt 500 \]このように、不等号を用いて、2つの数量の関係を表した式を、不等式(inequality) といいます。不等号の左の部分を左辺、右の部分を右辺と呼び、両方を合わせて両辺と呼びます。この呼び方は等式の場合と同じですね。
不等号は4種類あります。
記号 | 読み方 | 意味 |
---|---|---|
$\lt$ | 小なり | 左辺が右辺より小さい (左辺が右辺未満) |
$\gt$ | 大なり | 左辺が右辺より大きい |
$\leqq$ | 小なりイコール | 左辺が右辺より小さい、 または、両辺が等しい (左辺が右辺以下) |
$\geqq$ | 大なりイコール | 左辺が右辺より大きい、 または、両辺が等しい (左辺が右辺以上) |
口が広がっている方が、大きいことを表している、と覚えるといいでしょう。
以上や以下の「以」という字には、「それを含む」という意味があります。そのため、「3以下」と言った場合、「3でもいいし、3より小さくてもいい」ことになります。「3未満」と言った場合は、3は含みません。
等式では、両辺を入れ替えてもよかったのですが、不等式の場合は単純に入れ替えてはいけません。例えば、\[ 120x+140\lt 500 \]という不等式の場合、 $500$ のほうが大きいのだから、両辺を入れ替えたい場合は、不等号の向きも反対にして\[ 500 \gt 120x+140 \]としないといけません。どちらが大きいかを考えれば、両辺を入れ替えたときに、不等号の向きを変えないといけないことがわかるでしょう。
例題
(1) 1冊 $a$ 円のノートを3冊買って500円払ったら、おつりは $b$ 円だった。
(2) 縦 $a$ cm、横 $b$ cm、高さ $c$ cmの荷物がある。この3辺の合計が60cm以下だった。
(3) $x$ kmの道のりを時速60kmで走ったところ、3時間かからずに到着した。
(4) あるエレベーターでは、600kg以上の重さが乗るとブザーが鳴る。このエレベーターに、体重80kgの人が $x$ 人、50kgの人が $y$ 人乗ったところ、ブザーが鳴った。
(1)は、おつりが $b$ 円だったのだから、「おつり= $b$ 」という等式を作ればいいですね。ノートの代金は $3a$ 円なので、500円払ったときのおつりは $(500-3a)$ 円です。なので、\[ 500-3a=b \]という等式で表すことができます。
(2)は、荷物を送るときに、3辺の合計によって値段が決まっていることがあるので、このような計算をすることがあります。3辺の合計は、3つの数を足して $(a+b+c)$ cmとなります。これが60cm以下なので、\[ a+b+c\leqq 60 \]という不等式で表すことができます。
(3)は、実際にかかった時間を式で表すと $\dfrac{x}{60}$ 時間となります。3時間かかっていないのだから、3より小さいということですね。なので、\[ \dfrac{x}{60} \lt 3 \]という不等式で表すことができます。
(4)は、エレベーターに乗った人たちの体重を全部合わせると、600kg以上になる、ということですね。エレベーターに乗った人たちの体重は、 $80x+50y$ と表すことができるので、\[ 80x+50y \geqq 600 \]という不等式で表すことができます。
等式や不等式の表し方は一通りではありません。例えば、(1)では、「ノートの代金とおつりを合わせれば500円になる」と考えて\[ 3a+b=500 \]という等式で表すこともできます。(3)では、「時速60kmで3時間走った距離よりも $x$ kmのほうが短い」と考えて\[ x \lt 180 \]という不等式で表すこともできます。ただ、はじめのうちは、できる限り問題文に沿った数式で表す練習をしたほうがいいでしょう。
おわりに
ここでは、2つの数量が等しいという関係や、大きい・小さいといった関係を表す方法について見てきました。これからもよく出てくる内容です。