【基本】和の記号Σの性質
ここでは、和の記号 $\sum$ の性質について見ていきます。
和の記号Σの性質
和の記号 $\sum$ を使えば、長い和の式を簡単に書けるのでした。\[ \sum_{k=1}^n a_k =a_1+a_2+\cdots+a_n \]上の通り、 $\sum$ の記号と、その上下にある $k=1$ と $n$ が、「 $a_k$ の $k$ の部分を $1$ から $n$ まで足す」ことを意味します。
足す順番を変えても答えは変わらないため、一般的に次の式が成り立ちます。
\begin{eqnarray}
& &
(a_1+b_1)+(a_2+b_2)+(a_3+b_3) +\cdots+(a_n+b_n) \\[5pt]
&=&
(a_1+a_2+a_3+\cdots+a_n) \\
& &+(b_1+b_2+b_3+\cdots+b_n) \\[5pt]
\end{eqnarray}これを $\sum$ を使って表せば、次のようになります。\[ \sum_{k=1}^n (a_k+b_k)=\sum_{k=1}^n a_k+\sum_{k=1}^n b_k \]
また、定数倍について、掛けてから足しても、足した後に掛けても答えは変わらないため、次の式が成り立ちます。
\begin{eqnarray}
& &
ca_1+ca_2+ca_3+\cdots+ca_n \\[5pt]
&=&
c(a_1+a_2+a_3+\cdots+a_n) \\
\end{eqnarray}これを $\sum$ を使って表せば、次のようになります。\[ \sum_{k=1}^n ca_k=c\sum_{k=1}^n a_k \]この c は k と関係のない定数です。
これらは、どちらも計算をするときに、とてもよく使います。自然な性質なので、特に意識しなくても使えるかもしれませんが。
Σの性質を使った計算
先ほど見た性質を使って、式を分解します。
\begin{eqnarray}
& &
\sum_{k=1}^n (k^2-2k+1) \\[5pt]
&=&
\sum_{k=1}^n k^2 -2\sum_{k=1}^n k +\sum_{k=1}^n 1 \\[5pt]
\end{eqnarray}1つ目の $\sum$ は、2乗の和の公式が使えます(参考:【基本】和の公式(2乗の和))。2つ目は、自然数の和の公式が使えます(参考:【基本】和の公式(1からnまでの和))。最後は、 $1$ を n 回足すことになるので、和は $n$ ですね。よって、全体の和は
\begin{eqnarray}
& &
\frac{1}{6}n(n+1)(2n+1) -2\times \frac{1}{2}n(n+1)+n \\[5pt]
&=&
\frac{n}{6} \left\{(n+1)(2n+1) -6(n+1)+6\right\} \\[5pt]
&=&
\frac{n}{6} (2n^2+3n+1-6n-6+6) \\[5pt]
&=&
\frac{n}{6} (2n^2-3n+1) \\[5pt]
&=&
\frac{n(n-1)(2n-1)}{6} \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。これが答えです。
なお、この和は、別の求め方もできます。\[ \sum_{k=1}^n (k^2-2k+1) \]のカッコ内を見て気づいた人がいるかもしれませんが、この部分は因数分解できます。\[ \sum_{k=1}^n (k-1)^2 \]これがどういう和になるかを、具体的に書いてみると、次のようになります。
\begin{eqnarray}
0^2+1^2+2^2+\cdots+(n-2)^2+(n-1)^2
\end{eqnarray}つまり、2乗の和です。 $(n-1)^2$ までなので、2乗の和の公式 $\dfrac{1}{6}n(n+1)(2n+1)$ の n の部分を $n-1$ で置き換えて
\begin{eqnarray}
& &
\frac{1}{6}(n-1)(n-1+1)\{ 2(n-1)+1 \} \\[5pt]
&=&
\frac{1}{6}(n-1)n(2n-1) \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。先ほどと同じ答えになります。
$\sum$ の計算は、もちろん公式を使って解く方法も重要ですが、後者のように具体的に書き出して、どういう和を求めればいいかを考えてから計算する方法も大事です。後者のようなやり方もあることを覚えておきましょう。
おわりに
ここでは、 $\sum$ の性質を見た後、具体的な計算を行いました。少なくとも、和の公式を使って計算できるようにしておきましょう。