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【標準】和の記号Σと部分分数分解

ここでは、 $\sum$ を使った計算のうち、部分分数分解を用いるものを見ていきます。【基本】和の記号Σと部分分数分解よりも、少し複雑なものを見ていきます。

📘 目次

部分分数分解を用いた和その1

例題1
次の和を計算しなさい。\[ \sum_{k=1}^n \frac{1}{(2k-1)(2k+1)} \]

【基本】和の記号Σと部分分数分解で見た内容を応用して、この和を求めてみましょう。

$\dfrac{1}{(2k-1)(2k+1)}$ の部分は、通分してこういう結果になったのだ、と考え、「何から何を引けばこうなるかな」というふうに考えます。分母の形から考えると、\[ \frac{1}{2k-1}-\frac{1}{2k+1} \]のような形に変形できるのではないか、と予想できます。ただ、これを計算しても、元には戻りません。分子が $2$ になってしまいます。なので、 $2$ で割れば、元に戻ります。つまり、\[ \frac{1}{(2k-1)(2k+1)}=\frac{1}{2} \left(\frac{1}{2k-1}-\frac{1}{2k+1}\right) \]が成り立つということです。これを利用して、具体的に和を書き出すと、
\begin{eqnarray} & & \frac{1}{2} \left(\frac{1}{1}-\frac{1}{3}\right) \\[5pt] & & + \frac{1}{2} \left(\frac{1}{3}-\frac{1}{5}\right) \\[5pt] & & + \frac{1}{2} \left(\frac{1}{5}-\frac{1}{7}\right) \\[5pt] & & + \cdots \\[5pt] & & + \frac{1}{2} \left(\frac{1}{2n-1}-\frac{1}{2n+1}\right) \\[5pt] \end{eqnarray}となります。右上と左下が相殺されていき、最終的に残るのは、最初と最後だけ、つまり、 \begin{eqnarray} \frac{1}{2} \left(\frac{1}{1}-\frac{1}{2n+1}\right) &=& \frac{n}{2n+1} \end{eqnarray}となることがわかります。実際、 $n=2$ などとしてみると、あっていることが確認できます。

部分分数分解を用いた和その2

例題2
次の和を計算しなさい。\[ \sum_{k=1}^n \frac{2}{k^2+2k} \]

$\dfrac{2}{k^2+2k}$ に着目します。これは、$\dfrac{2}{k(k+2)}$ となることから、これも、差に分けることができます。元に戻ることを確認しながら変形すると、\[ \frac{2}{k(k+2)}=\frac{1}{k}-\frac{1}{k+2} \]となります。このことから、和を書き出してみると、
\begin{eqnarray} & & \frac{1}{1}-\frac{1}{3} \\[5pt] & & +\frac{1}{2}-\frac{1}{4} \\[5pt] & & +\frac{1}{3}-\frac{1}{5} \\[5pt] & & +\frac{1}{4}-\frac{1}{6} \\[5pt] & & + \cdots \\[5pt] & & +\frac{1}{n-1}-\frac{1}{n+1} \\[5pt] & & +\frac{1}{n}-\frac{1}{n+2} \\[5pt] \end{eqnarray}となります。先ほどと似ているようで、違うことがわかるでしょうか。1行目の後半 $-\dfrac{1}{3}$ は、2行目の前半ではなく、3行目の前半に対応しています。2行目の後半 $-\dfrac{1}{4}$ も、4行目の前半と対応しています。

つまり、次の行ではなく、次の次の行と対応しているわけですね。

このことから、残るものは何かを考えましょう。1行目の前半は残ります。また、今回は、2行目の前半も残ります。3行目の前半から、相殺が始まっていくわけですね。

最後の部分も変わってきます。前の前の行と相殺されることを考えると、最後の行の後半 $-\dfrac{1}{n+2}$ だけでなく、その前の行の $-\dfrac{1}{n+1}$ も残ることがわかります。

以上から、相殺後に残るものだけを寄せ集めると
\begin{eqnarray} & & \frac{1}{1}+\frac{1}{2}-\frac{1}{n+1}-\frac{1}{n+2} \\[5pt] &=& \frac{3}{2}-\frac{1}{n+1}-\frac{1}{n+2} \\[5pt] &=& \frac{3(n+1)(n+2)-2(n+2)-2(n+1)}{2(n+1)(n+2)} \\[5pt] &=& \frac{3n^2+9n+6-2n-4-2n-2}{2(n+1)(n+2)} \\[5pt] &=& \frac{3n^2+5n}{2(n+1)(n+2)} \\[5pt] &=& \frac{n(3n+5)}{2(n+1)(n+2)} \\[5pt] \end{eqnarray}となることがわかります。これが答えです。

ちなみに、「 $n=1$ のときはおかしなことになるのでは?」と思う人もいるかもしれません。\[ \frac{1}{1}+\frac{1}{2}-\frac{1}{n+1}-\frac{1}{n+2} \]の式をよく見ると、「足すものが2個残って、引くものが2個残る」という式になっています。 $n\geqq 2$ のときは確かにそうですが、 $n=1$ のときは2個ずつ残ることはありませんからね。

しかし、 $n=1$ のときは、そもそも上の式の中央の2項は消えます。なので、 $n=1$ のときにも、うまい具合に成り立つ式になっています。このことを答案に明示的に示したいときは、中央の2項が消えることを指摘し、「この式は $n=1$ の場合も成り立つ」と書くといいでしょう。

おわりに

ここでは、部分分数分解を用いて和を求める問題を見ました。上の後半の例のように、一つ飛ばしで相殺されることもあります。どのように変形すれば相殺できるようになるか、また、どのように相殺されるか、というのをよく確認しながら計算しましょう。

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