【基本】位置ベクトル
ここでは、平面上の点とベクトルとをつなぐ役割を持つ「位置ベクトル」について見ていきます。
位置ベクトルの導入
ベクトルというのは、向きと大きさを持ったものです(参考:【基本】ベクトル)。このベクトルを考えることで、基準を好きなところにして、軸も好きなものが使えるようになります(参考:【導入】ベクトルを考える意味について)。
座標では、原点を基準として、縦と横の方向を使うしかありませんでした。ベクトルの場合は、基準と軸を好きなように設定できるため、三角形や平行四辺形などの図形を扱うときには、考えやすくなるのでしたね(参考:【標準】ベクトルの内積と中線定理)。
ただ、毎回基準を選びたいというわけでもないんですよね。今までも $\overrightarrow{ \mathrm{ OA } }=\vec{a}$, $\overrightarrow{ \mathrm{ OB } }=\vec{b}$ などとおいてベクトルの問題を考えたことがありました。特に、座標平面上で図形を考える場合は、基準を原点にして、向きだけを自由に設定したい、ということが多いです。
そのため、基準を固定したベクトルを考えたい、という気持ちが出てきます。そこで出てくるのが「位置ベクトル」です。
位置ベクトル
平面上で、点 O を基準として固定します。このとき、平面上の点 P に対して、 $\overrightarrow{ \mathrm{ OP } }$ を「点 O に関する点 P の位置ベクトル(position vector)」と言います。
基準である点 O を固定しているので、終点を指定すればそれに対してベクトルが対応するので、それをその点の位置ベクトルと呼ぶわけですね。逆に、ベクトル $\vec{p}$ に対して、$\overrightarrow{ \mathrm{ OP } }=\vec{p}$ となる点 P が対応します。つまり、位置ベクトルは、点の位置と、ベクトルとを対応させるものなんですね。
点 P の位置ベクトルを $\vec{p}=\overrightarrow{ \mathrm{ OP } }$ で表すとき、これを記号で $\mathrm{ P }(\vec{p})$ と書きます。点と位置ベクトルとが対応している、ということがこの書き方にも表れていますね。
一般的に、位置ベクトルは、点のアルファベットを小文字にしたもので表すことが多いです。 $\mathrm{ A }(\vec{a})$ などという感じです。
また、普通、「位置ベクトル」と言った場合、点 O を基準としていることが多いです。
一般のベクトルと位置ベクトル
点 A, B の位置ベクトルを $\vec{a}$, $\vec{b}$ と表すとします。位置ベクトルの基準は O とします。
ベクトルを使うときには、 O 以外を基準とするベクトルを扱いたいこともあります。例えば、 $\overrightarrow{ \mathrm{ AB } }$ を扱いたい、という場合です。
この場合は、次のように変形すれば、位置ベクトルを用いて表すことができます。
\begin{eqnarray}
\overrightarrow{ \mathrm{ AB } }
&=&
\overrightarrow{ \mathrm{ AO } }+\overrightarrow{ \mathrm{ OB } } \\[5pt]
&=&
\overrightarrow{ \mathrm{ OB } }-\overrightarrow{ \mathrm{ OA } } \\[5pt]
&=&
\vec{b}-\vec{a} \\[5pt]
\end{eqnarray}このことから、どんなベクトルでも、位置ベクトルを用いて表すことができる、ということがわかります。
位置ベクトルが等しいとは
点 A, B の位置ベクトルを $\vec{a}$, $\vec{b}$ と表すとします。
もし、この2つの位置ベクトルが等しいならば、 $\overrightarrow{ \mathrm{ OA } }=\overrightarrow{ \mathrm{ OB } }$ が成り立ちます。 $\mathrm{O}$ から見た向きも距離も同じです。このことから、 A, B は同じ場所にある点だということがわかります。
位置ベクトルが同じなら、対応する点の位置も同じ。位置ベクトルがその点の位置を表しているのだから、当然ですね。
おわりに
ここでは、位置ベクトルについて見てきました。点の位置とベクトルとを対応させることにより、ベクトルを使って図形を考えることが、よりやりやすくなります。