【基本】数学と日常における「または」の違い
【基本】共通部分と和集合で、和集合の説明をするときに、次のように書きました。
2つの集合 A, B の少なくとも一方に属している要素全体の集合を、和集合(union)といいます。「A の要素、または、B の要素」ということです。両方に属していてもいいです。
実は、この文中に出てくる「または」という言葉は少しやっかいで、日常生活で使うときと数学の世界で使うときとで、意味が違うことがあるんですね。この記事ではその違いについて説明します。
数学と日常における「または」の意味の違い
日常生活で、「または」を使う場合、ほとんどのケースでは、「どちらか片方だけ」の意味で使います。暗黙のうちに、「片方だけ」を前提にしています。
例えば、天丼セットに「そば、または、うどんがつきます」と書いてあれば、そばかうどんか片方だけを選ぶのが普通です。「そばとうどん、両方ついてくる選択肢もある」と思う人はいません。
しかし、数学の世界では、「A の要素、または、B の要素」というと、どちらの集合にも属する場合を含みます。日常生活で使う「または」とは違いがあります。
「または」に関する表現
「または」は数学と日常とで意味が異なるという話を書きました。まぎらわしいですね。
もう一度状況を整理しておきましょう。世の中には、次の4つのケースがありえます。
- Xでもあり、Yでもある
- Xではあるが、Yではない
- Xではないが、Yではある
- XでもYでもない
日常生活の「または」は、2つ目と3つ目を対象としていて、数学での「または」は、1つ目から3つ目までを対象としています。ただ、これだと誤解が生まれることがあるので、数学では、別の表現が使われることがあります。それが「少なくとも一方」という言葉です。
冒頭の文章を言い換えれば、「 $A,B$ の少なくとも一方に属する要素」といった言い方になります。これなら、A だけ、B だけ、A と B 両方、この3パターンが含まれていることが明確になります。最低でも片方ならOK、両方でももちろんOKということです。
逆に、「両方の場合は除外したい」という場合、つまり、日常生活での使い方に寄せたい場合ですね。このときは、「どちらか一方のみ」という表現が使われます。冒頭の文章を言い換えれば、「$A,B$ のどちらか一方のみに属する要素」といった言い方になります。
なお、「両方のケースを含めるか含めないか」が文脈から明らかな場合は、「または」を使うことも多いです。
おわりに
「または」の意味の違いを見てきました。細かい話ではあるのですが、これによって文章の意味が異なってくる可能性があります。入試問題を解く場合でも、誤解によって致命傷を負うこともあります。文脈を正しく読み取りましょう。