【基本】累乗根
ここでは、平方根を拡張した累乗根について見ていきます。
累乗根
中学生のときに、2乗して $a$ になる正の数を $\sqrt{a}$ と書くことを学びました。これを平方根というのでしたね。平方とは、平方センチメートルなどで出てきたことからもわかりますが、2乗という意味です。
この「○乗して $a$ になる数」というのは、2乗以外の場合も考えられますね。「3乗して27になる数」なら3があてはまりますし、「4乗して16になる数」なら2があてはまります。
このように、 $n$ を正の整数とするとき、 $n$ 乗すると $a$ になる数、つまり、 $x^n=a$ となる $x$ のことを、 $a$ の $n$ 乗根(n-th root) といいます。
先ほどの例でいえば、「3は、27の3乗根」「2は、16の4乗根」となります。
平方根と2乗根は同じことです。また、3乗根のことは、立方根ということもあります。2乗根、3乗根、4乗根、…などをまとめて、累乗根(るいじょうこん)といいます。
累乗根を表す記号
ここでは、2の3乗根、つまり、 $x^3=2$ を満たす正の数 x の値がどうなるかを考えてみましょう。
$1^3=1$, $x^3=2$, $2^3=8$ だから、$x$ はこの間にある、つまり、\[ 1\lt x \lt 2 \]となることがわかります。大小関係は、3乗しても変わらないからです。
同様に計算して、 $1.2^3=1.728$, $1.3^3=2.197$ なので、\[ 1.2\lt x \lt 1.3 \]となります。 $1.25^3=1.953125$, $1.26^3=2.000376$ なので、\[ 1.25\lt x \lt 1.26 \]となります。以下、同じように繰り返していけば、次々に小数点以下の値が求まり、 $x^3=2$ を満たす正の数が特定できることがわかります(具体的な小数でかくことはできませんが)。
他の場合も同様に、正の数 $a$ に対して $x^n=a$ となる正の数 $x$ を1つだけ特定することができます。この $x$ を\[ \sqrt[n]{a} \]と表します。左上に $n$ がついていることに注意しましょう。先ほどの例を、この記号を使って書けば\[ \sqrt[3]{27}=3,\ \sqrt[4]{16}=2 \]となります。なお、2乗根の場合は、今まで通り、 $\sqrt{a}$ と書きます。左上の $2$ は省略されている、と考えます。
なお、定義から明らかですが、 $(\sqrt[n]{a})^n=a$ となります。「 $n$ 乗したら $a$ になる数」を $n$ 乗したのだから、結果は $a$ になる。定義をそのまま表している式です。
累乗根の性質
累乗根について見てきましたが、累乗根同士の計算をすることも出てきます。例えば、 $\sqrt[3]{2}\times\sqrt[3]{4}$ について考えてみます。
これ全体を3乗してみると
\begin{eqnarray}
& &
(\sqrt[3]{2}\times\sqrt[3]{4})^3 \\
&=&
(\sqrt[3]{2}\times\sqrt[3]{4})\times(\sqrt[3]{2}\times\sqrt[3]{4})\times (\sqrt[3]{2}\times\sqrt[3]{4}) \\
&=&
(\sqrt[3]{2})^3\times(\sqrt[3]{4})^3 \\
&=&
2\times4 \\
&=&
8
\end{eqnarray}となり、3乗して8になる正の数だから、 $\sqrt[3]{2}\times\sqrt[3]{4}=2$ となることがわかります。
この計算からもわかる通り、 $n$ が正の整数で、 $a,b\gt 0$ のとき、\[ (\sqrt[n]{a}\times\sqrt[n]{b})^n=ab \]が成り立つことが確かめられます。これより、 $\sqrt[n]{a}\times\sqrt[n]{b}$ は、 $n$ 乗すると $ab$ になる正の数であることがわかり、そういう数は1つしかないので、\[ \sqrt[n]{a}\times\sqrt[n]{b}=\sqrt[n]{ab} \]となることがわかります。
形式的に言えば、 $n$ 乗根同士の掛け算は、ルートの中身同士の掛け算になる、ということです。割り算の場合も同様に確かめられます。
また、 $m,n$ が正の整数のとき、 $\sqrt[m]{\sqrt[n]{a} }$ について考えてみます。これを $m$ 乗すると $\sqrt[n]{a}$ となり、さらに $n$ 乗すると $a$ になります。つまり、$mn$ 乗すると $a$ になる、ということです。こうなる正の数は1つしかないため、\[ \sqrt[m]{\sqrt[n]{a} }=\sqrt[mn]{a} \]となることがわかります。
このようにして、累乗根について、以下の性質が成り立つことを導くことができます。
- $\sqrt[n]{a}\sqrt[n]{b}=\sqrt[n]{ab}$
- $\dfrac{\sqrt[n]{a} }{\sqrt[n]{b} }=\sqrt[n]{\dfrac{a}{b} }$
- $(\sqrt[n]{a})^m=\sqrt[n]{a^m}$
- $\sqrt[m]{\sqrt[n]{a} }=\sqrt[mn]{a}$
- $\sqrt[n]{a^m}=\sqrt[np]{a^{mp} }$
確かめるためには、先ほどと同じようにして、両辺を何乗かして、一致することを確認します。
これらを使えば、\[ \dfrac{\sqrt[3]{2} }{\sqrt[3]{250} }=\sqrt[3]{\dfrac{2}{250} }=\sqrt[3]{\dfrac{1}{125} }=\frac{1}{5} \]という計算や\[ \sqrt{\sqrt[3]{729} }=\sqrt[6]{729}=3 \]といった計算ができるようになります。
おわりに
ここでは、累乗根について見てきました。累乗根の性質は、累乗根の計算をするときに使います。累乗根の計算に慣れていくようにしましょう。