【基本】数列の極限とはさみうちの原理
ここでは、大小関係のある複数の数列に関して、極限がどうなるかを見ていきます。
数列の極限と大小関係
2つの数列 $\{a_n\}$, $\{b_n\}$ について、すべての $n$ で、 $a_n\leqq b_n$ が成り立つときの極限について考えてみましょう。
どちらの数列も収束するとして、それぞれの極限値を $\alpha$, $\beta$ とします。それぞれの項で $a_n\leqq b_n$ が成り立つのだから、極限値の大小関係が逆になる、ということは考えられないですね。逆になるなら、途中で逆になっているはずでしょう。そのため、\[ \alpha \leqq \beta \]が成り立ちます。
少し注意が必要なのは、\[ a_n\lt b_n \]が成り立っている場合です。この場合、極限値については、\[ \alpha\leqq\beta \]が成り立ちます。「イコール」を外すことはできません。例えば、 $a_n=-\dfrac{1}{n}$, $b_n=\dfrac{1}{n}$ とすると、 $a_n\lt b_n$ がすべての $n$ で成り立ちますが、どちらの数列も $0$ に収束するので、極限値は同じ値になります。
また、 $a_n\leqq b_n$ がすべての $n$ で成り立つとき、 $n\to\infty$ のときに $a_n\to\infty$ なら、 $b_n\to\infty$ になることはわかるでしょう。小さい方でさえ正の無限大に発散するのだから、それより大きいものも正の無限大に発散するのは当然ですね。このことを「追い出しの原理」と呼ぶ人もいます。
一方、 $b_n\to\infty$ だとしても、 $\{a_n\}$ の極限値については何も言えません。発散するかもしれないし、収束するかもしれず、確定しません。
このとき、 $\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha, \lim_{n\to\infty}b_n=\beta$ ならば、 $\alpha\leqq \beta$ となる。
また、 $\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\infty$ ならば、 $\displaystyle \lim_{n\to\infty}b_n=\infty$ となる(追い出しの原理)。
数列の極限とはさみうちの原理
大小関係を利用して極限を求めるときによく使われるのが、「はさみうちの原理」というものです。
例えば、 $c_n=\dfrac{\sin n}{n}$ について考えてみましょう。「 $\sin n$ は、 $n$ ラジアンの $\sin$ 」ですが、具体的な値はよくわかりません( $\pi$ がついていないことに注意しましょう)。なので、少し考えにくいですね。
しかし、 $\sin$ の取りうる値は決まっています。 $-1$ から $1$ までの間の値しかとらないですね。なので、 $a_n=-\dfrac{1}{n}$, $b_n=\dfrac{1}{n}$ とすれば、\[ a_n \leqq c_n \leqq b_n \]が成り立ちます。しかも、 $\{a_n\},\{b_n\}$ の極限値なら、すぐに求められますね。どちらも $0$ に収束します。そうすると、間にある $c_n$ は逃げられず、やはり $0$ に収束するしかないことがわかります。
両方に挟まれ、その両方が同じ値に収束するなら、その間の数列も同じ値に収束する。直感的には自然な内容だと思いますが、この手法はよく使われるため、はさみうちの原理(squeeze theorem) と、名前がついています。
上の例では、 $c_n=\dfrac{\sin n}{n}$ の極限を考えるために、これをはさめる数列で、しかも、極限値の求めやすいものとして、 $a_n=-\dfrac{1}{n}$, $b_n=\dfrac{1}{n}$ を用いました。はさみうちの原理を使えば、極限を求められるようになるケースはありますが、具体的にどんな数列で挟むかは、状況によります。上のように、 $\sin$ を $-1$ と $1$ で挟むのは、よくある手法です。
おわりに
ここでは、数列極限が大小関係とどのように対応するか、はさみうちの原理はどういうものかを見てきました。直感的には当たり前に感じるかもしれませんが、はさみうちの原理は今後いろんなところで使っていくので、いろんなパターンを見ていくようにしましょう。