【基本】数列の極限(無限大÷無限大の形)
ここでは、数列の極限のうち、分母も分子も無限大に発散してしまう分数の極限がどうなるかを考えていきます。
分母も分子も無限大に発散する場合の極限の考え方
【基本】数列の極限の性質で見たように、数列 $\{a_n\}$, $\{b_n\}$ が収束し、極限値を $\alpha$, $\beta$ とすると、\[ \lim_{n\to\infty}\frac{a_n}{b_n}=\frac{\alpha}{\beta} \]となることを見ました。その際、「これが成り立つのはそれぞれの数列が収束するときだけであり、発散する場合は、状況によって違うため、その時々で考えなくてはいけない」ということを書きました。以下では、具体的に、どのように考えていけばいいかを見ていきます。
まず、上のリンク先で挙げた例\[ a_n=1+\frac{1}{n} \]について考えてみましょう。これは、 $n$ を大きくしていくと分数の部分は0に近づいていくため、\[ \lim_{n\to\infty}a_n=1 \]となります。ただ、これを次のように変形してみましょう。\[ a_n=1+\frac{1}{n}=\frac{n+1}{n} \]こうすると、最後の式の分数は、 $n$ を大きくすると「無限大÷無限大」の形になってしまいますね。逆に考えると、\[ \lim_{n\to\infty}\frac{n+1}{n} \]の場合は、そのまま考えるのではなく、\[ \lim_{n\to\infty}\left(1+\frac{1}{n}\right) \]と変形すれば、極限を求められるようになる、ということができます。
このような式変形をすることで、「無限大÷無限大」の形の極限を考えられるようになります。
分母も分子も無限大に発散する場合の極限の求め方
分母も分子も無限大に発散する場合、その分数の極限を求めるには、うまく変形すればいいと書きましたが、具体的にどのような変形をすればいいかを考えていきましょう。\[ \frac{3n-2}{2n+1} \]について考えてみます。これも先ほどと同じように変形すれば
\begin{eqnarray}
\frac{3n-2}{2n+1}
&=&
\frac{\frac{3}{2}(2n+1)-\frac{7}{2} }{2n+1} \\[5pt]
&=&
\frac{3}{2}-\frac{7}{2(2n+1)} \\[5pt]
\end{eqnarray}となります(参考:【基本】一次分数関数)。この最後の式を見ると、残った分数の部分は0に近づいていくので、\[ \lim_{n\to\infty}\frac{3n-2}{2n+1}=\frac{3}{2} \]と計算できます。
しかし、今の場合は、もっと簡単に考えることができます。というのも、「どのような値に近づいていくか」が分かればいいので、小さいところは無視していい、考えなくてもいいわけです。今の場合、分母と分子にある $3n-2$, $2n+1$ のうち、 $n$ がついているせいで大きくなるのだから、他の $-2$, $+1$ の部分は、あってもなくても結果には影響しないはずです。
このことをさらにはっきりさせるためには、分母と分子を $n$ で割って考えるといいでしょう。実際に割ってみると\[
\frac{3-\frac{2}{n} }{2+\frac{1}{n} } \]となります。分母と分子にある分数のところは、どんどん0に近づいていきます。こうなると、もはや「無限大÷無限大」の形ではなく、分母も分子も収束する形になっています。分母は $2$ に、分子は $3$ に収束することがわかるので、極限値が $\dfrac{3}{2}$ になることがわかります。
分母も分子も無限大になってしまう場合、「分母・分子を同じもので割り、どちらかが収束するように変形する」という方法で、極限値が求められるようになる場合があります。
分母も分子も無限大に発散する場合の極限を求める例
例えば、一般項が\[ \frac{4n^2-2n+1}{n^2+n} \]となる数列の極限はどうなるでしょうか。 $n$ が大きくなった時に、 $n,n^2$ がともに無限大に発散するため、このままでは「無限大÷無限大」の形になってしまいます。
ただ、大きくなるスピードは、 $n^2$ が一番早いですね。 $n^2$ から見れば、 $n$ や定数の影響はどんどん小さくなっていくはずです。なので、分母・分子を $n^2$ で割って\[ \frac{4-\frac{2}{n}+\frac{1}{n^2} }{1+\frac{1}{n} } \]とすれば、分母も分子も収束し、極限値は $4$ になることがわかります。
また、\[ \frac{4n-2}{n^2+n} \]の場合なら、分母・分子を $n^2$ で割れば、分子は $0$ に、分母は $1$ に収束するので、極限値は $0$ になることがわかります。
\[ \frac{4n^2-2n+1}{n+1} \]の場合なら、分母・分子を $n$ で割れば、分子は正の無限大に発散し、分母は $1$ に収束するので、全体では、正の無限大に発散することがわかります。
このように、分母・分子の値の大きさに一番影響を与えるところで分母・分子を割ると、極限が考えられるようになります。他にもパターンはありえますが、基本的な考え方はここに書いた通りです。
おわりに
ここでは、一般項が分数になるもので、分母・分子が無限大に発散するようなものの極限をどう求めるかを見てきました。基本的には、分母・分子を同じもので割り、どちらかを収束させるようにしてから考える、という流れになります。「影響が一番大きいところに着目する」という考え方に慣れていきましょう。