東京大学 文系 2021年度 第1問 解説
問題編
問題
$a$ を正の実数とする。座標平面上の曲線 $C$ を $y=ax^3-2x$ で定める。原点を中心とする半径 $1$ の円と $C$ の共有点の個数が $6$ 個であるような $a$ の範囲を求めよ。
考え方
三次関数のグラフと円との共有点、というのはそんなに見かける設定ではないですが、「どちらの曲線の上にもある」という条件を言い換えて考えていきます。相手が三次関数なので、図形的に考えることは難しいため、使える道具は限られます。あとは、よく見かける表現にどうやって言い換えていくかを考えましょう。
解答編
問題
$a$ を正の実数とする。座標平面上の曲線 $C$ を $y=ax^3-2x$ で定める。原点を中心とする半径 $1$ の円と $C$ の共有点の個数が $6$ 個であるような $a$ の範囲を求めよ。
解答例
共有点は $y=ax^3-2x$ 上の点なので、 $x$ 座標を $t$ とすると、 $(t,at^3-2t)$ と表すことができる。また、円上の点でもあるので\[ t^2+(at^3-2t)^2=1 \]が成り立つ。これを満たす実数 $t$ が6つある場合(重解は区別せずに1つと考える)を考えればよい。
この式は
\begin{eqnarray}
t^2+(at^3-2t)^2 &=& 1 \\[5pt]
t^2+a^2t^6-4at^4+4t^2-1 &=& 0 \\[5pt]
a^2t^6-4at^4+5t^2-1 &=& 0 \\[5pt]
\end{eqnarray}と変形できる。 $t^2=s$ とすると、最後の式は\[ a^2s^3-4as^2+5s-1=0 \]と変形できる。この式の左辺を $f(s)$ とおくと、 $f(s)=0$ が異なる正の解を3つ持つ場合を考えればよい。
\begin{eqnarray}
f'(s)
&=&
3a^2s^2-8as+5 \\[5pt]
&=&
(3as-5)(as-1) \\[5pt]
\end{eqnarray}なので、 $f'(s)=0$ とすると $s=\dfrac{1}{a}, \dfrac{5}{3a}$ である。これより、増減表は次のようになる。
\begin{array}{c|ccccc}
s & 0 & \cdots & \dfrac{1}{a} & \cdots & \dfrac{5}{3a} & \cdots \\
\hline
f'(s) & & + & 0 & - & 0 & + \\
\hline
f(s) & -1 & \nearrow & & \searrow & & \nearrow
\end{array}よって、 $f(s)=0$ が異なる3つの正の解を持つことは、 $f\left(\dfrac{1}{a}\right)\gt 0$ と $f\left(\dfrac{5}{3a}\right)\lt 0$ が成り立つことと同値である。
\begin{eqnarray}
f\left(\dfrac{1}{a}\right) & \gt & 0 \\[5pt]
\frac{a^2}{a^3}-\frac{4a}{a^2}+\frac{5}{a}-1 & \gt & 0 \\[5pt]
\frac{1}{a}-\frac{4}{a}+\frac{5}{a}-1 & \gt & 0 \\[5pt]
\frac{2}{a} & \gt & 1 \\[5pt]
a & \lt & 2 \\[5pt]
\end{eqnarray}であり、
\begin{eqnarray}
f\left(\dfrac{5}{3a}\right) & \lt & 0 \\[5pt]
\frac{125a^2}{27a^3}-\frac{4\cdot 25a}{9a^2}+\frac{5\cdot 5}{3a}-1 & \lt & 0 \\[5pt]
\frac{125}{27a}-\frac{100}{9a}+\frac{25}{3a}-1 & \lt & 0 \\[5pt]
\frac{125-300+225}{27a} & \lt & 1 \\[5pt]
50 & \lt & 27a \\[5pt]
a & \gt & \frac{50}{27} \\[5pt]
\end{eqnarray}であるから、共有点の個数が $6$ 個であるような $a$ の範囲は\[ \dfrac{50}{27} \lt a \lt 2 \]と求められる。
(終)