東京大学 文系 2020年度 第1問 解説
問題編
問題
$a\gt 0$, $b\gt 0$ とする。座標平面上の曲線\[C:\ y=x^3-3a x^2+b \]が、以下の2条件を満たすとする。
条件1: $C$ は $x$ 軸に接する。
条件2: $x$ 軸と $C$ で囲まれた領域(境界は含まない)に、 $x$ 座標と $y$ 座標がともに整数である点がちょうど1個ある。
$b$ を $a$ で表し、 $a$ のとりうる値の範囲を求めよ。
考え方
条件1はよく見るものですが、条件2はあまり見かけませんね。はじめは条件1だけを考えると、ある程度グラフの形が見えてきます。条件2はとりあえず後で考えましょう。
グラフの概形がわかったら、どういう状況があてはまるのか考えます。少し細かな評価が必要となります。
解答編
問題
$a\gt 0$, $b\gt 0$ とする。座標平面上の曲線\[C:\ y=x^3-3a x^2+b \]が、以下の2条件を満たすとする。
条件1: $C$ は $x$ 軸に接する。
条件2: $x$ 軸と $C$ で囲まれた領域(境界は含まない)に、 $x$ 座標と $y$ 座標がともに整数である点がちょうど1個ある。
$b$ を $a$ で表し、 $a$ のとりうる値の範囲を求めよ。
解答
$f(x)=x^3-3ax^2+b$ とすると、 $f'(x)=3x^2-6ax$ なので、 $f'(x)=0$ となるのは $x=0,2a$ のとき。 $a\gt 0$ なので、 $f(x)$ の増減表は次のようになる。
\begin{array}{c|ccccc}
x & \cdots & 0 & \cdots & 2a & \cdots \\
\hline
f'(x) & + & 0 & - & 0 & + \\
\hline
f(x) & \nearrow & b & \searrow & & \nearrow
\end{array}$b\gt 0$ なので、 $y=f(x)$ が $x$ 軸と接することは $f(2a)=0$ と同値。よって
\begin{eqnarray}
(2a)^3-3a\cdot(2a)^2+b &=& 0 \\[5pt]
8a^3-12a^3+b &=& 0 \\[5pt]
b &=& 4a^3 \\[5pt]
\end{eqnarray}となる。
これより、\[ f(x)=x^3-3ax^2+4a^3=(x-2a)^2(x+a) \]であり、 $y=f(x)$ のグラフは次のようになる。
次に、条件2について考える。 $x$ 軸と $C$ で囲まれた領域(境界は含まない)に、 $(m,n)$ が含まれるとする(m は整数、n は正の整数)。このとき、 $-a\leqq x \leqq 2a$ の範囲で $y=f(x)$ は $x=0$ で最大値をとることから、 $(0,n)$ もこの領域に含まれる。また、このとき、 $(0,1)$ もこの領域に含まれることがわかる。
以上から、条件2を満たすとすると、 $(0,1)$ だけがこの領域に含まれていることがわかる。
$(0,1)$ が含まれるための条件は $f(0)\gt 1$ である。つまり、 $a\gt\dfrac{1}{\sqrt[3]{4} }$ である。
さらに、 $-a\lt x\lt 2a$ の増減から、 $(0,1)$ 以外が含まれないことは、 $(0,2)$, $(1,1)$, $(-1,1)$ が含まれないことと同値である。
$(0,2)$ が含まれない条件は $f(0)\leqq 2$ なので、 $0\lt a\leqq \dfrac{1}{\sqrt[3]{2} }$ である。
$(1,1)$ が含まれない条件は $f(1)\leqq 1$ なので、 $a\gt 0$ も考慮すると、
\begin{eqnarray}
1-3a+4a^3 & \leqq & 1 \\[5pt]
4a^2 & \leqq & 3 \\[5pt]
0\lt a & \leqq & \frac{\sqrt{3} }{2} \\[5pt]
\end{eqnarray}である。
$(-1,1)$ が含まれない条件は $f(-1)\leqq 1$ である。これは、
\begin{eqnarray}
-1-3a+4a^3 & \leqq & 1 \\[5pt]
f(1)-2 & \leqq & 1 \\[5pt]
\end{eqnarray}だから、 $f(1)\leqq 1$ が成り立つときはつねに成り立つ。
ここで、\[ \left(\frac{1}{\sqrt[3]{2} }\right)^6=\frac{1}{4},\ \left(\frac{\sqrt{3} }{2}\right)^6=\frac{27}{64} \]だから、 $\dfrac{1}{\sqrt[3]{2} }\lt \dfrac{\sqrt{3} }{2}$ である。よって、 $(0,2)$, $(1,1)$, $(-1,1)$ が含まれないことは、 $0\lt a\leqq \dfrac{1}{\sqrt[3]{2} }$ が成り立つことと同値。
以上より、条件1, 2を満たすとき、 $b=4a^3$ であり、 $a$ の取りうる範囲は $\dfrac{1}{\sqrt[3]{4} } \lt a \leqq \dfrac{1}{\sqrt[3]{2} }$ である。
(終)