共通テスト 数学II・数学B 2023年度 第4問 解説
【第3問~第5問から2問選択】
問題編
問題
花子さんは、毎年の初めに預金口座に一定額の入金をすることにした。この入金を始める前における花子さんの預金は $10$ 万円である。ここで、預金とは預金口座にあるお金の額のことである。預金には年利 $1$ %で利息がつき、ある年の初めの預金が $x$ 万円であれば、その年の終わりには預金は $1.01x$ 万円となる。次の年の初めには $1.01x$ 万円に入金額を加えたものが預金となる。
毎年の初めの入金額を $p$ 万円とし、 $n$ 年目の初めの預金を $a_n$ 万円とおく。ただし、 $p\gt 0$ とし、 $n$ は自然数とする。
例えば、 $a_1=10+p$, $a_2=1.01(10+p)+p$ である。
(1) $a_n$ を求めるために二つの方針で考える。
方針1
$n$ 年目の初めの預金と $(n+1)$ 年目の初めの預金との関係に着目して考える。3年目の初めの預金 $a_3$ 万円について、 $a_3=\dBox{ア}$ である。すべての自然数 $n$ について\[ a_{n+1}=\dBox{イ}a_n+\dBox{ウ} \]が成り立つ。これは\[ a_{n+1}+\dBox{エ}=\dBox{オ}\left(a_n+\dbox{エ}\right) \]と変形でき、 $a_n$ を求めることができる。
$\dbox{ア}$ の解答群
0: $1.01\{1.01(10+p)+p\}$
1: $1.01\{1.01(10+p)+1.01p\}$
2: $1.01\{1.01(10+p)+p\}+p$
3: $1.01\{1.01(10+p)+p\}+1.01p$
4: $1.01(10+p)+1.01p$
5: $1.01(10+1.01p)+1.01p$$\dbox{イ}$ ~ $\dbox{オ}$ の解答群(同じものを繰り返し選んでもよい。)
0: $1.01$
1: $1.01^{n-1}$
2: $1.01^n$
3: $p$
4: $100p$
5: $np$
6: $100np$
7: $1.01^{n-1}\times 100p$
8: $1.01^n\times 100p$方針2
もともと預金口座にあった $10$ 万円と毎年の初めに入金した $p$ 万円について $n$ 年目の初めにそれぞれがいくらになるかに着目して考える。もともと預金口座にあった $10$ 万円は、2年目の初めには $10\times 1.01$ 万円になり、3年目の初めには $10\times 1.01^2$ 万円となる。同様に考えると $n$ 年目の初めには $10\times 1.01^{n-1}$ 万円になる。
- 1年目の初めに入金した $p$ 万円は、$n$ 年目の初めには $p\times 1.01^{\dBox{カ}}$ 万円になる。
- 2年目の初めに入金した $p$ 万円は、$n$ 年目の初めには $p\times 1.01^{\dBox{キ}}$ 万円になる。
- …
- $n$ 年目の初めに入金した $p$ 万円は、$n$ 年目の初めには $p$ 万円のままである。
これより
\begin{eqnarray} a_n &=& 10\times 1.01^{n-1}+p\times 1.01^{\dbox{カ}}+p\times 1.01^{\dbox{キ}}+\cdots+p \\[5pt] &=& 10\times 1.01^{n-1}+p \sum_{k=1}^n 1.01^{\dBox{ク}} \end{eqnarray}となることがわかる。ここで、 $\displaystyle \sum_{k=1}^n 1.01^{\dbox{ク}}=\dBox{ケ}$ となるので、 $a_n$ を求めることができる。$\dbox{カ}$, $\dbox{キ}$ の解答群(同じものを繰り返し選んでもよい。)
0: $n+1$
1: $n$
2: $n-1$
3: $n-2$$\dbox{ク}$ の解答群
0: $k+1$
1: $k$
2: $k-1$
3: $k-2$$\dbox{ケ}$ の解答群
0: $100 \times 1.01^n$
1: $100 (1.01^n-1)$
2: $100 (1.01^{n-1}-1)$
3: $n+1.01^{n-1}-1$
4: $0.01(101n-1)$
5: $\dfrac{n\times 1.01^{n-1}}{2}$(2) 花子さんは、10年目の終わりの預金が $30$ 万円以上になるための入金額について考えた。
10年目の終わりの預金が $30$ 万円以上であることを不等式を用いて表すと $\dBox{コ}\geqq 30$ となる。この不等式を $p$ について解くと\[ p\geqq \frac{\myBox{サシ}-\myBox{スセ}\times 1.01^{10}}{101\left(1.01^{10}-1\right)} \]となる。したがって、毎年の初めの入金額が例えば $18000$ 円であれば、10年目の終わりの預金が $30$ 万円以上になることがわかる。
$\dbox{コ}$ の解答群
0: $a_{10}$
1: $a_{10}+p$
2: $a_{10}-p$
3: $1.01a_{10}$
4: $1.01a_{10}+p$
5: $1.01a_{10}-p$(3) 1年目の入金を始める前における花子さんの預金が $10$ 万円ではなく、 $13$ 万円の場合を考える。すべての自然数 $n$ に対して、この場合の $n$ 年目の初めの預金は $a_n$ 万円よりも $\dBox{ソ}$ 万円多い。なお、年利は $1$ %であり、毎年の初めの入金額は $p$ 万円のままである。
$\dbox{ソ}$ の解答群
0: $3$
1: $13$
2: $3(n-1)$3: $3n$
4: $13(n-1)$
5: $13n$6: $3^n$
7: $3+1.01(n-1)$
8: $3\times 1.01^{n-1}$9: $3\times 1.01^n$
a: $13\times 1.01^{n-1}$
b: $13\times 1.01^n$
考え方
見た目が大変そうですが、よく見ると数列の問題としてはそんなに大変でもないです。方針1でも方針2でも考えることはできますが、解きやすい方で考えましょう。最後は、最初の違いが最終的にどのように影響するかを考えると、計算しなくても答えが出せます。
解答編
問題
花子さんは、毎年の初めに預金口座に一定額の入金をすることにした。この入金を始める前における花子さんの預金は $10$ 万円である。ここで、預金とは預金口座にあるお金の額のことである。預金には年利 $1$ %で利息がつき、ある年の初めの預金が $x$ 万円であれば、その年の終わりには預金は $1.01x$ 万円となる。次の年の初めには $1.01x$ 万円に入金額を加えたものが預金となる。
毎年の初めの入金額を $p$ 万円とし、 $n$ 年目の初めの預金を $a_n$ 万円とおく。ただし、 $p\gt 0$ とし、 $n$ は自然数とする。
例えば、 $a_1=10+p$, $a_2=1.01(10+p)+p$ である。
(1) $a_n$ を求めるために二つの方針で考える。
方針1
$n$ 年目の初めの預金と $(n+1)$ 年目の初めの預金との関係に着目して考える。3年目の初めの預金 $a_3$ 万円について、 $a_3=\dBox{ア}$ である。すべての自然数 $n$ について\[ a_{n+1}=\dBox{イ}a_n+\dBox{ウ} \]が成り立つ。これは\[ a_{n+1}+\dBox{エ}=\dBox{オ}\left(a_n+\dbox{エ}\right) \]と変形でき、 $a_n$ を求めることができる。
$\dbox{ア}$ の解答群
0: $1.01\{1.01(10+p)+p\}$
1: $1.01\{1.01(10+p)+1.01p\}$
2: $1.01\{1.01(10+p)+p\}+p$
3: $1.01\{1.01(10+p)+p\}+1.01p$
4: $1.01(10+p)+1.01p$
5: $1.01(10+1.01p)+1.01p$$\dbox{イ}$ ~ $\dbox{オ}$ の解答群(同じものを繰り返し選んでもよい。)
0: $1.01$
1: $1.01^{n-1}$
2: $1.01^n$
3: $p$
4: $100p$
5: $np$
6: $100np$
7: $1.01^{n-1}\times 100p$
8: $1.01^n\times 100p$
解説
(1)
$a_1=10+p$, $a_2=1.01 a_1+p$ なので、
\begin{eqnarray}
a_3
&=&
1.01a_2 +p \\[5pt]
&=&
1.01(1.01a_1+p) +p \\[5pt]
&=&
1.01 \{ 1.01(10+p)+p \} +p \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。
$a_n$ に1年分の利息がつくと $1.01a_n$ であり、これに $p$ を追加したものが $a_{n+1}$ になるので\[ a_{n+1}=1.01a_n+p \]が成り立ちます。ここで、\[ x=1.01x+p \]とすると $x=-100p$ なので
\begin{eqnarray}
a_{n+1}+100p &=& 1.01a_n+p+100p \\[5pt]
a_{n+1}+100p &=& 1.01(a_n+100p) \\[5pt]
\end{eqnarray}が成り立ちます。
解答
ア:2 (2点)
イウ:03 (3点)
エオ:40 (3点)
解答編 つづき
問題
方針2
もともと預金口座にあった $10$ 万円と毎年の初めに入金した $p$ 万円について $n$ 年目の初めにそれぞれがいくらになるかに着目して考える。もともと預金口座にあった $10$ 万円は、2年目の初めには $10\times 1.01$ 万円になり、3年目の初めには $10\times 1.01^2$ 万円となる。同様に考えると $n$ 年目の初めには $10\times 1.01^{n-1}$ 万円になる。
- 1年目の初めに入金した $p$ 万円は、$n$ 年目の初めには $p\times 1.01^{\dBox{カ}}$ 万円になる。
- 2年目の初めに入金した $p$ 万円は、$n$ 年目の初めには $p\times 1.01^{\dBox{キ}}$ 万円になる。
- …
- $n$ 年目の初めに入金した $p$ 万円は、$n$ 年目の初めには $p$ 万円のままである。
これより
\begin{eqnarray} a_n &=& 10\times 1.01^{n-1}+p\times 1.01^{\dbox{カ}}+p\times 1.01^{\dbox{キ}}+\cdots+p \\[5pt] &=& 10\times 1.01^{n-1}+p \sum_{k=1}^n 1.01^{\dBox{ク}} \end{eqnarray}となることがわかる。ここで、 $\displaystyle \sum_{k=1}^n 1.01^{\dbox{ク}}=\dBox{ケ}$ となるので、 $a_n$ を求めることができる。$\dbox{カ}$, $\dbox{キ}$ の解答群(同じものを繰り返し選んでもよい。)
0: $n+1$
1: $n$
2: $n-1$
3: $n-2$$\dbox{ク}$ の解答群
0: $k+1$
1: $k$
2: $k-1$
3: $k-2$$\dbox{ケ}$ の解答群
0: $100 \times 1.01^n$
1: $100 (1.01^n-1)$
2: $100 (1.01^{n-1}-1)$
3: $n+1.01^{n-1}-1$
4: $0.01(101n-1)$
5: $\dfrac{n\times 1.01^{n-1}}{2}$
解説
1年目のはじめに入金した $p$ 万円は、 $n$ 年目のはじめでは $n-1$ 年分の利息がつくことになるので、 $p\times 1.01^{n-1}$ 万円となります。
2年目のはじめに入金した $p$ 万円は、 $n$ 年目のはじめでは $n-2$ 年分の利息がつくことになるので、 $p\times 1.01^{n-2}$ 万円となります。
同様に、 $k$ 年目のはじめに入金した $p$ 万円は、 $n$ 年目のはじめでは $n-k$ 年分の利息がつくことになるので、 $p\times 1.01^{n-k}$ 万円となります。特に、 $k=n$ のときは、 $p$ 万円のままです。
こうして
\begin{eqnarray}
a_n
&=&
10\times 1.01^{n-1}
+p\times1.01^{n-1}+p\times1.01^{n-2}+\cdots+p \\[5pt]
&=&
10\times 1.01^{n-1}
+p\sum_{k=1}^{n} 1.01^{k-1} \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。ここで、
\begin{eqnarray}
\sum_{k=1}^{n} 1.01^{k-1}
&=&
\frac{1.01^n-1}{1.01-1} \\[5pt]
&=&
100 (1.01^n-1) \\[5pt]
\end{eqnarray}から、$a_n$ を計算することができます。
解答
カキ:23 (2点)
ク:2 (2点)
ケ:1 (2点)
解答編 つづき
問題
(2) 花子さんは、10年目の終わりの預金が $30$ 万円以上になるための入金額について考えた。
10年目の終わりの預金が $30$ 万円以上であることを不等式を用いて表すと $\dBox{コ}\geqq 30$ となる。この不等式を $p$ について解くと\[ p\geqq \frac{\myBox{サシ}-\myBox{スセ}\times 1.01^{10}}{101\left(1.01^{10}-1\right)} \]となる。したがって、毎年の初めの入金額が例えば $18000$ 円であれば、10年目の終わりの預金が $30$ 万円以上になることがわかる。
$\dbox{コ}$ の解答群
0: $a_{10}$
1: $a_{10}+p$
2: $a_{10}-p$
3: $1.01a_{10}$
4: $1.01a_{10}+p$
5: $1.01a_{10}-p$
解説
(2)
10年目のはじめの預金が $a_{10}$ であり、10年目のおわりには利息がついて $1.01 a_{10}$ となります。なので、\[ 1.01 a_{10} \geqq 30 \]を解けばいいです。
方針2で考えると
\begin{eqnarray}
a_{10}
&=&
10\times 1.01^{10-1}+p\cdot 100 (1.01^{10}-1) \\[5pt]
&=&
10\times 1.01^9+100p(1.01^{10}-1) \\[5pt]
\end{eqnarray}となるので\[ 1.01 a_{10}=10\times 1.01^{10}+101p(1.01^{10}-1) \]だから、
\begin{eqnarray}
1.01 a_{10} & \geqq & 30 \\[5pt]
10\times 1.01^{10}+101p(1.01^{10}-1) & \geqq & 30 \\[5pt]
101p(1.01^{10}-1) & \geqq & 30-10\times 1.01^{10} \\[5pt]
p & \geqq & \frac{30-10\times 1.01^{10}}{101(1.01^{10}-1)} \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。
解答
コ:3 (2点)
サシスセ:3010 (2点)
解答編 つづき
問題
(3) 1年目の入金を始める前における花子さんの預金が $10$ 万円ではなく、 $13$ 万円の場合を考える。すべての自然数 $n$ に対して、この場合の $n$ 年目の初めの預金は $a_n$ 万円よりも $\dBox{ソ}$ 万円多い。なお、年利は $1$ %であり、毎年の初めの入金額は $p$ 万円のままである。
$\dbox{ソ}$ の解答群
0: $3$
1: $13$
2: $3(n-1)$3: $3n$
4: $13(n-1)$
5: $13n$6: $3^n$
7: $3+1.01(n-1)$
8: $3\times 1.01^{n-1}$9: $3\times 1.01^n$
a: $13\times 1.01^{n-1}$
b: $13\times 1.01^n$
解説
(3)
方針2の考え方を使うと、1年目の入金前の預金が $3$ 万円違えば、この金額とこれにつく利息分だけ差が生まれます。なので、 $n$ 年目のはじめでは、 $a_n$ 万円よりも $3\times 1.01^{n-1}$ 万円多くなります。
解答
ソ:8 (2点)