共通テスト 数学II・数学B 2022年度 第1問 [2] 解説
【必答問題】
問題編
問題
$a,b$ は正の実数であり、 $a\ne 1$, $b\ne 1$ を満たすとする。太郎さんは $\log_a b$ と $\log_b a$ の大小関係を調べることにした。
(1) 太郎さんは次のような考察をした。
まず、 $\log_3 9=\myBox{ス}$, $\log_9 3=\dfrac{1}{\mybox{ス} }$ である。この場合\[ \log_3 9\gt \log_9 3 \]が成り立つ。
一方、 $\log_{\frac{1}{4} }\myBox{セ}=-\dfrac{3}{2}$, $\log_{\mybox{セ} }\dfrac{1}{4}=-\dfrac{2}{3}$ である。この場合\[ \log_{\frac{1}{4} }\mybox{セ} \lt \log_{\mybox{セ} }\frac{1}{4} \]が成り立つ。
(2) ここで\[ \log_a b=t \quad\cdots① \]とおく。
(1)の考察をもとにして、太郎さんは次の式が成り立つと推測し、それが正しいことを確かめることにした。\[ \log_b a=\frac{1}{t} \quad\cdots② \]
①により、 $\dBox{ソ}$ である。このことより $\dBox{タ}$ が得られ、②が成り立つことが確かめられる。
$\dbox{ソ}$ の解答群
0: $a^b=t$
1: $a^t=b$
2: $b^a=t$
3: $b^t=a$
4: $t^a=b$
5: $t^b=a$$\dbox{タ}$ の解答群
0: $a=t^{\frac{1}{b} }$
1: $a=b^{\frac{1}{t} }$
2: $b=t^{\frac{1}{a} }$
3: $b=a^{\frac{1}{t} }$
4: $t=b^{\frac{1}{a} }$
5: $t=a^{\frac{1}{b} }$(3) 次に、太郎さんは(2)の考察をもとにして\[ t\gt \frac{1}{t} \quad\cdots③ \]を満たす実数 $t(t\ne 0)$ の値の範囲を求めた。
太郎さんの考察
$t\gt 0$ ならば、③の両辺に $t$ を掛けることにより、 $t^2\gt 1$ を得る。このような $t$ $(t\gt 0)$ の値の範囲は $1\lt t$ である。
$t\lt 0$ ならば、③の両辺に $t$ を掛けることにより、 $t^2\lt 1$ を得る。このような $t$ $(t\lt 0)$ の値の範囲は $-1\lt t \lt 0$ である。この考察により、③を満たす $t$ $(t\ne 0)$ の値の範囲は\[ -1\lt t \lt 0,\ 1\lt t \]であることがわかる。
ここで、 $a$ の値を一つ定めたとき、不等式\[ \log_a b\gt \log_b a \quad\cdots④ \]を満たす実数 $b$ $(b\gt 0, b\ne 1)$ の値の範囲について考える。
④を満たす $b$ の値の範囲は、 $a\gt 1$ のときは $\dBox{チ}$ であり、 $0\lt a \lt 1$ のときは $\dBox{ツ}$ である。
$\dbox{チ}$ の解答群
0: $0\lt b\lt\dfrac{1}{a}$, $1\lt b\lt a$
1: $0\lt b\lt\dfrac{1}{a}$, $a\lt b$
2: $\dfrac{1}{a}\lt b\lt 1$, $1\lt b\lt a$
3: $\dfrac{1}{a}\lt b\lt 1$, $a\lt b$
$\dbox{ツ}$ の解答群
0: $0\lt b\lt a$, $1\lt b\lt \dfrac{1}{a}$
1: $0\lt b\lt a$, $\dfrac{1}{a}\lt b$
2: $a\lt b\lt 1$, $1\lt b\lt \dfrac{1}{a}$
3: $a\lt b\lt 1$, $\dfrac{1}{a}\lt b$
(4) $p=\dfrac{12}{13}$, $p=\dfrac{12}{11}$, $p=\dfrac{14}{13}$ とする。
次の 0 ~ 3 のうち、正しいものは $\dBox{テ}$ である。
$\dbox{テ}$ の解答群
0: $\log_p q\gt \log_q p$ かつ $\log_p r\gt \log_r p$
1: $\log_p q\gt \log_q p$ かつ $\log_p r\lt \log_r p$
2: $\log_p q\lt \log_q p$ かつ $\log_p r\gt \log_r p$
3: $\log_p q\lt \log_q p$ かつ $\log_p r\lt \log_r p$
考え方
前半は、対数の計算に慣れているかどうかの問題です。(3)では、太郎さんの考察をどうやって使うかが少し難しいかもしれません。これを使って④をどう解くかを考えましょう。
(4)は(3)で求めた結果から考えます。条件式がたくさんあるので、何をチェックすればいいかを間違わないようにしましょう。
【必答問題】
解答編
問題
$a,b$ は正の実数であり、 $a\ne 1$, $b\ne 1$ を満たすとする。太郎さんは $\log_a b$ と $\log_b a$ の大小関係を調べることにした。
(1) 太郎さんは次のような考察をした。
まず、 $\log_3 9=\myBox{ス}$, $\log_9 3=\dfrac{1}{\mybox{ス} }$ である。この場合\[ \log_3 9\gt \log_9 3 \]が成り立つ。
一方、 $\log_{\frac{1}{4} }\myBox{セ}=-\dfrac{3}{2}$, $\log_{\mybox{セ} }\dfrac{1}{4}=-\dfrac{2}{3}$ である。この場合\[ \log_{\frac{1}{4} }\mybox{セ} \lt \log_{\mybox{セ} }\frac{1}{4} \]が成り立つ。
解説
$9=3^2$ なので、 $\log_3 9=2$ です。
また、 $\log_{\frac{1}{4} } x=-\dfrac{3}{2}$ とは、 $x=\left(\dfrac{1}{4}\right)^{-\frac{3}{2} }$ のことです。 $\dfrac{1}{4}=2^{-2}$ なので
\begin{eqnarray}
& &
\left(\dfrac{1}{4}\right)^{-\frac{3}{2} } \\[5pt]
&=&
\left(2^{-2}\right)^{-\frac{3}{2} } \\[5pt]
&=&
2^{-2\cdot\left(-\frac{3}{2}\right)} \\[5pt]
&=&
2^3=8
\end{eqnarray}と求められます。
参考:【基本】対数
解答
ス:2
セ:8
解答編 つづき
(2) ここで\[ \log_a b=t \quad\cdots① \]とおく。
(1)の考察をもとにして、太郎さんは次の式が成り立つと推測し、それが正しいことを確かめることにした。\[ \log_b a=\frac{1}{t} \quad\cdots② \]
①により、 $\dBox{ソ}$ である。このことより $\dBox{タ}$ が得られ、②が成り立つことが確かめられる。
$\dbox{ソ}$ の解答群
0: $a^b=t$
1: $a^t=b$
2: $b^a=t$
3: $b^t=a$
4: $t^a=b$
5: $t^b=a$$\dbox{タ}$ の解答群
0: $a=t^{\frac{1}{b} }$
1: $a=b^{\frac{1}{t} }$
2: $b=t^{\frac{1}{a} }$
3: $b=a^{\frac{1}{t} }$
4: $t=b^{\frac{1}{a} }$
5: $t=a^{\frac{1}{b} }$
解説
$\log_a b=t$ とは、 $a^t=b$ のことです。両辺の $\dfrac{1}{t}$ 乗を考えると、 $a=b^{\frac{1}{t} }$ となるので、 $\log_b a=\dfrac{1}{t}$ となることがわかります。
参考:【基本】対数
解答
ソ:1
タ:1
解答編 つづき
(3) 次に、太郎さんは(2)の考察をもとにして\[ t\gt \frac{1}{t} \quad\cdots③ \]を満たす実数 $t(t\ne 0)$ の値の範囲を求めた。
太郎さんの考察
$t\gt 0$ ならば、③の両辺に $t$ を掛けることにより、 $t^2\gt 1$ を得る。このような $t$ $(t\gt 0)$ の値の範囲は $1\lt t$ である。
$t\lt 0$ ならば、③の両辺に $t$ を掛けることにより、 $t^2\lt 1$ を得る。このような $t$ $(t\lt 0)$ の値の範囲は $-1\lt t \lt 0$ である。この考察により、③を満たす $t$ $(t\ne 0)$ の値の範囲は\[ -1\lt t \lt 0,\ 1\lt t \]であることがわかる。
ここで、 $a$ の値を一つ定めたとき、不等式\[ \log_a b\gt \log_b a \quad\cdots④ \]を満たす実数 $b$ $(b\gt 0, b\ne 1)$ の値の範囲について考える。
④を満たす $b$ の値の範囲は、 $a\gt 1$ のときは $\dBox{チ}$ であり、 $0\lt a \lt 1$ のときは $\dBox{ツ}$ である。
$\dbox{チ}$ の解答群
0: $0\lt b\lt\dfrac{1}{a}$, $1\lt b\lt a$
1: $0\lt b\lt\dfrac{1}{a}$, $a\lt b$
2: $\dfrac{1}{a}\lt b\lt 1$, $1\lt b\lt a$
3: $\dfrac{1}{a}\lt b\lt 1$, $a\lt b$
$\dbox{ツ}$ の解答群
0: $0\lt b\lt a$, $1\lt b\lt \dfrac{1}{a}$
1: $0\lt b\lt a$, $\dfrac{1}{a}\lt b$
2: $a\lt b\lt 1$, $1\lt b\lt \dfrac{1}{a}$
3: $a\lt b\lt 1$, $\dfrac{1}{a}\lt b$
解説
(2)で見たように、 $\log_b a=\dfrac{1}{\log_a b}$ が成り立ちます( $b$ は $1$ 以外の正の実数なので、右辺の分母は $0$ にはなりません)。このことから、④は\[ \log_a b\gt \dfrac{1}{\log_a b} \]と変形できます。これは、(3)の問題文の前半の $t$ を $\log_a b$ を置き換えたものなので、この解は\[ -1\lt \log_a b \lt 0,\ 1\lt \log_a b \]と表すことができます。
$a\gt 1$ のときは $-1\lt \log_a b \lt 0$ は、 $\dfrac{1}{a}\lt b\lt 1$ と同値です。また、 $1\lt \log_a b$ は $a\lt b$ と同値です。
一方、 $0\lt a \lt 1$ のときは、 $-1\lt \log_a b \lt 0$ は、 $\dfrac{1}{a}\gt b\gt 1$ と同値です。また、 $1\lt \log_a b$ は $0\lt b \lt a$ と同値です。選択肢の中では、0となります。
参考:【基本】対数関数の性質
解答
チ:3
ツ:0
解答編 つづき
(4) $p=\dfrac{12}{13}$, $p=\dfrac{12}{11}$, $p=\dfrac{14}{13}$ とする。
次の 0 ~ 3 のうち、正しいものは $\dBox{テ}$ である。
$\dbox{テ}$ の解答群
0: $\log_p q\gt \log_q p$ かつ $\log_p r\gt \log_r p$
1: $\log_p q\gt \log_q p$ かつ $\log_p r\lt \log_r p$
2: $\log_p q\lt \log_q p$ かつ $\log_p r\gt \log_r p$
3: $\log_p q\lt \log_q p$ かつ $\log_p r\lt \log_r p$
解説
(3)の結果を利用して考えましょう。
$\log_p q$ と $\log_q p$ について考えます。 $p\lt 1$ なので、ツで選んだ条件を満たすかどうかを考えます。 $q\gt 1$ なので、 $1\lt q\lt \dfrac{1}{p}$ の条件が成り立つかどうかを調べると\[ \dfrac{1}{p} -q=\dfrac{13}{12}-\frac{12}{11} =-\dfrac{1}{132}\lt 0 \]なので、成り立たないことがわかります。よって、④に対応する式が成り立たないので\[ \log_p q \lt \log_q p \]となることがわかります。
次に、 $\log_p r$ と $\log_r p$ について考えます。先ほどと同様に、ツで選んだ条件を満たすかどうかを考えます。 $r\gt 1$ なので、 $1\lt r\lt \dfrac{1}{p}$ の条件が成り立つかどうかを調べると\[ \dfrac{1}{p} -r=\dfrac{13}{12}-\frac{14}{13} =\dfrac{1}{156}\gt 0 \]なので、成り立つことがわかります。よって、④に対応する式が成り立つので\[ \log_p r \gt \log_r p \]となることがわかります。
解答
テ:2