京都大学 理学部特色入試 2017年度 第2問 解説
(2016年11月に行われた特色入試の問題です。2017年に行われた特色入試の問題はこちら)
問題編
問題
n を自然数とする。実数 $a_n$ を\[ a_n = \int_{\sqrt{3} }^{2\sqrt{2} } \frac{x^{2n-1} }{\sqrt{x^2+1} }dx \]で定める。
以下の設問に答えよ。
(1) $a_1$ と $a_2$ を求めよ。
(2) すべての自然数 n に対し、 $a_n$ は正の有理数であることを示せ。さらに、 $a_n$ を互いに素な自然数 $b_n$ と $c_n$ を用いて $\displaystyle a_n=\frac{c_n}{b_n}$ と表すとき、 $b_n$ は奇数であることを示せ。
考え方
(1)で $n=1, 2$ のときを求めるので、(2)では数学的帰納法を使う、と見せかけています。特に使わなくてもいけるでしょう。
別の変数で置き換えれば、積分区間の数字がきれいに設定されていることもわかります。
解答編
問題
n を自然数とする。実数 $a_n$ を\[ a_n = \int_{\sqrt{3} }^{2\sqrt{2} } \frac{x^{2n-1} }{\sqrt{x^2+1} }dx \]で定める。
以下の設問に答えよ。
(1) $a_1$ と $a_2$ を求めよ。
解答
(1)
\begin{eqnarray}
a_1
&=&
\int_{\sqrt{3} }^{2\sqrt{2} } \frac{x}{\sqrt{x^2+1} }dx \\[5pt]
\end{eqnarray}である。ここで、 $\sqrt{x^2+1}=t$ とする。このとき、 $\displaystyle \frac{x}{\sqrt{x^2+1} }dx=dt$ なので、
\begin{eqnarray}
a_1
&=&
\int_2^3 dt \\[5pt]
&=&
\big[ t \big]_2^3 = 1 \\[5pt]
\end{eqnarray}となる。
同様に $\sqrt{x^2+1}=t$ とすると $x^2=t^2-1$ なので
\begin{eqnarray}
a_2
&=&
\int_{\sqrt{3} }^{2\sqrt{2} } \frac{x^3}{\sqrt{x^2+1} }dx \\[5pt]
&=&
\int_{\sqrt{3} }^{2\sqrt{2} } x^2 \times \frac{x}{\sqrt{x^2+1} }dx \\[5pt]
&=&
\int_{2}^{3} (t^2-1) dt \\[5pt]
&=&
\left[ \frac{t^3}{3} -t \right]_2^3 \\[5pt]
&=&
\frac{27-8}{3} -1 = \frac{16}{3} \\[5pt]
\end{eqnarray}となる。
よって、 $a_1=1$, $\displaystyle a_2=\frac{16}{3}$ 。
解答編 つづき
問題
(2) すべての自然数 n に対し、 $a_n$ は正の有理数であることを示せ。さらに、 $a_n$ を互いに素な自然数 $b_n$ と $c_n$ を用いて $\displaystyle a_n=\frac{c_n}{b_n}$ と表すとき、 $b_n$ は奇数であることを示せ。
解答
(2) $\sqrt{x^2+1}=t$ とおくと、
\begin{eqnarray}
a_n
&=&
\int_{\sqrt{3} }^{2\sqrt{2} } \frac{x^{2n-1} }{\sqrt{x^2+1} }dx \\[5pt]
&=&
\int_{\sqrt{3} }^{2\sqrt{2} } (x^2)^{n-1} \times \frac{x}{\sqrt{x^2+1} }dx \\[5pt]
&=&
\int_2^3 (t^2-1)^{n-1} dt \\[5pt]
\end{eqnarray}と変形できる。 $2\leqq t \leqq 3$ の区間で $(t^2-1)^{n-1}\geqq 1$ なので、この積分は $1$ 以上である。よって、 $a_n$ が正であることがわかる。
二項定理を使ってさらに変形すると
\begin{eqnarray}
a_n
&=&
\int_2^3 (t^2-1)^{n-1} dt \\[5pt]
&=&
\int_2^3 \sum_{k=0}^{n-1} {}_{n-1} \mathrm{ C }_k (-1)^{n-1-k} t^{2k} dt \\[5pt]
&=&
\sum_{k=0}^{n-1} {}_{n-1} \mathrm{ C }_k (-1)^{n-1-k} \int_2^3 t^{2k} dt \\[5pt]
&=&
\sum_{k=0}^{n-1} {}_{n-1} \mathrm{ C }_k (-1)^{n-1-k} \left[ \frac{t^{2k+1} }{2k+1} \right]_2^3 \\[5pt]
&=&
\sum_{k=0}^{n-1} \frac{ {}_{n-1} \mathrm{ C }_k (-1)^{n-1-k}(3^{2k+1}-2^{2k+1}) }{ 2k+1 } \\[5pt]
\end{eqnarray}ここで \[ {}_{n-1} \mathrm{ C }_k (-1)^{n-1-k}(3^{2k+1}-2^{2k+1}) \]は整数である。これから、 $a_n$ は「整数÷奇数」という分数の和で得られることがわかる。よって、 $a_n$ は有理数であり、既約分数で表したときの分母は奇数となる。これで、題意は示された。
(解答終)
解説
(1)で、 $\sqrt{x^2+1}=t$ とおくことに気づかないと、その後の計算は難しいです。ただ、こうおけば、積分区間はきれいになるので、「間違ってなさそうだ」と思うことができます。
(2)も同じ要領で計算していきます。数学的帰納法を使いそうな雰囲気はありますが、二項定理を使えば直接積分を計算することができます。値を求めることはできませんが、示さないといけないことを言うには十分な式が得られます。