京都大学 理系 2014年度 第1問 解説
問題編
問題
座標空間における次の3つの直線 l, m, n を考える。
l は点 $\mathrm{ A }(1,0,-2)$ を通り、ベクトル $\vec{ u } = (2,1,-1)$ に平行な直線である。
m は点 $\mathrm{ B }(1,2,-3)$ を通り、ベクトル $\vec{ v } = (1,-1,1)$ に平行な直線である。
n は点 $\mathrm{ C }(1,-1,0)$ を通り、ベクトル $\vec{ w } = (1,2,1)$ に平行な直線である。P を l 上の点として、 P から m, n へ下ろした垂線の足をそれぞれ Q, R とする。このとき、 $\mathrm{ PQ }^2 +\mathrm{ PR }^2$ を最小にするような P と、そのときの $\mathrm{ PQ }^2 +\mathrm{ PR }^2$ を求めよ。
考え方
P, Q, R と3つの点がありますが、 P を決めると他の2点の座標は決まります。 PQ と直線 m が垂直に交わることを、「内積が0」と言い換えて、条件式を作ります。 PR についても同様です。
$\mathrm{ PQ }^2 +\mathrm{ PR }^2$ を二次関数の式で置き換えれば、あとはこれの最小値を求める問題となります。が、式ができれば最小値はすぐにわかってしまいます。
空間ベクトルだし、見た目はめんどくさそうですが、解いてみるとかなりあっさりしています。逆に、後半があっさりしすぎていて、途中で計算間違いをしているんじゃないか、と不安になってくるレベルです。
解答編
問題
座標空間における次の3つの直線 l, m, n を考える。
l は点 $\mathrm{ A }(1,0,-2)$ を通り、ベクトル $\vec{ u } = (2,1,-1)$ に平行な直線である。
m は点 $\mathrm{ B }(1,2,-3)$ を通り、ベクトル $\vec{ v } = (1,-1,1)$ に平行な直線である。
n は点 $\mathrm{ C }(1,-1,0)$ を通り、ベクトル $\vec{ w } = (1,2,1)$ に平行な直線である。P を l 上の点として、 P から m, n へ下ろした垂線の足をそれぞれ Q, R とする。このとき、 $\mathrm{ PQ }^2 +\mathrm{ PR }^2$ を最小にするような P と、そのときの $\mathrm{ PQ }^2 +\mathrm{ PR }^2$ を求めよ。
解答
P, Q, R の座標は、実数 p, q, r を使って、次のように書ける。
$\mathrm{ P }(1+2p,p,-2-p)$, $\mathrm{ Q }(1+q,2-q,-3+q)$, $\mathrm{ R }(1+r,-1+2r,r)$
$\overrightarrow{ \mathrm{ PQ } }$ と直線 $\vec{v}$ は垂直に交わるので
\begin{eqnarray}
\{ (1+q,2-q,-3+q)-(1+2p,p,-2-p) \} \cdot (1,-1,1) &=& 0 \\
(-2p+q,-p-q+2,p+q-1) \cdot (1,-1,1) &=& 0 \\
(-2p+q)-(-p-q+2)+(p+q-1) &=& 0 \\
3q-3 &=& 0 \\
q &=& 1 \\
\end{eqnarray}が得られる。
また、 $\overrightarrow{ \mathrm{ PR } }$ と直線 $\vec{w}$ は垂直に交わるので
\begin{eqnarray}
\{ (1+r,-1+2r,r)-(1+2p,p,-2-p) \} \cdot (1,2,1) &=& 0 \\
(-2p+r,-p+2r-1,p+r+2) \cdot (1,2,1) &=& 0 \\
(-2p+r)+2(-p+2r-1)+(p+r+2) &=& 0 \\
-3p+6r &=& 0 \\
p &=& 2r \\
\end{eqnarray}が得られる。
これらの結果から
\begin{eqnarray}
\overrightarrow{ \mathrm{ PQ } }
&=&
(-2p+q,-p-q+2,p+q-1) \\
&=&
(-2\cdot 2r +1, -2r-1+2, 2r+1-1) \\
&=&
(-4r+1, -2r+1,2r) \\
\end{eqnarray}と
\begin{eqnarray}
\overrightarrow{ \mathrm{ PR } }
&=&
(-2p+r,-p+2r-1,p+r+2) \\
&=&
(-2\cdot 2r +r,-2r+2r-1,2r+r+2) \\
&=&
(-3r,-1,3r+2) \\
\end{eqnarray}が得られるので、
\begin{eqnarray}
& &
\mathrm{ PQ }^2+\mathrm{ PR }^2 \\[5pt]
&=&
(-4r+1)^2+(-2r+1)^2+(2r)^2 \\
& & +(-3r)^2+(-1)^2+(3r+2)^2 \\[5pt]
&=&
16r^2 -8r +1 +4r^2 -4r+1+4r^2 \\
& & +9r^2+1+9r^2+12r+4 \\[5pt]
&=&
42r^2 +7
\end{eqnarray}となる。よって、最小値は $7$ である。また、最小になるのは $r=0$ のときで、そのとき $p=2r=0$ なので、このときの P の座標は
\begin{eqnarray}
(1+2p,p,-2-p)=(1,0,-2)
\end{eqnarray}である。
よって、 P が $(1,0,-2)$ のとき、 $\mathrm{ PQ }^2 +\mathrm{ PR }^2$ は最小値 $7$ をとる。
(終)
解説
P, Q, R と3つの点が出てきますが、 P を固定すると後の2点は決まるのだから、変数は1つだけになります。「垂線」を「内積が0」に言い換えて、条件式を作りましょう。
$\mathrm{ PQ }^2 +\mathrm{ PR }^2$ は1変数の二次関数で書くことができます。この最小値はすぐにわかるので、二次関数で書けさえすれば、答えはすぐにわかります。