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センター試験 数学II・数学B 2018年度 第5問 解説

$\def\myBox#1{\bbox[2px, border:2px solid]{ \class{bold}{ \textsf{ #1 } } } }$ $\def\mybox#1{\bbox[2px, border:1px solid gray]{ \textsf{ #1 } } }$ $\def\dBox#1{\bbox[3px, border: 2px solid ]{\bbox[0px, border: 1px solid ]{ \class{bold}{ \textsf{ #1 } } } } }$ $\def\dbox#1{\bbox[4px, border: 1px solid ]{\bbox[0px, border: 1px solid ]{ \textsf{ #1 } } } }$

【選択問題】(第3問~第5問から2問選択)

問題編

問題

(注:正規分布表は省略しています)

 以下の問題を解答するにあたっては、必要に応じて29ページの正規分布表を用いてもよい。

(1) a を正の整数とする。 $2,4,6,\cdots,2a$ の数字がそれぞれ一つずつ書かれた a 枚のカードが箱に入っている。この箱から1枚のカードを無作為に取り出すとき、そこに書かれた数字を表す確率変数を X とする。このとき、 $X=2a$ となる確率は $\dfrac{\myBox{ア} }{\myBox{イ} }$ である。

 $a=5$ とする。 X の平均(期待値)は $\myBox{ウ}$, X の分散は $\myBox{エ}$ である。また、 s, t は定数で $s\gt 0$ のとき、 $sX+t$ の平均が $20$, 分散が $32$ となるように s, t を定めると、 $s=\myBox{オ}$, $t=\myBox{カ}$ である。このとき、 $sX+t$ が $20$ 以上である確率は $0.\myBox{キ}$ である。

(2) (1)の箱のカードの枚数 a は $3$ 以上とする。この箱から3枚のカードを同時に取り出し、それらのカードを横1列に並べる。この試行において、カードの数字が左から小さい順に並んでいる事象を A とする。このとき、事象 A の起こる確率は $\dfrac{\myBox{ク} }{\myBox{ケ} }$ である。

 この試行を180回繰り返すとき、事象 A が起こる回数を表す確率変数を Y とすると、 Y の平均 m は $\myBox{コサ}$, Y の分散 $\sigma^2$ は $\myBox{シス}$ である。ここで、事象 A が18回以上36回以下起こる確率の近似値を次のように求めよう。

 試行回数180は大きいことから、 Y は近似的に平均 $m=\mybox{コサ}$, 標準偏差 $\sigma=\mybox{シス}$ の正規分布に従うと考えられる。ここで、 $Z=\dfrac{Y-m}{\sigma}$ とおくと、求める確率の近似値は次のようになる。
\begin{eqnarray} & & P(18\leqq Y \leqq 36) \\[5pt] &=& P \left(-\myBox{セ}.\myBox{ソタ} \leqq Z \leqq \myBox{チ}.\myBox{ツテ}\right) \\[5pt] &=& 0.\myBox{トナ} \end{eqnarray}

(3) ある都市での世論調査において、無作為に400人の有権者を選び、ある政策に対する賛否を調べたところ、320人が賛成であった。この都市の有権者全体のうち、この政策の賛成者の母比率 p に対する信頼度95% の信頼区間を求めたい。

 この調査での賛成者の比率(以下、これを標本比率という)は $0.\myBox{ニ}$ である。標本の大きさが400と大きいので、二項分布の正規分布による近似を用いると、 p に対する信頼度95%の信頼区間は\[ 0.\myBox{ヌネ} \leqq p \leqq 0.\myBox{ノハ} \]である。

 母比率 p に対する信頼区間 $A\leqq p \leqq B$ において、 $B-A$ をこの信頼区間の幅とよぶ。以下、 R を標本比率とし、 p に対する信頼度95%の信頼区間を考える。

 上で求めた信頼区間の幅を $L_1$
 標本の大きさが400の場合に $R=0.6$ が得られらときの信頼区間の幅を $L_2$
 標本の大きさが500の場合に $R=0.8$ が得られらときの信頼区間の幅を $L_3$

とする。このとき、 $L_1,L_2,L_3$ について $\myBox{ヒ}$ が成り立つ。 $\myBox{ヒ}$ に当てはまるものを、次の 0 ~ 5 のうちから一つ選べ。

 0: $L_1 \lt L_2 \lt L_3$
 1: $L_1 \lt L_3 \lt L_2$
 2: $L_2 \lt L_1 \lt L_3$
 3: $L_2 \lt L_3 \lt L_1$
 4: $L_3 \lt L_1 \lt L_2$
 5: $L_3 \lt L_2 \lt L_1$

考え方

(1)では、定数を足したり掛けたりした場合に、平均や分散がどうなるかをしっかり押さえておく必要があります。途中で、数列の和の公式を使ってもいいですが、個数が少ないので直接計算したほうが早いかもしれません。

(2)の後半は、標準正規分布になるように変形する、ということですね。正規分布表を使って最後の確率を求めましょう。直接は求められないので、分けて考えます。

(3)は、母比率の推定です。教科書に載っているレベルです。後半は、信頼区間をどうやって出すかが分かっていれば、式を眺めているだけで答えにたどりつけるはずです。


【選択問題】(第3問~第5問から2問選択)

解答編

問題

(注:正規分布表は省略しています)

 以下の問題を解答するにあたっては、必要に応じて29ページの正規分布表を用いてもよい。

(1) a を正の整数とする。 $2,4,6,\cdots,2a$ の数字がそれぞれ一つずつ書かれた a 枚のカードが箱に入っている。この箱から1枚のカードを無作為に取り出すとき、そこに書かれた数字を表す確率変数を X とする。このとき、 $X=2a$ となる確率は $\dfrac{\myBox{ア} }{\myBox{イ} }$ である。

解説

X の取りうる値は a 通りで、どの値も出方は同様に確からしいため、 $X=2a$ となる確率は $\dfrac{1}{a}$ となります。

解答

アイ:1a

解答編 つづき

問題

 $a=5$ とする。 X の平均(期待値)は $\myBox{ウ}$, X の分散は $\myBox{エ}$ である。

解説

X の平均 $E[X]$ は
\begin{eqnarray} E[X] &=& 2\cdot \frac{1}{5}+4\cdot \frac{1}{5}+6\cdot \frac{1}{5}+8\cdot \frac{1}{5}+10\cdot \frac{1}{5} \\[5pt] &=& 6 \end{eqnarray}となります。

また、 $X^2$ の平均 $E[X^2]$ は
\begin{eqnarray} E[X^2] &=& 2^2\cdot \frac{1}{5}+4^2\cdot \frac{1}{5}+6^2\cdot \frac{1}{5}+8^2\cdot \frac{1}{5}+10^2\cdot \frac{1}{5} \\[5pt] &=& \frac{4+16+36+64+100}{5} \\[5pt] &=& 44 \\[5pt] \end{eqnarray}なので、分散 $V[X]$ は \begin{eqnarray} V[X] &=& E[X^2] -(E[X])^2 \\[5pt] &=& 44 -6^2 \\[5pt] &=& 8 \\[5pt] \end{eqnarray}となります。

解答

ウエ:68

解答編 つづき

問題

また、 s, t は定数で $s\gt 0$ のとき、 $sX+t$ の平均が $20$, 分散が $32$ となるように s, t を定めると、 $s=\myBox{オ}$, $t=\myBox{カ}$ である。このとき、 $sX+t$ が $20$ 以上である確率は $0.\myBox{キ}$ である。

解説

$sX+t$ の平均は
\begin{eqnarray} E[sX+t] &=& sE[X]+t \\[5pt] &=& 6s+t \\[5pt] \end{eqnarray}となります。また、分散は \begin{eqnarray} V[sX+t]&=&s^2 V[X]=8s^2 \end{eqnarray}となります。分散が $32$ で、 $s\gt 0$ なので、 $s=2$ となります。これと平均が $20$ であることから、 $t=8$ となります。

$2X+8$ が20以上となるのは、 $X=6,8,10$ の3つの場合しかないので、こうなる確率は\[ \frac{3}{5}=0.6 \]となります。

解答

オカキ:286

解答編 つづき

問題

(2) (1)の箱のカードの枚数 a は $3$ 以上とする。この箱から3枚のカードを同時に取り出し、それらのカードを横1列に並べる。この試行において、カードの数字が左から小さい順に並んでいる事象を A とする。このとき、事象 A の起こる確率は $\dfrac{\myBox{ク} }{\myBox{ケ} }$ である。

 この試行を180回繰り返すとき、事象 A が起こる回数を表す確率変数を Y とすると、 Y の平均 m は $\myBox{コサ}$, Y の分散 $\sigma^2$ は $\myBox{シス}$ である。

解説

カードを並べたとき、「小中大」「小大中」「中小大」「中大小」「大小中」「大中小」の6通りがあり、そのうち「小中大」となる確率は、 $\dfrac{1}{6}$ となります。

また、 i 回目の試行で「小中大」と並んだときに $1$, そうでないときに $0$ となる確率変数 $Y_i$ を考えるとすると、 $Y_i$ を足し合わせたものが $Y$ になることがわかります。よって、平均は
\begin{eqnarray} E[Y] &=& E\left[ \sum_{i=1}^{180} Y_i \right] \\[5pt] &=& \sum_{i=1}^{180} E\left[ Y_i \right] \\[5pt] &=& \sum_{i=1}^{180} \frac{1}{6} \\[5pt] &=& 30 \end{eqnarray}となります。また、 $Y_i$ たちは互いに独立であることから、 \begin{eqnarray} V[Y] &=& V\left[ \sum_{i=1}^{180} Y_i \right] \\[5pt] &=& \sum_{i=1}^{180} V\left[ Y_i \right] \\[5pt] &=& \sum_{i=1}^{180} \left(\frac{1}{6} -\frac{1}{6^2}\right) \\[5pt] &=& 25 \end{eqnarray}となります。

解答

クケ:16
コサ:30
シス:25

解答編 つづき

問題

ここで、事象 A が18回以上36回以下起こる確率の近似値を次のように求めよう。

 試行回数180は大きいことから、 Y は近似的に平均 $m=\mybox{コサ}$, 標準偏差 $\sigma=\mybox{シス}$ の正規分布に従うと考えられる。ここで、 $Z=\dfrac{Y-m}{\sigma}$ とおくと、求める確率の近似値は次のようになる。
\begin{eqnarray} & & P(18\leqq Y \leqq 36) \\[5pt] &=& P \left(-\myBox{セ}.\myBox{ソタ} \leqq Z \leqq \myBox{チ}.\myBox{ツテ}\right) \\[5pt] &=& 0.\myBox{トナ} \end{eqnarray}

解説

Z が出てくるように変形すると
\begin{eqnarray} & & P(18\leqq Y \leqq 36) \\[5pt] &=& P(-12\leqq Y-30 \leqq 6) \\[5pt] &=& P \left(-\frac{12}{5} \leqq \frac{Y-30}{5} \leqq \frac{6}{5}\right) \\[5pt] &=& P \left(-2.4 \leqq Z \leqq 1.2 \right) \\[5pt] \end{eqnarray}となります。

この変形により、 Z は標準正規分布になるので、上の確率は、正規分布表より
\begin{eqnarray} & & P \left(-2.4 \leqq Z \leqq 1.2 \right) \\[5pt] &=& P \left(-2.4 \leqq Z \leqq 0 \right) +P \left(0 \leqq Z \leqq 1.2 \right) \\[5pt] &=& P \left(0 \leqq Z \leqq 2.4 \right) +P \left(0 \leqq Z \leqq 1.2 \right) \\[5pt] &=& 0.4918+0.3849 \\[5pt] &=& 0.8767 \\[5pt] \end{eqnarray}なので、0.88程度だと求められます。

解答

セソタ:240
チツテ:120
トナ:88

解答編 つづき

問題

(3) ある都市での世論調査において、無作為に400人の有権者を選び、ある政策に対する賛否を調べたところ、320人が賛成であった。この都市の有権者全体のうち、この政策の賛成者の母比率 p に対する信頼度95% の信頼区間を求めたい。

 この調査での賛成者の比率(以下、これを標本比率という)は $0.\myBox{ニ}$ である。標本の大きさが400と大きいので、二項分布の正規分布による近似を用いると、 p に対する信頼度95%の信頼区間は\[ 0.\myBox{ヌネ} \leqq p \leqq 0.\myBox{ノハ} \]である。

解説

400人中、320人が賛成しているのだから、賛成者の比率は\[ \dfrac{320}{400}=\dfrac{4}{5}=0.8 \]です。

標本の大きさが大きい場合、標本比率の分布を正規分布で近似できます。この正規分布の平均は $0.8$ で、分散は\[ \frac{0.8(1-0.8)}{400}=0.0004=0.02^2 \]となります。

また、信頼度が95%となる部分を正規分布表でみると、0.475となるときに $z_0=1.96$ だとわかります。

以上から、信頼度95%の信頼区間は
\begin{eqnarray} & & 0.8-1.96 \times 0.02 \leqq p \leqq 0.8+1.96 \times 0.02 \\[5pt] & & 0.8-0.0392 \leqq p \leqq 0.8+0.0392 \\[5pt] & & 0.7608 \leqq p \leqq 0.8392 \\[5pt] \end{eqnarray}となります。

解答

ニ:8
ヌネノハ:7684

解答編 つづき

問題

 母比率 p に対する信頼区間 $A\leqq p \leqq B$ において、 $B-A$ をこの信頼区間の幅とよぶ。以下、 R を標本比率とし、 p に対する信頼度95%の信頼区間を考える。

 上で求めた信頼区間の幅を $L_1$
 標本の大きさが400の場合に $R=0.6$ が得られらときの信頼区間の幅を $L_2$
 標本の大きさが500の場合に $R=0.8$ が得られらときの信頼区間の幅を $L_3$

とする。このとき、 $L_1,L_2,L_3$ について $\myBox{ヒ}$ が成り立つ。 $\myBox{ヒ}$ に当てはまるものを、次の 0 ~ 5 のうちから一つ選べ。

 0: $L_1 \lt L_2 \lt L_3$
 1: $L_1 \lt L_3 \lt L_2$
 2: $L_2 \lt L_1 \lt L_3$
 3: $L_2 \lt L_3 \lt L_1$
 4: $L_3 \lt L_1 \lt L_2$
 5: $L_3 \lt L_2 \lt L_1$

解説

2つ目のケースでも標本比率の分布を正規分布で近似できますが、その分散は
\begin{eqnarray} \frac{R(1-R)}{n} &=& \frac{0.6(1-0.6)}{400} \\[5pt] &=& 0.0006 \end{eqnarray}となります。3つ目のケースでは、 \begin{eqnarray} \frac{R(1-R)}{n} &=& \frac{0.8(1-0.8)}{500} \\[5pt] &=& 0.00032 \end{eqnarray}となります。

信頼度95%の信頼区間は、\[ 2\times 1.96 \times\sqrt{\frac{R(1-R)}{n} } \]で表されます。正規分布の分散が\[ 0.00032 \lt 0.0004 \lt 0.0006 \]となっていることから\[ L_3 \lt L_1 \lt L_2 \]となります。

なお、感覚的に考えると、標本を大きくすれば精度が上がって行くと考えられるので、信頼区間を狭くしても信頼度が高いままだ、と考えられます。このことから、 $L_3 \lt L_1$ と考えられます。また、標本比率が $0.5$ に近いほど、偏りがない分、分散が大きくなり、同じ信頼度を得るためには信頼区間を広くしておかなくてはいけません。このことから、 $L_1 \lt L_2$ と考えられます。

解答

ヒ:4

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