センター試験 数学II・数学B 2017年度 第5問 解説
問題編
問題
(注:正規分布表は省略しています)
以下の問題を解答するにあたっては、必要に応じて29ページの正規分布表を用いてもよい。
(1) 1回の試行において、事象 A の起こる確率が p 、起こらない確率が $1-p$ であるとする。この試行を n 回繰り返すとき、事象 A の起こる回数を W とする。確率変数 W の平均(期待値) m が $\displaystyle \frac{1216}{27}$ 、標準偏差 $\sigma$ が $\displaystyle \frac{152}{27}$ であるとき、 $n=\myBox{アイウ}$ 、 $\displaystyle p=\frac{\myBox{エ}}{\myBox{オカ}}$ である。
(2) (1)の反復試行において、 W が38以上となる確率の近似値を求めよう。
いま\[ P(W\geqq 38) = P \left(\frac{W-m}{\sigma} \geqq -\myBox{キ}.\myBox{クケ}\right) \]と変形できる。ここで、 $\displaystyle Z=\frac{W-m}{\sigma}$ とおき、 W の分布を正規分布で近似すると、正規分布表から確率の近似値は次のように求められる。\[ P \left(Z\geqq -\mybox{キ}.\mybox{クケ}\right)=0.\myBox{コサ} \](3) 連続型確率変数 X のとり得る値 x の範囲が $s\leqq x \leqq t$ で、確率密度関数が $f(x)$ のとき、 X の平均 $E(X)$ は次の式で与えられる。\[ E(X)=\int_s^t xf(x) dx \]
a を正の実数とする。連続型確率変数 X のとり得る値 x の範囲が $-a\leqq x \leqq 2a$ で、確率密度関数が
\begin{eqnarray} f(x) = \begin{cases} \displaystyle \frac{2}{3a^2} (x+a) & \quad & (-a\leqq x \leqq 0 のとき) \\[5pt] \displaystyle \frac{1}{3a^2} (2a-x)& \quad & (0\leqq x \leqq 2a のとき) \\ \end{cases} \end{eqnarray}であるとする。このとき、 $\displaystyle a\leqq X \leqq \frac{3}{2}a$ となる確率は $\displaystyle \frac{\myBox{シ}}{\myBox{ス}}$ である。また、 X の平均は $\displaystyle \frac{\myBox{セ}}{\myBox{ソ}}$ である。さらに、 $Y=2X+7$ とおくと、 Y の平均は $\displaystyle \frac{\myBox{タチ}}{\myBox{ツ}}+\myBox{テ}$ である。
考え方
独立試行の平均や分散を答える問題はよくありますが、(1)は逆に平均などから試行回数と確率を求める問題です。公式が頭に入っていれば、連立方程式から求めることができます。
(2)は正規分布で近似して確率を求める問題で、センターではよく出る内容です。正規分布表がどこの確率を表しているかに注意して計算します。
(3)は珍しく連続型の確率変数です。積分の計算が少し難しいです。一番最後は、積分を計算する必要はありません。
解答編
問題
(注:正規分布表は省略しています)
以下の問題を解答するにあたっては、必要に応じて29ページの正規分布表を用いてもよい。
(1) 1回の試行において、事象 A の起こる確率が p 、起こらない確率が $1-p$ であるとする。この試行を n 回繰り返すとき、事象 A の起こる回数を W とする。確率変数 W の平均(期待値) m が $\displaystyle \frac{1216}{27}$ 、標準偏差 $\sigma$ が $\displaystyle \frac{152}{27}$ であるとき、 $n=\myBox{アイウ}$ 、 $\displaystyle p=\frac{\myBox{エ}}{\myBox{オカ}}$ である。
解説
k 回目の試行で、事象 A が起こるときに 1、起こらないときに 0 となる確率変数を $X_k$ とおきます。このとき $\displaystyle W=\sum_{ k = 1 }^{ n } X_k$ となります。
E で平均を表すと
\begin{eqnarray}
E[W]
&=&
E\left[ \sum_{ k = 1 }^{ n } X_k \right] \\[5pt]
&=&
\sum_{ k = 1 }^{ n } E\left[ X_k \right] \\[5pt]
&=&
\sum_{ k = 1 }^{ n } (1\times p) \\[5pt]
&=&
np
\end{eqnarray}となります。
また、V で分散を表すと
\begin{eqnarray}
V[W]
&=&
V\left[ \sum_{ k = 1 }^{ n } X_k \right] \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。ここで、 $i\ne j$ のとき $X_i$ と $X_j$ は独立なので、和の分散は、分散の和と等しくなります。よって
\begin{eqnarray}
V[W]
&=&
\sum_{ k = 1 }^{ n } V\left[ X_k \right] \\[5pt]
&=&
n(p-p^2) \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。
条件から $\displaystyle np=\frac{1216}{27}$, $\displaystyle n(p-p^2)=\left(\frac{152}{27}\right)^2$ なので
\begin{eqnarray}
np(1-p) &=& \left(\frac{152}{27}\right)^2 \\[5pt]
1-p &=& \left(\frac{152}{27}\right)^2 \times \frac{27}{1216} \\[5pt]
&=& \frac{152^2}{27\times 1216} \\[5pt]
&=& \frac{19}{27} \\[5pt]
p &=& 1-\frac{19}{27} \\[5pt]
&=& \frac{8}{27} \\[5pt]
\end{eqnarray}が得られます。また
\begin{eqnarray}
np &=& \frac{1216}{27} \\[5pt]
n &=& \frac{1216}{27} \times \frac{27}{8} \\[5pt]
&=& 152
\end{eqnarray}となります。
解答
アイウ:152
エオカ:827
解答編 つづき
問題
(2) (1)の反復試行において、 W が38以上となる確率の近似値を求めよう。
いま\[ P(W\geqq 38) = P \left(\frac{W-m}{\sigma} \geqq -\myBox{キ}.\myBox{クケ}\right) \]と変形できる。
解説
右辺の $\geqq$ の左側と同じ形になるように38を変形すると
\begin{eqnarray}
\frac{38-m}{\sigma}
&=&
\frac{38-\frac{1216}{27} }{\frac{152}{27} } \\[5pt]
&=&
\frac{27\cdot 38-1216}{152} \\[5pt]
&=&
-\frac{190}{152} \\[5pt]
&=&
-1.25 \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。
解答
キクケ:125
解答編 つづき
問題
ここで、 $\displaystyle Z=\frac{W-m}{\sigma}$ とおき、 W の分布を正規分布で近似すると、正規分布表から確率の近似値は次のように求められる。\[ P \left(Z\geqq -\mybox{キ}.\mybox{クケ}\right)=0.\myBox{コサ} \]
解説
試行回数が大きいので、正規分布で近似して確率を求めます。
\begin{eqnarray}
P(Z\geqq -1.25)
&=&
P(0\geqq Z\geqq -1.25) +P(Z\geqq 0) \\
&=&
P(0\leqq Z\leqq 1.25) +0.5 \\
\end{eqnarray}となります。ここで、正規分布表から、 $P(0\leqq Z\leqq 1.25)=0.3944$ であることがわかるため、求める確率は $0.8944$ となります。
解答
コサ:89
解答編 つづき
問題
(3) 連続型確率変数 X のとり得る値 x の範囲が $s\leqq x \leqq t$ で、確率密度関数が $f(x)$ のとき、 X の平均 $E(X)$ は次の式で与えられる。\[ E(X)=\int_s^t xf(x) dx \]
a を正の実数とする。連続型確率変数 X のとり得る値 x の範囲が $-a\leqq x \leqq 2a$ で、確率密度関数が
\begin{eqnarray} f(x) = \begin{cases} \displaystyle \frac{2}{3a^2} (x+a) & \quad & (-a\leqq x \leqq 0 のとき) \\[5pt] \displaystyle \frac{1}{3a^2} (2a-x)& \quad & (0\leqq x \leqq 2a のとき) \\ \end{cases} \end{eqnarray}であるとする。このとき、 $\displaystyle a\leqq X \leqq \frac{3}{2}a$ となる確率は $\displaystyle \frac{\myBox{シ}}{\myBox{ス}}$ である。
解説
$\displaystyle a\leqq X \leqq \frac{3}{2}a$ となる確率は、次の積分を計算すれば求められます。
\begin{eqnarray}
\int_a^{\frac{3}{2}a} f(x) dx
&=&
\int_a^{\frac{3}{2}a} \frac{1}{3a^2}(2a-x) dx \\[5pt]
&=&
\frac{1}{3a^2} \left[ 2ax-\frac{x^2}{2} \right]_a^{\frac{3}{2}a} \\[5pt]
&=&
\frac{1}{3a^2} \left\{2a \left(\frac{3}{2}a-a\right)-\frac{1}{2} \left(\frac{9}{4}a^2-a^2\right)\right\} \\[5pt]
&=&
\frac{1}{3a^2} \left(a^2 -\frac{5}{8}a^2 \right) \\[5pt]
&=&
\frac{1}{3a^2} \times \frac{3}{8}a^2 \\[5pt]
&=&
\frac{1}{8} \\[5pt]
\end{eqnarray}と求められます。
解答
シス:18
解答編 つづき
問題
また、 X の平均は $\displaystyle \frac{\myBox{セ}}{\myBox{ソ}}$ である。さらに、 $Y=2X+7$ とおくと、 Y の平均は $\displaystyle \frac{\myBox{タチ}}{\myBox{ツ}}+\myBox{テ}$ である。
解説
X の平均は次の積分を計算すれば求められます。
\begin{eqnarray}
\int_{-a}^{2a} x f(x) dx
&=&
\int_{-a}^{0} \frac{2}{3a^2}(x^2+ax) dx +\int_{0}^{2a} \frac{1}{3a^2}(2ax-x^2) dx \\[5pt]
&=&
\frac{2}{3a^2}\left[ \frac{x^3}{3}+\frac{ax^2}{2} \right]_{-a}^{0} +\frac{1}{3a^2} \left[ ax^2-\frac{x^3}{3} \right]_{0}^{2a} \\[5pt]
&=&
-\frac{2}{3a^2}\left( \frac{-a^3}{3}+\frac{a^3}{2} \right) +\frac{1}{3a^2} \left( 4a^3-\frac{8a^3}{3} \right) \\[5pt]
&=&
-\frac{2}{3a^2} \times \frac{a^3}{6} +\frac{1}{3a^2} \times \frac{4a^3}{3} \\[5pt]
&=&
-\frac{a}{9} +\frac{4a}{9} \\[5pt]
&=&
\frac{a}{3} \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。
また、 Y の平均は
\begin{eqnarray}
E[Y]
&=&
E[2X+7] \\
&=&
2E[X]+7 \\
&=&
2\times \frac{a}{3}+7 \\
&=&
\frac{2a}{3}+7 \\
\end{eqnarray}となります。
解答
セソ:a3
タチツテ:2a37