【標準】階差数列の階差数列
ここでは、階差数列の階差数列、つまり、階差を2回取った数列について見ていきます。
右側に数字が追加されていく数列
次のような数列 $\{a_n\}$ があったとします。
\begin{eqnarray}
& & a_1=0,\ a_2=1, \ a_3=12, \ a_4=123, \\[5pt]
& & a_{5}=1234 ,\ \cdots ,\ a_{10}=123456789 \\[5pt]
\end{eqnarray}階差数列を用いて、この数列の一般項を求めてみましょう。なお、項数は10とします。
項が進むにつれて、右側に数字が追加されていってますね。追加される数字は、1つずつ増えていってます。ルールはわかりやすいですが、これを式で書くとなると、難しそうです。以下で、考えていきましょう。
階差数列の階差数列
上で見た数列 $\{a_n\}$ の階差数列を $\{b_n\}$ とします。 $\{a_n\}$ の項数は10なので、 $\{b_n\}$ の項数は9となります。具体的に書き出すと、次のようになります。
\begin{eqnarray}
& & b_1=1,\ b_2=11, \ b_3=111, \ b_4=1111, \\[5pt]
& & \ b_{5}=11111 ,\ \cdots ,\ a_{9}=111111111 \\[5pt]
\end{eqnarray}この数列も、項が進むにつれて右側に数字が追加されていっていますが、今度は追加される数字は「1」です。ルールはわかりやすいですが、これもパッと式で書くのは難しいです(これを見てすぐに一般項を思いつく人もいるかもしれませんが)。
もう一度、階差数列をとってみましょう。数列 $\{b_n\}$ の階差数列を $\{c_n\}$ とします。 $\{b_n\}$ の項数は9なので、 $\{c_n\}$ の項数は8となります。具体的に書き出すと、次のようになります。
\begin{eqnarray}
& & c_1=10,\ c_2=100, \ c_3=1000, \ c_4=10000, \\[5pt]
& & \ c_{5}=100000 ,\ \cdots ,\ c_{8}=100000000 \\[5pt]
\end{eqnarray}これは見慣れた数列です。初項が $10$ で、公比が $10$ の等比数列です。なので、数列 $\{c_n\}$ の一般項は\[ c_n=10\cdot10^{n-1}=10^n \]となります。
あとは、和を計算して、元に戻していくだけです。まずは、 $\{b_n\}$ の一般項を求めましょう。 $n\geqq 2$ のときは
\begin{eqnarray}
b_n
&=&
b_1+\sum_{k=1}^{n-1} c_k \\[5pt]
&=&
1+\sum_{k=1}^{n-1} 10^k \\[5pt]
&=&
1+\frac{10(10^{n-1}-1)}{10-1} \\[5pt]
&=&
1+\frac{10^n-10}{9} \\[5pt]
&=&
\frac{10^n}{9} -\frac{1}{9} \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。この式に $n=1$ を代入すると $1$ となり、 $b_1$ と一致することから、数列 $\{b_n\}$ の一般項は\[ b_n=\frac{10^n}{9} -\frac{1}{9} \]となります。
これを利用して、数列 $\{a_n\}$ の一般項を求めます。 $n\geqq 2$ のときは
\begin{eqnarray}
a_n
&=&
a_1+\sum_{k=1}^{n-1} b_k \\[5pt]
&=&
0+\sum_{k=1}^{n-1} \left(\frac{10^k}{9} -\frac{1}{9}\right) \\[5pt]
&=&
\frac{1}{9}\sum_{k=1}^{n-1} 10^k -\sum_{k=1}^{n-1}\frac{1}{9} \\[5pt]
&=&
\frac{1}{9}\cdot\frac{10(10^{n-1}-1)}{10-1} -\frac{1}{9}(n-1) \\[5pt]
&=&
\frac{10^n-10}{81} -\frac{1}{9}(n-1) \\[5pt]
&=&
\frac{10^n}{81} -\frac{1}{9}n -\frac{1}{81} \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。 $n=1$ とすると、 $0$ となり、 $a_1$ と一致するため、数列 $\{a_n\}$ の一般項は\[ a_n=\frac{10^n}{81} -\frac{1}{9}n -\frac{1}{81} \]となります。
冒頭の数列の見た目の分かりやすさから想像がつかないような複雑な式ですが、 $n=1$ から $n=10$ までを代入するとたしかに一致します。気になる人はやってみましょう。
おわりに
ここでは、階差数列の階差数列を考える例を見ました。試験では、ごくまれに出題されることがありますが、基本的な方法としては、同じことを2回繰り返すだけです。階差数列からもとの数列の一般項が求められるようになっておけば、対応できるはずです。計算間違いしやすいので、検算するようにしましょう。