【標準】三次不等式の証明
ここでは、三次不等式が成り立つことを示す問題を見ていきます。
三次不等式の証明
三次不等式が成り立つことを示す問題です。
不等式の証明は、【基本】不等式の証明で見た通り、大きい方から小さい方を引いて、 $0$ 以上になることを示す、と考え始めるのが基本です。
ただ、そのように変形しても、なかなか進められません。使える道具が少ないからです。今まで、不等式を証明するには、条件式(今の場合は $x \geqq 1$ )を使って、二乗の差を計算したり、相加相乗平均の関係を使って示していました(参考:【基本】相加・相乗平均の関係)。今の場合、二乗してもさらに式が複雑になってしまうし、相加相乗平均の関係も使いにくいです。
そこで、ここでは考え方を変えて、三次関数そのものを調べる、という方針で解いてみましょう。つまり、左辺から右辺を引いた式が、つねに $0$ 以上になる、ということを示せばいいわけです。さらに言い換えれば、最小値が $0$ 以上であることを示せばいいですね。そうなると、結局、「微分をして、増減表をかいて…」という、他の問題と同じような流れになります。
$f(x)=x^3-5x^2+8x-4$ とおきます。これは、示したい不等式の、左辺から右辺を引いたものです。これを微分すると
\begin{eqnarray}
f'(x)
&=&
3x^2-10x+8 \\[5pt]
&=&
(3x-4)(x-2) \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。よって、 $f'(x)=0$ とすると、 $x=\dfrac{4}{3},2$ となります。 $f'(x)$ の符号は、正⇒負⇒正と変わっていくため、増減表は次のようになります。考える範囲が $x\geqq 1$ なので、増減表もこの範囲で考えます。
\begin{array}{c|ccccc}
x & 1 & \cdots & \frac{4}{3} & \cdots & 2 & \cdots \\
\hline
f’(x) & & + & 0 & – & 0 & + \\
\hline
f(x) & f(1) & \nearrow & f\left( \frac{4}{3} \right) & \searrow & f(2) & \nearrow
\end{array}ここで、
\begin{eqnarray}
f(1)
&=&
1^3-5\cdot 1^2 +8\cdot 1 -4 \\[5pt]
&=&
1-5 +8 -4 \\[5pt]
&=&
0
\end{eqnarray}であり、また、
\begin{eqnarray}
f(2)
&=&
2^3-5\cdot 2^2 +8\cdot 2 -4 \\[5pt]
&=&
8-20 +16 -4 \\[5pt]
&=&
0
\end{eqnarray}となります。このことから、増減表より $x\geqq 1$ のときに $f(x)\geqq 0$ となります。つまり、 $x\geqq 1$ のときに、 $x^3+8x\geqq 5x^2+4$ が成り立つ、ということですね。
一番小さくなるところで $0$ なんだから、考えている範囲では $0$ 以上になる、ということですね。今回は、たまたま極小値が最小値と一致していますが、【基本】微分と最大値・最小値で見たように、極小値と最小値が一致するとは限りません。極小値だけでなく、区間の端での値も調べないといけないことに注意しましょう。
なお、この問題では、極大値が何であっても不等式が成り立つことに関係しないので、特に計算しなくてもいいでしょう。グラフをかく必要もないでしょう。あってもいいです(あったほうが親切です)が、なかったとしても、最小値がどうなっているかを調べるだけで、不等式が成り立つことは証明できています。
ちなみに、次のように因数分解できる、ということに気づけるのであれば、こちらのほうが早いです。
\begin{eqnarray}
f(x)
&=&
x^3-5x^2+8x-4 \\[5pt]
&=&
(x-1)(x^2-4x+4) \\[5pt]
&=&
(x-1)(x-2)^2 \\[5pt]
\end{eqnarray}ここで、 $x\geqq 1$ のときは $x-1\geqq 0$ であり、 $(x-2)^2 \geqq 0$ なので、この積は $0$ 以上、だから $f(x) \geqq 0$ が成り立ちます。これに気づくなら、もちろんこちらの方がいいし簡単です。微分を使う方法は、計算は煩雑ですが、このような因数分解に気づかない場合、そもそも因数分解ができない場合でも使える、守備範囲の広い方法です。
おわりに
ここでは、三次不等式が成り立つことを、微分を用いて示す方法を見ました。大きい方から小さい方を引いて、最小値が0以上であること(問題によっては、「正であること」の場合もあります)を示す、という方針で考える方法です。この最小値を求めるときに、微分を用います。
不等式を示すときには、必ずこうすればできる、というものはないのですが、微分を使って示す方法は使える場面はたくさんあります。使える道具としてマスターしておきましょう。