【標準】放物線の平行移動(変数の置き換え)
【標準】放物線の平行移動(頂点に着目)では、平行移動した後の放物線の方程式を求めるときに、頂点の座標に着目して解きました。ここでは、別の解き方、変数を置き換えて解く方法を紹介します。
平行移動した後の放物線の方程式
いきなり結論から書いてしまうと、平行移動した後の放物線の方程式は、次のようにして求めることができます。
元の式の x を $x-p$ に、y を $y-q$ に置き換えたものになります。符号がプラスではなくてマイナスであることに注意しましょう。
さて、どうしてこのようにして求めることができるのでしょうか。【基本】二次関数y=a(x-p)^2+qのグラフ#どうしてpとqの符号が違うのかの内容とかぶるところが多いですが、書いていきます。
移動後のグラフ上の点 $(x,y)$ に対して、x と y がどういう関係式なのか、を求めるのが目標です。この点に対応する移動前の点を $(X,Y)$ としましょう。つまり、平行移動により、点 $(X,Y)$ が 点 $(x,y)$ に移った、とおくわけですね。
移動前の点 $(X,Y)$ については、X と Y との関係式は、すでにわかっています。移動前の放物線の方程式から\[ Y=aX^2+bX+c \ \cdots (1) \]となります。また、移動内容から考えて\[ X+p=x, \ Y+q=y \]が得られます。これを変形すると、次のように書けます。\[ X=x-p, \ Y=y-q \ \cdots (2) \]
(2)を(1)に代入すると、求めたかった x と y がどういう関係式が次のようになることがわかります。\[ y-q=a(x-p)^2+b(x-p)+c \]よって、上で書いたことが成り立つことがわかります。
p 移動するのに $x+p$ ではなく $x-p$ が出てくるのが不思議に思う人もいるかもしれません。これは、上の説明での「移動前の方程式を利用する」点からわかると思います。今使えるのは「移動前の方程式」だけなので、「移動後の点を $-p$ だけ移動する」必要があります。そのため、 $x-p$ が出てくるんですね。 $y-q$ も同様です。
ここでの説明は少し難しかったかもしれませんが、元の式の x を $x-p$ に、y を $y-q$ に置き換えたものになる、ということだけはおさえておきましょう。ちなみに、これと似たことはまた数学IIで出てきます。
例題
上で説明した内容を使って、問題を解いてみましょう。【標準】放物線の平行移動(頂点に着目)で出てきた問題を解いてみます。
\begin{eqnarray} y-(-2) &=& 3(x-1)^2-12(x-1)+10 \\ \end{eqnarray}となる。これを計算すると \begin{eqnarray} y &=& 3(x^2-2x+1)-12x+12+10-2 \\ &=& 3x^2-6x+3-12x+20 \\ &=& 3x^2-18x+23 \\ \end{eqnarray}となる。 (終)
頂点を求めるやり方より直接的に方程式を求められるので、計算量も少なくなります。「頂点を使う方法」は、頂点がわかっても方程式まではわからないので、間のステップが増えてしまうんですね。理屈がわかる人にはこちらの方がいいでしょう。
【標準】放物線の平行移動(頂点に着目)には、もう1つ、「どう平行移動すればいいか」という問題があります。こちらは頂点の移動だけを考えれば解けるので、「頂点を使う方法」の方が簡単です。移動距離を文字で置き、変数置き換えで解くこともできますが、かなり面倒です。
どっちのやり方を覚えておくべき?
放物線の平行移動に関する問題を解く方法として、頂点を使う方法と変数の置き換えによる方法(今読んでいるページ)を紹介しました。
現時点では「頂点を使う方法」は絶対にマスターしておく必要があります。頂点を求める計算も、これから頻繁に出てきます。「変数の置き換えによる方法」は今は使えなくてもかまいませんが、また数学IIで出てきますし、いずれはできるようになっておかないといけません。ということで、最終的にはどちらも使えるようになっておきましょう。
なお、グラフの平行移動の問題は、入試でも出題されることがあります。「頂点を使う方法」は放物線の場合にしか使えませんが、「変数の置き換えによる方法」での考え方は、他の場合にも応用がきく方法です。
おわりに
ここでは、平行移動した後の放物線の方程式を、変数置き換えを使って解く方法を見てきました。符号に注意し、 x を $x-p$ に、y を $y-q$ に置き換えて求めましょう。