【標準】n乗の展開と多項定理
ここでは、項が3つの n 乗の展開について見ていきます。
二項定理を使う方法
$(x+y)^n$ を展開したとき、 $x^ky^{n-k}$ の係数が ${}_n \mathrm{ C }_k$ になる、というのが二項定理の内容でした(参考:【基本】n乗の展開と二項定理)。これに関連して、「 $(x+y+z)^n$ ならどうなるか」と応用問題が考えられます。
まず、「項が2つのときに帰着させる」という方法があります。この方針で解いてみましょう。
$x+y$ をひとかたまりにして A とおくと、 $(A+z)^7$ となります。これなら二項定理が使えます。
このとき、これを展開したときに $z^2$ がついている項は\[ {}_7 \mathrm{ C }_5 \cdot A^5 \cdot z^2 \]となります。これ以外の部分から $x^3y^2z^2$ が出てくることはないので、これだけに注目すればいいですね。
さらに、 $A^5=(x+y)^5$ を展開したときの $x^3y^2$ の項について考えましょう。これも二項定理が使えるので\[ {}_5 \mathrm{ C }_3 \cdot x^3 \cdot y^2 \]となります。
以上から、 $x^3y^2z^2$ の係数は
\begin{eqnarray}
& &
{}_7 \mathrm{ C }_5 \times {}_5 \mathrm{ C }_3 \\[5pt]
&=&
{}_7 \mathrm{ C }_2 \times {}_5 \mathrm{ C }_2 \\[5pt]
&=&
\frac{7\cdot 6}{2\cdot 1} \times \frac{5\cdot 4}{2\cdot 1} \\[5pt]
&=&
210
\end{eqnarray}と求めることができます。
組合せを使う方法
ここでも同じ問題を考えます。
二項定理では ${}_n \mathrm{ C }_k$ が出てきますが、そもそもなぜこれが出てきたのかを思い出してみましょう。これは、 $(x+y)^n$ の n 個あるカッコの中から、 k 個の x を選ぶから、でしたね(参考:【基本】n乗の展開と二項定理)。
この発想を使いまわすと、上の問題では、「7個あるカッコの中から、3個の x と2個の y を選ぶ方法の総数」を考えればいいことがわかります(残りは全部 z なので、z の選び方は考えなくても構いません)。これを計算して、
\begin{eqnarray}
& &
{}_7 \mathrm{ C }_3 \times {}_4 \mathrm{ C }_2 \\[5pt]
&=&
\frac{7\cdot 6\cdot 5}{3\cdot 2\cdot 1} \times \frac{4\cdot 3}{2\cdot 1} \\[5pt]
&=&
210
\end{eqnarray}と求められます。当たり前ですが、1つ目の解き方と同じ答えですね。
多項定理
上の例題は一般化することができます。
$(x+y+z)^n$ を展開したときの係数を考えましょう。このとき、各項は $x^p y^q z^r$ の形になります。ここで、 p, q, r は $p+q+r=n$ を満たす、0以上の整数です。
n 個あるカッコの中から、 p 個の x と q 個の y の選ぶ方の総数が、 $x^p y^q z^r$ の係数になります(残りは z なので、 z の選び方は考えなくてもいい)。これより、係数は\[ {}_n \mathrm{ C }_p \times {}_{n-p} \mathrm{ C }_q \]と書けることがわかります。
ここで、この式を階乗を使って変形すると(参考:【標準】組合せ#階乗との関係)
\begin{eqnarray}
& &
{}_n \mathrm{ C }_p \times {}_{n-p} \mathrm{ C }_q \\[5pt]
&=&
\frac{n!}{p! (n-p)!} \times \frac{(n-p)!}{q! (n-p-q)!} \\[5pt]
&=&
\frac{n!}{p! q! (n-p-q)!} \\[5pt]
&=&
\frac{n!}{p! q! r!} \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。なかなかきれいな形ですね。
これは、3つではなく、もっと多くの項でも成り立ちます。一般化したものは、多項定理 (multinomial theorem) と呼ばれていますが、ここでは3項の場合の内容を書いておきます。
なお、これを使えば、上の例題は
\begin{eqnarray}
\frac{7!}{3! 2! 2!} = 7\cdot 5\cdot 3\cdot 2 = 210
\end{eqnarray}と求められます。
おわりに
ここでは、3項の場合の多項定理について考えました。階乗を使ってすっきり書けるので、内容も覚えやすいですね。