【基本】n乗の展開と二項定理
ここでは、 n 乗を展開したときの係数を求める方法を考えます。【基本】n乗の展開で見た方法とは異なり、直接求める方法を見ていきます。
2乗の展開をもう一度考えてみる
$(x+y)^2$ の展開に関連して、次のような展開を考えてみましょう。1つ目のカッコの中の文字には右下に1をつけて、2つ目のカッコには2をつけて、x, y が区別できるようにしてみました。
\begin{eqnarray}
& &
(x_1+y_1)(x_2+y_2) \\[5pt]
&=&
x_1x_2 +x_1y_2 +y_1x_2 +y_1y_2
\end{eqnarray}ただ展開しただけです。ここで注目したいのは、展開後の各項は、文字は違うけれど、「右下が1 × 右下が2」の形であることは共通している、ということです。そして、どの項も、文字が2つです。
ちなみに、この右下の数字を無視した場合は、展開の公式そのままで、
\begin{eqnarray}
& &
(x+y)(x+y) \\[5pt]
&=&
x^2 +2xy+y^2
\end{eqnarray}となります。ここで、さきほどの式と比較すると、 $2xy$ というのは、 $x_1y_2$, $y_1x_2$ の2つに由来していることがわかります。つまり、 $xy$ を作るには、
- 1つ目の x と、2つ目の y
- 1つ目の y と、2つ目の x
3乗の展開をもう一度考えてみる
もう1つ考えてみましょう。
3つの積だとどうなるでしょうか。同じように\[ (x_1+y_1)(x_2+y_2)(x_3+y_3) \]を展開してみると、各項は、文字が3つであり、どの項も「右下が1 × 右下が2 × 右下が3」の形となります(気になる人は実際に展開してみましょう)。
この式を展開した結果と、右下の数字がなかった場合の結果
\begin{eqnarray}
& &
(x+y)(x+y)(x+y) \\[5pt]
&=&
x^3 +3x^2y +3xy^2+y^3
\end{eqnarray}とを比較すると、例えば $3x^2y$ というのは、 $y_1x_2x_3$, $x_1y_2x_3$, $x_1x_2y_3$ の3つに由来していることがわかります。つまり、 $x^2y$ を作るには、
- 1つ目の y と、2つ目の x と、3つ目の x
- 1つ目の x と、2つ目の y と、3つ目の x
- 1つ目の x と、2つ目の x と、3つ目の y
言い換えると、3つあるカッコの中から、2つの x と、1つの y を選ぶ組合せになっている、ということです。【基本】組合せで出てきた記号を使えば、 $x^2y$ の係数は ${}_3 \mathrm{ C }_2$ だということができるわけです。
二項定理
ここまでで見た内容を一般化すると、 $(x+y)^n$ を展開したときは、どの項も文字が n 個になります。つまり、 $x^k y^{n-k}$ の形になる、ということです。
そして、 $x^k y^{n-k}$ の係数は、 n 個あるカッコの中から、 k 個の x と $n-k$ 個の y を選ぶ方法だと考えられるので、 ${}_n \mathrm{ C }_k$ になることもわかります。
例えば、 $(x+y)^5$ の $x^3y^2$ の係数を求めたいなら、\[ {}_5 \mathrm{ C }_3=10 \]と計算すればいいことになります。【基本】n乗の展開とパスカルの三角形の後半で5乗の展開の式を書きましたが、それと見比べてもあっていることがわかります。
このような性質が成り立つことを、二項定理 (binomial theorem)といいます。2つの項の n 乗の展開に関するものなので、こうした名前がついています。
まとめると、次のようになります。
なお、 【基本】組合せで見たように、 ${}_n \mathrm{ C }_n = {}_n \mathrm{ C }_0=1$ です。また、まだ出てきていませんが、 $x^0=y^0=1$ です(x, y が0でない場合)。
この定理から、 ${}_n \mathrm{ C }_k$ のことを、二項係数 (binomial coefficients) と呼ぶこともあります。
おわりに
ここでは、 n 乗の展開に関する定理、二項定理について見ました。 $(x+y)^n$ を展開したとき、 $x^ky^{n-k}$ の係数は ${}_n \mathrm{ C }_k$ となります。展開をしなくても計算できるので便利ですね。