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【基本】n乗の展開と二項定理

ここでは、 n 乗を展開したときの係数を求める方法を考えます。【基本】n乗の展開で見た方法とは異なり、直接求める方法を見ていきます。

📘 目次

2乗の展開をもう一度考えてみる

$(x+y)^2$ の展開に関連して、次のような展開を考えてみましょう。1つ目のカッコの中の文字には右下に1をつけて、2つ目のカッコには2をつけて、x, y が区別できるようにしてみました。
\begin{eqnarray} & & (x_1+y_1)(x_2+y_2) \\[5pt] &=& x_1x_2 +x_1y_2 +y_1x_2 +y_1y_2 \end{eqnarray}ただ展開しただけです。ここで注目したいのは、展開後の各項は、文字は違うけれど、「右下が1 × 右下が2」の形であることは共通している、ということです。そして、どの項も、文字が2つです。

ちなみに、この右下の数字を無視した場合は、展開の公式そのままで、
\begin{eqnarray} & & (x+y)(x+y) \\[5pt] &=& x^2 +2xy+y^2 \end{eqnarray}となります。ここで、さきほどの式と比較すると、 $2xy$ というのは、 $x_1y_2$, $y_1x_2$ の2つに由来していることがわかります。つまり、 $xy$ を作るには、

  • 1つ目の x と、2つ目の y
  • 1つ目の y と、2つ目の x
の2つの作り方があるから、 $xy$ の係数が $2$ となっている、ということです。これは、2つあるカッコの中から、1つの x と、1つの y を選ぶ組合せ、と考えることができます。

3乗の展開をもう一度考えてみる

もう1つ考えてみましょう。

3つの積だとどうなるでしょうか。同じように\[ (x_1+y_1)(x_2+y_2)(x_3+y_3) \]を展開してみると、各項は、文字が3つであり、どの項も「右下が1 × 右下が2 × 右下が3」の形となります(気になる人は実際に展開してみましょう)。

この式を展開した結果と、右下の数字がなかった場合の結果
\begin{eqnarray} & & (x+y)(x+y)(x+y) \\[5pt] &=& x^3 +3x^2y +3xy^2+y^3 \end{eqnarray}とを比較すると、例えば $3x^2y$ というのは、 $y_1x_2x_3$, $x_1y_2x_3$, $x_1x_2y_3$ の3つに由来していることがわかります。つまり、 $x^2y$ を作るには、

  • 1つ目の y と、2つ目の x と、3つ目の x
  • 1つ目の x と、2つ目の y と、3つ目の x
  • 1つ目の x と、2つ目の x と、3つ目の y
の3つの作り方があるから、 $x^2y$ の係数が $3$ となっている、ということです。

言い換えると、3つあるカッコの中から、2つの x と、1つの y を選ぶ組合せになっている、ということです。【基本】組合せで出てきた記号を使えば、 $x^2y$ の係数は ${}_3 \mathrm{ C }_2$ だということができるわけです。

二項定理

ここまでで見た内容を一般化すると、 $(x+y)^n$ を展開したときは、どの項も文字が n 個になります。つまり、 $x^k y^{n-k}$ の形になる、ということです。

そして、 $x^k y^{n-k}$ の係数は、 n 個あるカッコの中から、 k 個の x と $n-k$ 個の y を選ぶ方法だと考えられるので、 ${}_n \mathrm{ C }_k$ になることもわかります。

例えば、 $(x+y)^5$ の $x^3y^2$ の係数を求めたいなら、\[ {}_5 \mathrm{ C }_3=10 \]と計算すればいいことになります。【基本】n乗の展開とパスカルの三角形の後半で5乗の展開の式を書きましたが、それと見比べてもあっていることがわかります。

このような性質が成り立つことを、二項定理 (binomial theorem)といいます。2つの項の n 乗の展開に関するものなので、こうした名前がついています。

まとめると、次のようになります。

二項定理
n が0以上の整数のとき、 $(x+y)^n$ を展開すると、どの項も $x^k y^{n-k}$ の形になる(k は0以上 n 以下の整数)。 また、 $x^k y^{n-k}$ の係数は、 ${}_n \mathrm{ C }_k$ となる。
具体的に書くと、次のようになる。
\begin{eqnarray} & & (x+y)^n \\[5pt] &=& {}_n \mathrm{ C }_n x^n +{}_n \mathrm{ C }_{n-1} x^{n-1} y +{}_n \mathrm{ C }_{n-2} x^{n-2} y^2 +\cdots \\[5pt] & & \cdots +{}_n \mathrm{ C }_{k} x^k y^{n-k} +\cdots +{}_n \mathrm{ C }_1 x y^{n-1} +{}_n \mathrm{ C }_0 y^n \end{eqnarray}

なお、 【基本】組合せで見たように、 ${}_n \mathrm{ C }_n = {}_n \mathrm{ C }_0=1$ です。また、まだ出てきていませんが、 $x^0=y^0=1$ です(x, y が0でない場合)。

${}_n \mathrm{ C }_k={}_n \mathrm{ C }_{n-k}$ なので、順番を反転して、次のように書いている教科書もあります。
\begin{eqnarray} & & (x+y)^n \\[5pt] &=& {}_n \mathrm{ C }_0 x^n +{}_n \mathrm{ C }_1 x^{n-1} y +{}_n \mathrm{ C }_2 x^{n-2} y^2 +\cdots \\[5pt] & & \cdots +{}_n \mathrm{ C }_{n-k} x^k y^{n-k} +\cdots +{}_n \mathrm{ C }_{n-1} x y^{n-1} +{}_n \mathrm{ C }_{n} y^n \end{eqnarray}

また、数列で学ぶ $\sum$ を使うと(参考:【基本】和の記号Σ)、次のようにスッキリ書くことができます。\[ (x+y)^n = \sum_{k=0}^n {}_n \mathrm{ C }_{k} x^k y^{n-k} = \sum_{k=0}^n {}_n \mathrm{ C }_{n-k} x^k y^{n-k} \]

この二項定理から、 ${}_n \mathrm{ C }_k$ のことを、二項係数 (binomial coefficients) と呼ぶこともあります。

おわりに

ここでは、 n 乗の展開に関する定理、二項定理について見ました。 $(x+y)^n$ を展開したとき、 $x^ky^{n-k}$ の係数は ${}_n \mathrm{ C }_k$ となります。展開をしなくても計算できるので便利ですね。

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