【標準】数学的帰納法と不等式の証明

ここでは、数学的帰納法を使って不等式を証明する方法について見ていきます。

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数学的帰納法を使った不等式の証明

例題
n は自然数で、 $x\geqq -1$ とする。このとき、\[ (1+x)^n\geqq 1+nx \]が成り立つことを示しなさい。

これは、ベルヌーイの不等式(Bernoulli’s inequality) と呼ばれているもので、 $1+x$ のべき乗の値について調べたいときに使われます。

不等式の場合にも、数学的帰納法を使うことができます。【標準】数学的帰納法と等式の証明などで見たように、2つのステップで示しましょう。

後で呼びやすいように、この不等式を (*) で呼ぶことにしましょう。

(i) $n=1$ のとき

不等式の左辺は $1+x$ であり、右辺も $1+x$ なので、このとき (*) が成り立つことがわかります。

(ii) $n=k$ のときに (*) が成り立つとします。つまり、\[ (1+x)^k\geqq 1+kx \]が成り立つとします。このときに、 $n=k+1$ でも (*) が成り立つことを示します。示したい式を具体的に書くと\[ (1+x)^{k+1}\geqq 1+(k+1)x \]となります。

$(1+x)^k\geqq 1+kx$ の左辺にもう一度 $(1+x)$ を掛ければ、示したい不等式の左辺になります。よって
\begin{eqnarray}
(1+x)^{k+1}
& \geqq & (1+kx)(1+x) \\[5pt] &=& 1+x+kx+kx^2 \\[5pt] &=& 1+(k+1)x+kx^2 \\[5pt] &\geqq& 1+(k+1)x \\[5pt] \end{eqnarray}となります。最後の不等式は $k\geqq 1$ だから成り立つ式です。最初と最後の式を見れば、 $n=k+1$ のときにも (*) が成り立つことがわかります。

(i)(ii)より、数学的帰納法から、すべての自然数 n について (*) が成り立つことが示せました。

ベルヌーイの不等式と二項定理

上の例題を直接示す方法は難しいですが、 $x\geqq 0$ という範囲であれば、簡単に示せます。二項定理(参考:【標準】n乗の展開と二項定理)を使えば、
\begin{eqnarray}
& &
(1+x)^n \\[5pt] &=&
1+{}_n\mathrm{C}_1 x+{}_n\mathrm{C}_2 x^2+\cdots+{}_n\mathrm{C}_n x^n \\[5pt] & \geqq &
1+nx
\end{eqnarray}となります。最後の不等式は $x\geqq 0$ なら成り立つことはすぐにわかります。

上の証明では、 $x\geqq -1$ でも成り立つ証明なので、より厳しい条件で成り立つ不等式が証明できていることになります。

おわりに

ここでは、数学的帰納法を使って、不等式の証明を行いました。不等式の場合、2ステップ目で、仮定の使い方が少し難しくなります。一般的な不等式の証明の仕方にも慣れておく必要があります。