【標準】絶対値を含んだ一次不等式(絶対値の性質)
この記事では、不等式に絶対値が含まれている問題を考えます。【標準】絶対値を含む一次不等式(場合分け)では、場合分けをして絶対値を外す方法を紹介しましたが、ここでは、絶対値の性質を使う方法を紹介します。
絶対値の性質
絶対値は、数直線で考えると、原点からの距離を表すのでしたね。$|a|$ というのは、原点と $a$ との距離ということです。
このことを踏まえて、絶対値を含んだ不等式を考えてみましょう。$|x|\lt 3$ というのは、原点からの距離が3未満の範囲ということなので、$-3\lt x\lt 3$ であることがわかります。
また、$|x|\gt 3$ の場合は、数直線で考えると「原点からの距離が3より遠い」ということなので、図では次のようになります。$x\lt -3$, $x\gt 3$ が解になることが分かりますね。
まとめると、絶対値を含む不等式には、次のような性質があります。
$|x|\lt a$ の解は、$-a\lt x\lt a$
$|x|\gt a$ の解は、$x\lt -a$, $x\gt a$
続いて、この性質を用いて例題を解いてみます。
例題
(1) $|x+1|\gt 2$
(2) $|x-2|\leqq 1$
ちなみに、【標準】絶対値を含む一次不等式(場合分け)で取り上げたのと同じ問題です。
(1)は上に書いた性質のうち、2つ目を使います。すると、$x+1\lt -2$, $x+1\gt 2$ が得られます。この2つの不等式を解けば、$x\lt -3$, $x\gt 1$ が解であることがわかります。
(2)は上に書いた性質のうち、1つ目を使います。イコールが入っている点が違いますが、次のようになります。\[ -1\leqq x-2\leqq 1 \]辺々に2を足せば、\[ 1\leqq x\leqq 3 \]が得られます。これが解です。
どちらも、【標準】絶対値を含む一次不等式(場合分け)と同じ問題なので、同じ解になっています。
どっちで解けばいいの?
さて、絶対値を含んだ一次不等式の解き方を見てきました。【標準】絶対値を含む一次不等式(場合分け)とこの記事とで、2種類の解き方を紹介しました。
計算量でいくと、この記事で紹介した解法の方が楽なようにも思います。ただ、1つ注意点としては、この記事で紹介したとき方は、いつでも使えるわけではないということです。
例えば、$|x|+|x+1|\lt 3$ などという問題では、この記事で紹介した方法は使えません。この記事で紹介した方法は、$|x|\gt a$ や $|x|\lt a$ の形になっていないと適用できません。複数の絶対値があったり、右辺にも文字がある場合は、絶対値の中が0以上か負かで場合分けをする方法で、地道に解くしかありません。
なので、絶対値を含む不等式を解くときの解法は
- 場合分け ⇒ 場合分けが面倒だが、必ず解ける
- 絶対値の性質 ⇒ 計算量が減ることは多いが、使えない場面もある
ということなので、どちらの方法でもできるようになっておいた方がいいでしょう。
おわりに
ここでは、絶対値を含んだ一次不等式の解き方を見てきました。絶対値の性質を用いて解くと、場合分けをして解くよりも計算量が少なくて済みます。使えない場面もありますが、この解き方もできるようになっておきましょう。