🏠 Home / 数学I / 数と式 / 一次不等式

【基本】不等式の性質

【基本】不等式に関する記号では、不等式に登場する記号の説明をしました。不等号は、数字の大小関係を表す記号でしたね。

ここでは、不等式を解くために必要となる、不等式の基本的な性質を見ていくことにします。

📘 目次

不等式の性質を知る目的

不等式を考える前に、等式の場合を思い出してみましょう。$3x+2=5$ という式があったとします。この「方程式を解く」というのは、+2を右辺に移項し、両辺を3で割って $x=1$ と値を求めることを言うんでしたね。

不等式を解くときも同様で、 $3x+2 \gt 5$ という不等式を解くというのは、この式を満たす $x$ の範囲を求めることをいいます。しかし、等式の場合とは違って、不等号の向きがどうなるかに注意しないといけません。式の変形の仕方によっては、不等号の向きが変わってしまうケースがあるんですね。

以下では、両辺に同じ数を足し引きしたり、掛けたり割ったりしたときに、不等号の向きがどうなるかを見ていきます。不等式の性質を知ることで、「不等式を解く」ことができるようになります。

両辺に同じものを足す場合、引く場合

パン屋に行くと、おいしそうなクロワッサン(1個100円)とメロンパン(1個150円)があったとしましょう。値段が高いのは、メロンパンの方ですね。

パンを1個買うときに、100円のコーヒーも一緒に買うとした場合、どちらの方が高くつくでしょうか。

  • クロワッサン(1個100円)とコーヒー
  • メロンパン(1個150円)とコーヒー
どちらでしょう。もちろん後者ですよね。

20円引きにクーポンを持っていたとしましょう。

  • 値引き後のクロワッサン
  • 値引き後のメロンパン
どちらが高いでしょうか。これも後者です。

つまり、何が言いたいかというと、「同じものを足したり引いたりしても、大小関係は変わらない」ということです。具体的な数で考えていると当たり前ですね。差が変わらないわけですし。数式で書けば、次のようになります。

不等式の性質
$a\gt b$ ならば、次が成り立つ。
 $a+c \gt b+c$
 $a-c \gt b-c$

これは、見方を変えれば「移行しても不等号の向きが変わらない」と言うこともできます。$a+c\gt b$ の両辺から $c$ を引けば、$a\gt b-c$ が得られます。これは、不等式でも、等式と同じように移行できる、というわけですね。

両辺に同じものを掛ける場合、同じもので割る場合

先ほどの例、100円のクロワッサンと150円のメロンパンのケースをもう少し考えてみます。

それぞれ、3つずつ買うとすると、どちらが高いでしょうか。もちろん、メロンパン3つの方が高いです。では、友達と半分に分けるから、お金も半分出してくれる、という場合ではどうでしょう。値段を半分にしても、メロンパンの方が高くなることには変わりませんね。

ただ、ここで「なーんだ、掛ける・割るときも、不等号の向きは変わらないのか」と思ったら、実はなんですね。

マイナスを掛ける場合を考えてみます。パンをマイナス個買うというのは想像しにくいので、気温で考えてみましょう。

A市とB市の夏の気温が、それぞれ10度と20度だったとしましょう。このとき、B市の気温の方が高いですね。もし、冬になると、今度は逆にマイナスをつけた気温になるとします。つまり、マイナス10度とマイナス20度、ということです。どちらの方が気温が高いでしょうか。どちらも寒いですが、マイナス10度の方が高いですね。「A市の方が高い」という結果になってしまいました。

これからわかることは、マイナスを掛けると、大小関係が入れ替わるということです。これが不等式の分野で一番気をつけないといけないことなんですね。

今までのことを数式を使ってまとめると、次のようになります。

不等式の性質
$a\gt b$, $c \gt 0$ ならば、次が成り立つ。
 $ac \gt bc$
 $\displaystyle \frac{a}{c} \gt \frac{b}{c}$

$a\gt b$, $c \lt 0$ ならば、次が成り立つ。
 $ac \lt bc$
 $\displaystyle \frac{a}{c} \lt \frac{b}{c}$

不等式でのマイナスの掛け算と移行

不等式の両辺にマイナスの数を掛けると、不等号の向きが変わることを述べました。ここでは、移行を用いて、このことをもう少し見ていきましょう。

\[ a \gt b \]という不等式を考えます。このとき、両辺から $a$ を引いてみましょう。同じ数を引いても不等号の向きは変わらないので、次のようになります。\[ 0 \gt b-a \]さらに、 $b$ も引いてみましょう。\[ -b \gt -a \]左辺の方が大きいので、両辺をひっくり返して、不等号の向きもひっくり返せば、\[ -a \lt -b \]となります。$a \gt b$ から $-a \lt -b$ が導けました。「マイナスを掛けると不等号の向きが入れ替わる」ことを表す式です。

このように、移行の考え方を用いても、$a \gt b$ の両辺に $-1$ を掛ければ、$-a \lt -b$ になることがわかります。

おわりに

ここでは、不等式の性質を見てきました。もう一度まとめておきましょう。

  • 不等式の両辺に、同じ数を足したり引いたりしても、不等号の向きは変わらない。
  • 不等式の両辺に、同じ正の数を掛けたり、同じ正の数で割ったりしても、不等号の向きは変わらない。
  • 不等式の両辺に、同じ負の数を掛けたり、同じ負の数で割ったりすると、不等号の向きが変わる

これらのことを使えば、$3x+2 \gt 5$ という不等式に対して、両辺から $2$ を引いて、$3x\gt 3$ と変形できるし、さらに $3$ で割って $x\gt 1$ と変形できるということです。このような変形を「不等式を解く」と言います。不等式の解き方については、また別のページ(【基本】一次不等式の解き方)で見ていきます。

関連するページ

YouTubeもやってます

チャンネル登録はコチラから (以下は、動画のサンプルです)
慶應義塾大学薬学部2024年度数学第1問5 同志社大学文系2024年度数学第1問3 昭和大学医学部I期2024年度数学第2問 兵庫医科大学2024年度数学第3問 共通テスト2B2024年度第3問2のヒントについて 久留米大学医学部推薦2024年度数学第4問