【基本】一次不等式の解き方
【基本】不等式の性質の内容をもとに、ここでは一次不等式の解き方を見ていきます。どんな性質だったかをもう一度書くと、
- 不等式の両辺に、同じ数を足したり引いたりしても、不等号の向きは変わらない。
- 不等式の両辺に、同じ正の数を掛けたり、同じ正の数で割ったりしても、不等号の向きは変わらない。
- 不等式の両辺に、同じ負の数を掛けたり、同じ負の数で割ったりすると、不等号の向きが変わる。
一次不等式の解き方
不等式の右辺にある変数を左辺にすべて移行をしたとき、左辺の次数が1になる不等式のことを一次不等式といいます。例えば、 $x+2\gt 0$ や $-2y+7 \leqq y-1$ は一次不等式です。一方、$x^2+2x\lt 3$ や $\sqrt{x+1} \geqq 2$ などは一次不等式とは呼びません。
一次不等式の解き方は、一次方程式のときとかなり似ています。文字を含むものを左辺に、含まないものを右辺に移項し、両辺を係数で割ればおしまいです。注意が必要なのは、「両辺に負の数を掛ける・両辺を負の数で割るときは、不等号の向きを変える」ことです。
具体的な例を使って解き方を見ていきましょう。
例題
(1) $3x+2 \gt 14$
(2) $-0.9x-1.5\leqq -0.3x-2.1$
(3) $\displaystyle \frac{x+3}{4}-1 \lt \frac{x}{3}$
(1)は、まず文字を含むものを左辺に、含まないものを右辺に移項します。
\begin{eqnarray}
3x+2 & \gt & 14 \\
3x & \gt & 14-2 \\
3x & \gt & 12 \\
\end{eqnarray}次に、両辺を $x$ の係数で割ります。すると、次が得られます。\[ x\gt 4 \]これが答えです。基本的には、方程式を解くときと同じですね。
(2) $-0.9x-1.5\leqq -0.3x-2.1$ は、小数なのでじゃまくさいですね。こういう場合は両辺を10倍して、小数ではない形にしたほうが計算しやすいでしょう。それ以降は、(1)と同様です。
\begin{eqnarray}
-0.9x-1.5 & \leqq & -0.3x-2.1 \\
-9x-15 & \leqq & -3x-21 \\
-9x+3x & \leqq & -21+15 \\
-6x & \leqq & -6 \\
\end{eqnarray}ここで注意しないといけないのは、負の数で割ったときに、不等号の向きが変わるということです。今の場合であれば、$-6$ という負の数で割るので、不等号の向きは次のように反転させなくてはいけません。\[ x\geqq 1 \]これが(2)の答えです。
最後の(3) $\displaystyle \frac{x+3}{4}-1 \lt \frac{x}{3}$ は分数なので、これもじゃまくさいですね。通分して計算してもいいですが、はじめに両辺を何倍かして、分数でない形にしたほうが計算しやすいでしょう。今の場合であれば、両辺を12倍すればいいですね。
\begin{eqnarray}
\frac{x+3}{4}-1 & \lt & \frac{x}{3} \\[5pt]
3(x+3)-12 & \lt & 4x \\
\end{eqnarray}12を掛けた直後はこうなります。左辺にある「-1」にも掛けることを忘れないようにしましょう。あとは同じです。
\begin{eqnarray}
3(x+3)-12 & \lt & 4x \\
3x+9-12 & \lt & 4x \\
3x-4x & \lt & 3 \\
-x & \lt & 3 \\
x & \gt & -3 \\
\end{eqnarray}これが答えです。最後はマイナス1を両辺に掛けるので、不等号を反転するのを忘れないようにしましょう。
おわりに
一次不等式の解き方を見てきました。負の数の掛け算・割り算のときは不等号の向きを変えなければいけませんが、その点以外は一次方程式と同じ方針で解けます。
なお、グラフを用いて一次不等式を解く方法もあります。【基本】一次不等式と一次関数のグラフを参考にしてみましょう。