【標準】ベクトルの内積と中線定理
ここでは、ベクトルの内積と大きさの関係を使った問題を見ます。そして、それが中線定理とつながっていることも見ていきます。
ベクトルの内積と大きさの関係を使った等式
【標準】ベクトルの内積と大きさでも見たように、ベクトルの絶対値の2乗は内積を使って計算できるのでしたね。これを用いて左辺を計算していきましょう。
\begin{eqnarray}
& &
|\vec{a}+\vec{b}|^2+|\vec{a}-\vec{b}|^2 \\[5pt]
&=&
(\vec{a}+\vec{b})\cdot(\vec{a}+\vec{b})+(\vec{a}-\vec{b})\cdot(\vec{a}-\vec{b}) \\[5pt]
&=&
|\vec{a}|^2+2\vec{a}\vec{b}+|\vec{b}|^2+|\vec{a}|^2-2\vec{a}\vec{b}+|\vec{b}|^2 \\[5pt]
&=&
2|\vec{a}|^2+2|\vec{b}|^2 \\[5pt]
\end{eqnarray}となるため、右辺と一致することがわかります。
ベクトルの内積と中線定理
先ほどの例題は、計算するだけで解けてしまうのですが、実は中線定理と深い関係があります。中線定理(parallelogram law)とは、次のような内容です。
中線定理は、【発展】三角比と中線定理や【標準】座標を使った中線定理の証明などで出てきています。これと先ほどの例題がどう関係しているか、考えてみましょう。
上の図で、 $\overrightarrow{ \mathrm{ AB } }=\vec{a}$, $\overrightarrow{ \mathrm{ AC } }=\vec{b}$ とします。すると、 M は BC の中点だから、\[ \overrightarrow{ \mathrm{ AM } }=\frac{\vec{a}+\vec{b} }{2} \]が成り立ちます。また、\[ \overrightarrow{ \mathrm{ BM } }=\frac{1}{2}\overrightarrow{ \mathrm{ BC } }=\frac{\vec{b}-\vec{a} }{2} \]と書けます。
先ほどの例題で、これらのベクトルが出てくるように少し変形してみましょう。
\begin{eqnarray}
|\vec{a}+\vec{b}|^2+|\vec{a}-\vec{b}|^2 &=& 2(|\vec{a}|^2+|\vec{b}|^2) \\[5pt]
\frac{1}{2}|\vec{a}+\vec{b}|^2+\frac{1}{2}|\vec{a}-\vec{b}|^2 &=& |\vec{a}|^2+|\vec{b}|^2 \\[5pt]
2|\frac{\vec{a}+\vec{b} }{2}|^2+2|\frac{\vec{b}-\vec{a} }{2}|^2 &=& |\vec{a}|^2+|\vec{b}|^2 \\[5pt]
2\left|\overrightarrow{ \mathrm{ AM } }\right|^2+2\left|\overrightarrow{ \mathrm{ BM } }\right|^2 &=& |\overrightarrow{ \mathrm{ AB } }|^2+|\overrightarrow{ \mathrm{ AC } }|^2 \\[5pt]
\end{eqnarray}この最後の式は、まさに中線定理の内容ですね。なので、先ほどの例題は、中線定理を示していることと同じなんですね。
【標準】座標を使った中線定理の証明と比べてみましょう。座標を使った場合は、計算が簡単になるように、中点が原点にくるように移動したり、いろいろはじめにやっておくべきことがあります。しかし、ベクトルの場合は、基準の点を好きに変えられる(A を使っていい)し、向きの基準も自由に変えられる( $\overrightarrow{ \mathrm{ AB } }$ や $\overrightarrow{ \mathrm{ AC } }$ を使っていい)ので、そんな面倒なことはしなくてもいいんですね。座標よりもスッキリ示せますね。
おわりに
ここでは、ベクトルの内積と大きさの関係を使った問題を見ました。それと中線定理との関係を見て、座標で証明するときとの比較も行いました。ベクトルの便利さが感じられる例だと思います。