【標準】xのn乗の微分と二項定理
ここでは、 $x^n$ を微分すると $nx^{n-1}$ になることを、二項定理を用いて示していきます。
ただ、当面は、出てくるものはほとんど3乗までです。出てきても4乗です。なので、一般の n 乗の場合を示さなくても十分やっていけます。そのため、この証明は、参考のために見ておく、というスタンスで大丈夫です。
xのn乗の微分
【基本】整式の導関数で見たように、 n が自然数のとき、 $x^n$ を微分すると、 $nx^{n-1}$ となる、と紹介しました。ここでは、なぜこうなるかを見ていきます。
$x^n$ の導関数を求めるには、定義通りに行えば、次を計算することになります(参考:【基本】導関数)。\[ \lim_{h\to 0} \frac{(x+h)^n-x^n}{h} \]単純に $h=0$ とすることはできません。分母も分子も $0$ となってしまい、値がわからないからです。そのため、変形が必要です。
まず真っ先に思いつく方法は、分子のカッコを展開する方法ですね。これを展開すれば、後の計算は簡単にできます。問題は、どうやって展開するかですね。3乗や4乗くらいなら、そのまま展開できますが、一般の場合は少し難しいです。
xのn乗の微分と二項定理
$(x+h)^n$ を展開するためには、二項定理を使います。【基本】n乗の展開と二項定理や【標準】n乗の展開と二項定理で見た内容を振り返ると、これを展開すると次のようになります。
\begin{eqnarray}
& &
(x+h)^n \\[5pt]
&=&
{}_n \mathrm{ C }_n x^n
+{}_n \mathrm{ C }_{n-1} x^{n-1} h
+{}_n \mathrm{ C }_{n-2} x^{n-2} h^2
+\cdots \\[5pt]
& & \cdots
+{}_n \mathrm{ C }_{k} x^k h^{n-k}
+\cdots
+{}_n \mathrm{ C }_1 x h^{n-1}
+{}_n \mathrm{ C }_0 h^n
\end{eqnarray}これは、 $n$ 個あるカッコの中から x, h のどちらかを選んでいく、と考えればいいんでしたね。どちらを選んでも掛ける回数は n 回になるので、各項は $x^kh^{n-k}$ というように、右上の数字を足せば n になります。また、この項の係数は、 n 個のカッコから、 k 個の x を選び、残りを h にすればいいので、 ${}_n \mathrm{ C }_{k}$ となるんですね。
さて、微分を求める式\[ \lim_{h\to 0} \frac{(x+h)^n-x^n}{h} \]と見比べながら考えましょう。上で展開した式から $x^n$ を引くと、展開した式の1項目が消えます。 ${}_n \mathrm{ C }_n=1$ だからですね。これを h で割るとどうなるでしょうか。3項目以降は、 h が2回以上掛けられているため、 h で割っても h は残ります。そのため、 h を $0$ に近づければ、3項目以降の項はすべて $0$ に近づいていきます。
まだ考えていないのは、2項目ですね。これは、 h が1回しか掛けられていないため、 h で割ると、 h が消えます。
結果的に、 $(x+h)^n$ を展開した式について、 $x^n$ を引くことによって1項目が消え、 $h$ で割って $h\to 0$ とすることで3項目以降が消えるため、
\begin{eqnarray}
& &
\lim_{h\to 0} \frac{(x+h)^n-x^n}{h} \\[5pt]
&=&
{}_n \mathrm{ C }_{n-1} x^{n-1} \\[5pt]
&=&
{}_n \mathrm{ C }_{1} x^{n-1} \\[5pt]
&=&
n x^{n-1} \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。途中で、【標準】組合せで見たように、 ${}_n \mathrm{ C }_{n-r}={}_n \mathrm{ C }_r$ が成り立つことを利用しています。
$(x+h)^n$ を展開したときの2項目だけが残ることで、 $x^n$ の微分が $n x^{n-1}$ となることがわかります。
おわりに
ここでは、 $x^n$ を微分すると $nx^{n-1}$ になることを見ました。いくつか証明方法はありますが、ここでは二項定理を使った証明を紹介しました。