【標準】常用対数と不等式
ここでは、常用対数を含んだ不等式を解く問題を考えます。
常用対数と不等式1
常用対数を使って、何桁かを求める方法は、【基本】常用対数と桁数で見ました。自然数 $N$ が10桁の数だとすると、\[ 10^9\leqq N \lt 10^{10} \]となることがわかります。 $10^1$ は2桁の数なので、対応を考えると、 $10^9$ は10桁の数になる、ということに注意しましょう。
もし $3^n$ が10桁の数なら、上の不等式を満たすことがわかります。常用対数を考えると、\[ 9\leqq n\log_{10} 3 \lt 10 \]が成り立ちます。ここで、
\begin{eqnarray}
\frac{9}{0.4771} &=& 18.86\cdots \\[5pt]
\frac{10}{0.4771} &=& 20.95\cdots \\[5pt]
\end{eqnarray}であることから、\[ \frac{9}{\log_{10} 3} \leqq n \lt \frac{10}{\log_{10} 3} \]を満たす自然数 $n$ は、 $19$ と $20$ の2つであることがわかります。これらが答えです。
常用対数と不等式2
GDPとは、国内総生産のことで、その国の経済規模を示す指標です。これが毎年 8% ずつ増加するので、 $n$ 年後には、 $1.08^n$ 倍になっているということですね。これが2倍を超えるときを求めたいので\[ 1.08^n \gt 2 \]となる $n$ を求めればいいということです。
両辺の常用対数を考えれば
\begin{eqnarray}
\log_{10} 1.08^n & \gt & \log_{10} 2 \\[5pt]
n\log_{10} \frac{2^2\cdot 3^3}{100} & \gt & \log_{10} 2 \\[5pt]
n(2\cdot 0.3010+3\cdot 0.4771-2) & \gt & 0.3010 \\[5pt]
0.0333n & \gt & 0.3010 \\[5pt]
n & \gt & \frac{0.3010}{0.0333} \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。ここで、右辺を計算すると、\[ \frac{0.3010}{0.0333}=9.03\cdots \]となるので、上の不等式を満たす自然数は、10以上となります。よって、初めてGDPが2倍になるのは、10年後ということがわかります。
なお、上の最後の不等式の右辺は、 $9.03\cdots$ というように、 $9$ にすごく近い数字ですね。実際、 $1.08^9$ を計算してみると、\[ 1.08^9=1.999005\cdots \]というように、この時点ですごく2に近い値になっています。9年後では、2倍を超えてはいませんが、ほぼ2倍になっていることがわかります。
複利では、増加スピードが速いことがわかります。単利であれば(はじめの年の8%ずつしか成長しないなら)、 $n$ 年後には $1+0.08n$ 倍にしかならず、2倍になるには12.5年も必要になるからです。
おわりに
ここでは、常用対数と不等式について見てきました。桁数とからめた問題が出ることがあるので、常用対数と桁数の関係をおさえておきましょう。