【応用】解と係数の関係と二次方程式の解の符号
ここでは、二次方程式の解がともに正になる条件を求める、といった問題を見ていきます。解と係数の関係を使って解いていく方法を見ます。
例題
【標準】解と係数の関係と二次方程式の解の符号で見た内容を思い出しながら、考えていきましょう。
まず「異なる2つの正の解」という条件から、異なる2つの実数解を持つこと、つまり、判別式が正であるという条件を満たさなくてはいけません。0以上ではなく正であることに注意しましょう。
次に、それらの解が「ともに正である」という条件を考えましょう。これは、解と係数の関係を使うことを見越して、解の和と積がどうなっていればいいかを考えればいいんでしたね。上のリンク先でも考えましたが、2つの数が、和も積も正なら、もとの2つの数はともに正だとわかります。「解の和が正」「解の積が正」の2つの条件も満たさなくてはいけません。
これら3つの条件を満たす必要がありますが、逆にこれらをすべて満たせば「異なる2つの正の解を持つ」ようになります。よって、これら3つの条件をすべて満たす範囲が、求める答えです。順番に求めていきましょう。
$x^2-2mx+2-m=0$ の判別式が正という条件から
\begin{eqnarray}
(-2m)^2 -4(2-m) & \gt & 0 \\[5pt]
4m^2 +4m -8 & \gt & 0 \\[5pt]
m^2 +m -2 & \gt & 0 \\[5pt]
(m+2)(m-1) & \gt & 0 \\[5pt]
m\gt1 & , & m\lt -2 \quad \cdots (1) \\[5pt]
\end{eqnarray}が得られます。
また、解と係数の関係から、解の和が正という条件は
\begin{eqnarray}
-(-2m) & \gt & 0 \\[5pt]
m & \gt & 0 \quad \cdots (2) \\[5pt]
\end{eqnarray}という条件と同値であり、解の積が正という条件は
\begin{eqnarray}
2-m & \gt & 0 \\[5pt]
m & \lt & 2 \quad \cdots (3) \\[5pt]
\end{eqnarray}という条件と同値です。
これらの条件を数直線で考えると、次のようになります。
これらの条件の共通部分は、色のついた部分であり、\[ 1 \lt m \lt 2 \]であることがわかります。これが答えです。
他の場合ならどうなるか
上の例題で、他の条件であればどうなるかを考えてみましょう。
もし、「異なる2つの正の解を持つ」ではなく、「正の解のみを持つ」というように、重解でもOKという条件だったらどうなるでしょうか。この場合は、「判別式が正」という条件が、「判別式が0以上」という条件に変わります。そのため、上の条件の(1)が\[ m\geqq 1 ,\ m \leqq -2 \]という条件に変わるため、答えも\[ 1 \leqq m \lt 2 \]という条件に変わります。
「異なる2つの負の解を持つ」の場合であれば、「解の和が負」という条件に変わるため、(2)の不等号が反対向きになる結果、答えは\[ m \lt -2 \]となります。
「解が異符号」という条件なら、(1)(2)が不要で、(3)の不等号の向きが反対になります。よって、\[ m \gt 2 \]となります。なお、この範囲は、(1)の範囲に含まれていますが、これは、「解の積が負なら、必ず異なる2つの実数解を持つ」ことの例になっています。
グラフとの関係
実は、「二次方程式が異なる2つの正の解を持つときの条件を求める」といった問題は、二次関数の範囲でも以下のページで取り上げています。
二次関数の範囲で考えていた場合は、 $y=ax^2+bx+c$ のグラフをもとに考えていました。
x 軸と2点で交わることを、判別式が正であることと言い換えることは上の解き方と同じです。グラフで考えるとき方では、さらに放物線の軸の位置、 y 軸との交わる場所を見て考えます。これは、一見すると、上の解き方とまったく違う解き方のようにも見えます。
しかし、よく考えてると、実は本質的には同じことをしています。放物線の軸の方程式は、 $x=-\dfrac{b}{2a}$ です。これが $y$ 軸より右にあるか左にあるかを考えることは、解の和 $-\dfrac{b}{a}$ の符号を考えていることと同じです。
また、 y 軸との交点ということは、 $x=0$ を代入したときの値、つまり、 $c$ の符号を考えています。これは、解の積 $\dfrac{c}{a}$ を考えいることに対応しています。
「二次方程式が異なる2つの正の解を持つ条件」などを求める問題は、グラフの位置関係を調べる方法と、解と係数の関係を使って解の和と積の符号を調べる方法とがありますが、本質的には同じものを見ていることになります。入り口が違うだけで、ゴールは同じです。
おわりに
ここでは、解と係数の関係を使って、二次方程式が異なる2つの正の解を持つような条件を求めるといった問題を見ました。また、グラフを使って解く方法と本質的に同じであることも見ました。どちらの見方も身につけて、いろいろな角度から問題を考えられるようにしましょう。