【応用】n乗の展開と多項定理
ここでは、多項定理を用いた問題を考えていきます。
多項定理
【標準】n乗の展開と多項定理では3項の場合の多項定理を書きましたが、ここでは一般的な形での内容を書いておきます。
組合せの考えを使えば、理解できるでしょう。係数を考えるには、 n 個あるカッコの中から、各 $x_i$ を $k_i$ 個選ぶ方法の総数を考えればいいですね。すべての文字が区別できるなら $n!$ 通りですが、各 $x_i$ について、 $k_i!$ 回だけ重複して数えることになるので、これで割れば、係数が得られます。
例題
(2) $(1+x+x^2)^5$ を展開したとき、 $x^3$ の係数を求めなさい。
(3) $\left( x-\dfrac{1}{x}+1 \right)^4$ を展開したときの定数項を求めなさい。
(1)は、多項定理をそのまま使って\[ \dfrac{6!}{2!2!1!1!}=180 \]となることがわかります。
(2)も多項定理を使いますが、どう使うかが少し難しいです。というのも、 $(1+x+x^2)^5$ を展開したとき、各項は\[
\frac{5!}{p!q!r!} \cdot 1^p \cdot x^q \cdot (x^2)^r = \frac{5!}{p!q!r!} x^{q+2r} \]となります。 $x^3$ となるのは、この p, q, r がいくらなのかをまず求めなくてはいけません。
p, q, r は0以上で、和が5となる整数です。よって、 $q+2r=3$ となるとき、 r は 0 か 1 の2通りがありえます。よって、次の場合があることがわかります。\[ (p,q,r)=(2,3,0),\ (3,1,1) \]これと多項定理から、 $x^3$ の係数は次のように求められます。
\begin{eqnarray}
& &
\frac{5!}{2!3!0!} + \frac{5!}{3!1!1!} \\[5pt]
&=&
10 + 20 \\[5pt]
&=&
30
\end{eqnarray}これが答えです。なお、 $0!=1$ です(参考:【標準】順列#順列の総数と階乗の関係)。
このことからもわかる通り、文字が1種類しかない場合は、どういう選び方をするのかを考えなくてはいけません。
(3)も、同じ点に注意が必要です。 $\left( x-\dfrac{1}{x}+1 \right)^4$ を展開したときの各項は
\begin{eqnarray}
& &
\frac{4!}{p!q!r!} \cdot x^p \cdot \frac{(-1)^q}{x^q} \cdot 1^r \\[5pt]
&=&
(-1)^q \frac{4!}{p!q!r!} \frac{x^p}{x^q}
\end{eqnarray}となります。
今考えるのは定数項なので、 $p=q$ のときです。 p, q, r は0以上の整数で、和が4なので、\[ (p,q,r)=(0,0,4),\ (1,1,2),\ (2,2,0) \]の3通りがありえます。これと多項定理から、定数項は次のように求められます。
\begin{eqnarray}
& &
(-1)^0\cdot\frac{4!}{0!0!4!} +(-1)^1\cdot\frac{4!}{1!1!2!} +(-1)^2\cdot\frac{4!}{2!2!0!} \\[5pt]
&=&
1 -12 +6 \\[5pt]
&=&
-5
\end{eqnarray}
また、(3)は
\begin{eqnarray}
\left( x-\dfrac{1}{x}+1 \right)^4 = \frac{(x^2-1+x)^4}{x^4}
\end{eqnarray}と考えて、分子の $x^4$ の係数を求める、と考えてもいいですね。
おわりに
ここでは多項定理と、それを用いた問題を考えました。同じ文字が含まれる場合は、一筋縄ではいかないものもあるので注意しましょう。