【基本】補角の三角比
三角比を考える場合、角度が大きくなってくると、直接その角度を扱うのではなく、角度を小さくして考えたほうがいい場合があります。ここでは、角度を小さくするテクニックとして、補角の三角比、つまり、 $180^{\circ}-\theta$ の三角比について見ていきます。
補角
【基本】余角の三角比の記事で、 $90^{\circ}-\theta$ の三角比について見ました。これを使えば、45度より大きい角の三角比を45度より小さい角の三角比で考えることができるようになります。これと似た話で、 $180^{\circ}-\theta$ の三角比を考えていきます。
なお、 $\theta$ に対して、 $180^{\circ}-\theta$ のことを補角(supplementary angle) と呼びます。
補角の三角比
さて、半径 $1$ の円を考え、 $\mathrm{ A }(1,0)$ とし、 $\angle \mathrm{ POA }=\theta$, $\angle \mathrm{ QOA }=180^{\circ}-\theta$ とします。このとき、 P と Q は y 軸について左右対称になります。
上の図は $\theta$ が鋭角のときですが、鈍角のときも y 軸について左右対称になることがわかります。
$\sin$ は y 座標を、 $\cos$ は x 座標を表していたので、図から次の式が成り立つことが分かります。\[ \sin (180^{\circ}-\theta) = \sin\theta,\ \cos (180^{\circ}-\theta) = -\cos\theta \]
また、 $\tan\theta=\frac{y}{x}$ なので、\[ \tan(180^{\circ}-\theta ) = \frac{y}{-x} =-\tan\theta \]となることがわかります。
まとめると、次のようになります。
- $\sin(180^{\circ}-\theta) = \sin\theta$
- $\cos(180^{\circ}-\theta) = -\cos\theta$
- $\tan(180^{\circ}-\theta) = -\tan\theta$
具体的な角度で成り立っていることを、【基本】よく出る0度から180度までの三角比の値を見て、確認してみましょう。
例題
余角・補角の三角比を用いて、次の問題を考えてみます。
(2) 次の値を求めなさい。 $\sin 20^{\circ} \cos 70^{\circ} -\sin 110^{\circ} \cos 160^{\circ}$
(1)は、まず補角の公式から\[ \sin 110^{\circ} = \sin (180^{\circ}-70^{\circ}) = \sin 70^{\circ} \]が得られます。さらに、余角の公式から、\[ \sin 70^{\circ} = \sin (90^{\circ}-20^{\circ}) = \cos 20^{\circ} \]となります。これが答えです。
この手法を用いれば、90度以上の角は、補角の公式を使って90度以下に変換できることがわかります。さらに、その角が45度以上であれば、余角の公式を使って45度以下に変換できることもわかります。
これを踏まえて、次の(2)です。角度がバラバラなので、同じにできないか考えてみましょう。小さい角度に変換できないかを考えていきます。
余角の公式から\[ \cos 70^{\circ} = \cos (90^{\circ}-20^{\circ}) = \sin 20^{\circ} \]であり、補角の公式から\[ \cos 160^{\circ} = \cos (180^{\circ}-20^{\circ}) = -\cos 20^{\circ} \]なので、元の式は次のように変形できます。
\begin{eqnarray}
& &
\sin 20^{\circ} \cos 70^{\circ} -\sin 110^{\circ} \cos 160^{\circ} \\
&=&
\sin 20^{\circ} \sin 20^{\circ} -\cos 20^{\circ} \times (-\cos 20^{\circ}) \\
&=&
\sin^2 20^{\circ} +\cos^2 20^{\circ} \\
&=&
1 \\
\end{eqnarray}これが答えです。一番最後は、三角比の相互関係を用いました。これもよく出てくるので、不安な人は【基本】三角比の相互関係を見ておきましょう。
おわりに
ここでは、補角の三角比を見ました。考える角度を小さくするためのテクニックとして使えます。また、「三角形の内角の和が180度であること」や「円に内接する四角形において、向かい合う内角の和が180度であること」などとからめて使うこともあります。今後、問題を解いていくうえで慣れていくようにしましょう。