【基本】和の公式(2乗の和)
ここでは、 $1^2$ から $n^2$ までの2乗の和の公式について見ていきます。
2乗の和の公式
【基本】和の公式(1からnまでの和)で見た通り、 $1$ から $n$ までの和は、次のように表すことができます。\[ 1+2+3+\cdots+n=\frac{1}{2}n(n+1) \]これは、初項が $1$ で公差が $1$ の等差数列の和、と見ることもできます。なので、【基本】等差数列の和を使ってこの式を導くこともできます。
さて、では、2乗の和はどうなるでしょうか。\[ 1^2+2^2+3^2+\cdots+n^2 \]これは、 $1,4,9,\cdots$ と増えていきます。差は一定ではないので、等差数列ではありません。また、比が一定でもないので、等比数列でもありません。そのため、今まで考えてきた発想では、和を求めることはできません。
2乗の和の公式を導くためには、かなり特殊なテクニックを使います。普通に考えても思いつかないテクニックなので、まずは見てみましょう。
いきなり不思議な式を出してきますが、 $(k+1)^3-k^3$ を考えてみましょう。2乗の和ですが、一度、3乗について考えます。展開して計算すると、\[ (k+1)^3-k^3 = 3k^2+3k+1 \]となります。
さて、ここで、 $k=1,2,3,\cdots$ と代入していきましょう。すると、次のようになります。
\begin{eqnarray}
2^3-1^3 &=& 3\cdot 1^2 & +3\cdot 1 & +1 \\[5pt]
3^3-2^3 &=& 3\cdot 2^2 & +3\cdot 2 & +1 \\[5pt]
4^3-3^3 &=& 3\cdot 3^2 & +3\cdot 3 & +1 \\[5pt]
\end{eqnarray}こうすると何がいいかと言うと、左辺を辺々足すと、途中でたくさん相殺されるんですね。最終的に、最後の式の1項目と最初の式の $-1^3$ が残ります。なので、左辺の結果がわかりやすい式で求められます。
また、右辺は、縦に足してみましょう。1項目を縦に足すと、2乗の和が出てきます。求めたかった式が出てくるわけです。2項目を縦に足すと、これは1乗の和、自然数の和が出てきます。これは冒頭で見た通り、すでに公式があります。3項目は、 $1$ を何度も足すだけなので、これも値がわかります。
つまり、辺々足したときに、左辺の結果はわかる、右辺の2項目、3項目の和は計算できる、ということから、右辺の1項目の和が求められる、という流れになるわけです。
上の式を、 $k=n$ の場合まで足すことにしましょう。 $k=n$ のときは、次のようになります。\[ (n+1)^3-n^3 = 3\cdot n^2 +3\cdot n +1 \]この n 個の式を辺々足すと、左辺は $(n+1)^3-1^3$ だけが残ります。右辺の2項目の部分は\[ 3\cdot\frac{1}{2}n(n+1) \]となり、3項目の部分は $n$ となります。
以上から、 $S=1^2+2^2+3^2+\cdots+n^2$ とおくと、次のように求めることができます。
\begin{eqnarray}
(n+1)^3-1 &=& 3S+\frac{3}{2}n(n+1)+n \\[5pt]
3S &=& (n+1)^3-1-\frac{3}{2}n(n+1)-n \\[5pt]
&=& n^3+3n^2+3n -\frac{3}{2}(n^2+n) -n \\[5pt]
&=& n^3 +\frac{3}{2}n^2 +\frac{1}{2}n \\[5pt]
&=& \frac{n(2n^2+3n+1)}{2} \\[5pt]
&=& \frac{n(2n+1)(n+1)}{2} \\[5pt]
S &=& \frac{n(n+1)(2n+1)}{6} \\[5pt]
\end{eqnarray}
少し複雑な式ですが、数列の分野ではこの公式もよく使います。
例えば、 $1^2+2^2+3^2$ なら\[ \frac{3\cdot 4\cdot 7}{6}=14 \]であり、直接計算した答えと合うことがわかります。 $100^2$ までの和なら、直接計算するのは大変ですが、上の公式を使えば\[ \frac{100\cdot 101 \cdot 201}{6}=338350 \]と求めることができます。
おわりに
ここでは、自然数の2乗の和を計算しました。 $(k+1)^3-k^3$ を展開し、順番に足していくことで、和が求められます。この算出方法は絶対覚えてないといけないというものではありませんが、記憶の片隅には置いていてほしいと思います。2乗の和の公式は、覚えておく必要があります。
なお、3乗の和も、同じテクニックで導くことができます。その方法は、【基本】和の公式(3乗の和)で見ることにしましょう。