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【基本】恒等式の証明

ここでは、恒等式の証明問題を見ていきます。

📘 目次

恒等式の証明問題

例題1
次の式が成り立つことを証明しなさい。
\[ (a^2+b^2)(x^2+y^2) = (ax+by)^2 +(ay-bx)^2 \]

文字の値は何でもいいので、与えられている式は恒等式です。どんな値を入れても成り立つことを示すのがゴールです。

ただ、実際に値を入れていっても、キリがありません。値を代入するのではなく、両辺を変形していって、同じものになることを示す方針で考えていきます。

また、因数分解をするのは一般的に難しいので、どんどん展開をしていく方針で考えていくほうがいいでしょう。

これらを踏まえ、両辺を変形していきましょう。

まず、左辺を展開すると、次のようになります。
\begin{eqnarray} & & (a^2+b^2)(x^2+y^2) \\[5pt] &=& a^2x^2 +a^2y^2 +b^2x^2 +b^2y^2 \\[5pt] \end{eqnarray}

また、右辺は次のようになります。
\begin{eqnarray} & & (ax+by)^2 +(ay-bx)^2 \\[5pt] &=& a^2x^2 +2abxy +b^2y^2 +a^2y^2 -2abxy +b^2x^2 \\[5pt] &=& a^2x^2 +a^2y^2 +b^2x^2 +b^2y^2 \\[5pt] \end{eqnarray}

展開した後同士を比べると、まったく同じ式になっています。このことから、与えられた等式が成り立つことがわかります。これで証明おしまいです。

恒等式の証明問題の解き方

「次の等式を証明しなさい」という問題に対しては、次の3つの方針が考えられます。

  1. 片方を変形して、もう片方と同じ式にする
  2. 両辺をそれぞれ変形して、同じ式にする
  3. 「(左辺)-(右辺)」を計算して、0にする
1つ目は、片方が簡単な式であれば使えますが、汎用性はあまり高くありません。基本は、2つ目か3つ目を使います。2つ目と3つ目はほぼ同じことをしていますが、3つ目のように「(左辺)-(右辺)」を計算すると、途中でいくつかの項が打ち消し合う結果、2つ目の解き方よりもスッキリすることがあります。そのため、3つ目がよく使われます。

また、先ほどの例題でも書きましたが、基本的にどんどん展開していく方針で変形していきます。バラバラにして、同じ部品をどんどん対応させていき、両辺の違う部分を減らしていく、という発想で考えるといいでしょう。

これらを踏まえて、もう一問考えてみます。

例題2
次の式が成り立つことを証明しなさい。
\[ (m^2-n^2)^2 +(2mn)^2 = (m^2+n^2)^2 \]

ここでは、3つ目の方針、「(左辺)-(右辺)=0」を示す方針で考えていきましょう。

左辺から右辺を引くと
\begin{eqnarray} & & (m^2-n^2)^2 +(2mn)^2 -(m^2+n^2)^2 \\[5pt] &=& m^4 -2m^2n^2 +n^4 +4m^2n^2 -(m^4+2m^2n^2+n^4) \\[5pt] &=& 0 \end{eqnarray}となります。よって、「(左辺)-(右辺)=0」だから与えられた等式が成り立つことが示せました。

ちなみに、この等式にはおもしろい性質があります。例えば、 $m=2,n=1$ を代入すると、次のようになります。\[ 3^2+4^2=5^2 \]これは、三平方の定理でよく出てくる数字の組合せですね。上の等式が成り立つことから、 $m,n$ にいろんな数を入れていけば、直角三角形の辺の長さの組をいくらでも作ることができます。他にも、 $m=3,n=2$ とすれば\[ 5^2+12^2=13^2 \]となります。この等式があれば、\[ a^2+b^2=c^2 \]を満たす大きな自然数の組合せを作ることもできるし、こうした組合せが無限個存在することもわかります。

おわりに

ここでは、恒等式の証明問題を考えました。基本的には、左辺から右辺を引いて、それが0になるように式変形をしていく方針で解くことができます。途中でいろんな公式を組み合わせないと解けないような難しい問題もありえますが、出発点はどの問題も共通です。

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