【基本】反復試行の確率
ここでは、反復試行の確率について見ていきます。
反復試行の確率その1
シンプル過ぎて、反復試行の問題という感じがあまりしませんが、まずは簡単な例ということで、この例題を考えてみましょう。
表が1回出るということは、1回目が表で2回目が裏か、反対に1回目が裏で2回目が表と出るか、2パターンしかありません。これらは同時には起こりませんね。
表が出る確率も裏が出る確率も $\dfrac{1}{2}$ なので、表が1回出る確率は、\[ \frac{1}{2}\times \frac{1}{2} + \frac{1}{2} \times \frac{1}{2}=\frac{1}{2} \]となります。
和の法則、独立試行の確率といった考えを使っていますが、そうしたことを知らなくても解けるレベルです。
反復試行の確率その2
先ほどと同様に考えるなら、1回目が表でそれ以外が裏の場合、2回目が表でそれ以外が裏の場合、…、と場合分けをして、最後に足すという発想になります。しかし、それは面倒です。
そこで、こう考えてみましょう。10回のうち、表が出る1回はいつなのか、と。
こうすると、「10回のうち、表が出る1回を選ぶ」と考えられます。その場合の数は ${}_{10} \mathrm{ C }_1=10$ 通りです。いつ表が出るかが決まれば、そのときに表が出る確率と、他の9回で裏が出る確率をかければいいですね。以上から、求める確率は、\[ {}_{10} \mathrm{ C }_1 \times \frac{1}{2} \times \left(\frac{1}{2}\right)^9 = \frac{5}{512} \]となります。
例題1も、「2回のうち、表が出る1回を選ぶ」と考えると、\[ {}_{2} \mathrm{ C }_1 \times \frac{1}{2} \times \frac{1}{2} = \frac{1}{2} \]と求められます。
はじめの $\dfrac{1}{2}$ と2つ目の $\dfrac{1}{2}$ は、意味が違います。1つ目は、表が出る確率を表して、2つ目は裏が出る確率を表しています。同じ値なのでわかりづらいですね。もう少しわかりやすい例を、次の問題で見てみましょう。
反復試行の確率その3
3の倍数だったときを〇、3の倍数でなかったときを×とすると、「〇〇×××」や「×〇×〇×」や「××〇×〇」など、いろんな出方が該当します。
「〇〇×××」となる確率を考えましょう。1回目は3の倍数だから $\dfrac{2}{6}=\dfrac{1}{3}$ です。2回目も同じです。3回目は3の倍数以外なので、 $\dfrac{2}{3}$ です。4回目も5回目もそれぞれ $\dfrac{2}{3}$ です。なので、「〇〇×××」となる確率は、\[ \frac{1}{3}\times \frac{1}{3}\times \frac{2}{3}\times \frac{2}{3}\times \frac{2}{3} = \left(\frac{1}{3}\right)^2 \times \left(\frac{2}{3}\right)^3 \]となります。
また、「×〇×〇×」となる確率も同様に考えると、\[ \frac{2}{3}\times \frac{1}{3}\times \frac{2}{3}\times \frac{1}{3}\times \frac{2}{3} = \left(\frac{1}{3}\right)^2 \times \left(\frac{2}{3}\right)^3 \]となります。先ほどと同じですね。
同じように考えれば、「〇〇×××」という出方になる確率も、「×〇×〇×」となる確率も、「××〇×〇」となる確率も、同じです。
このことから、目の出方のパターン数に、そのパターンが起こる確率を掛ければ、確率が求められることがわかります。目の出方は、「5回ふるうち、3の倍数が出る2回を選ぶ」と考えることができるので、確率は\[ {}_5 \mathrm{ C }_2 \times \left(\frac{1}{3}\right)^2 \times \left(\frac{2}{3}\right)^3 = \frac{80}{243} \]となります。
一般的な反復試行の確率
例題3をもとに、より一般的な状況を考えることができます。
さいころをふるなどといった試行で、A が起こる確率が p のとき、 この試行を n 回行って、事象 A が r 回起こる確率を考えてみます。
まず、 n 回のうち、どの r 回で A が起こるか、という選び方が ${}_n \mathrm{ C }_r$ 通りあります。このそれぞれの場合が起こる確率は、「A が r 回起きて、それ以外は A 以外が $n-r$ 回起こる確率」(何回目に A が起こるかは決まっている)であり、どれも同じです。そのため、両者を掛け合わせれば、求める確率になります。
まとめると、反復試行の確率について、次のことが言えます。
抽象的でわかりづらいかもしれませんが、例題3でやった内容を、文字を使って表しているだけです。例題3の求め方が分かれば、問題ありません。
おわりに
ここでは、反復試行の確率について見てきました。 r 回起こる確率は、 n 回の中から、それが起こる r 回を選ぶ、というところがポイントでしたね。この部分をよく理解しておきましょう。