【基本】増減表
ここでは、微分を用いて、増減表を書く方法、そして、グラフの概形をかく方法を見ていきます。なお、ここで出てくる関数は、整式で表されるものを想定しています。
微分と関数の増減に関する復習
【基本】微分と関数の増減でも見た内容ですが、微分と関数の増減について、少し振り返っておきましょう。
ある点での関数の動きは、その点での接線の動きとほぼ同じになるのでした。それは接線の成り立ちを考えればわかります。2点を結んだ直線について、2点間の距離を縮めていったときに近づく直線が接線なので、逆にいえば、接点の近くでは関数と接線の動きはほぼ同じになるんでしたね。
また、接線の傾きは、その点での微分係数となるのでした。そこで、もし、ある区間で微分係数が正であれば、その区間での各点での接線の傾きが正であることから、もとの関数もどんどん値が増えていくことがわかります。このような「 x が増えるたびに関数の値が増えていく」ことを「単調に増加する」というのでしたね。
逆に、ある区間で微分係数がずっと負であれば、もとの関数は単調に減少することもわかります。
これらをまとめると、次のようになるのでした。
ある区間で、つねに $f'(x)\lt 0$ ならば、 $f(x)$ はその区間で単調に減少する。
これを使えば、導関数の符号を考えることで、どこからどこまで単調に増加し、どこからどこまで単調に減少するかがわかります。そのため、グラフの概形がかけるんですね。
実際に、かき方を見ていきましょう。
増減表
【導入】微分を考える意味についてで出てきた、 $y=2x^3-x$ という関数のグラフについて考えてみましょう。
まずは、先ほども見たように、導関数の符号を考えることが重要なのでしたね。導関数は、次のように計算できます。
\begin{eqnarray}
y'
&=&
6x^2-1
\end{eqnarray}よって、この「導関数のグラフ」は次のようになります。元の関数ではなくて、導関数のグラフ、であることに注意しましょう。
これは二次関数のグラフなのですぐにかけます。また、 x 軸との交点も、 $\left(\pm\dfrac{\sqrt{6} }{6},0\right)$ であることがわかります。
このグラフを見れば、 $x\lt -\dfrac{\sqrt{6} }{6}$ のときと、 $x\gt \dfrac{\sqrt{6} }{6}$ のときに、導関数が正になることがわかります。また、 $-\dfrac{\sqrt{6} }{6} \lt x \lt \dfrac{\sqrt{6} }{6}$ のときには、導関数が負になることがわかります。
このことと先ほど見た「微分と関数の増減」を見比べると、どの範囲で関数が増加して、どの範囲で減少するかがわかりますね。この対応は、次のような表にするとわかりやすいです。
\begin{array}{c|ccccc}
x & \cdots & -\frac{\sqrt{6} }{6} & \cdots & \frac{\sqrt{6} }{6} & \cdots \\
\hline
f’(x) & + & 0 & – & 0 & + \\
\hline
f(x) & \nearrow & \frac{\sqrt{6} }{9} & \searrow & -\frac{\sqrt{6} }{9} & \nearrow
\end{array}この表は、増減表(first derivative test table) といいます。
この表は、次の順に埋まっていきます。まず、 $f'(x)$ のグラフから、どこで $f'(x)$ の符号が変わるか、符号はどうなるか、が決まります。つまり、1行目と2行目です。符号が分かれば、その区間での $f(x)$ の動きがわかるので、導関数がプラスなら関数は単調に増加するので「 $\nearrow$ 」を、マイナスなら単調に減少するので「 $\searrow$ 」をかきます。切り替わるときの関数の値は、計算するしかないので、最後に計算しておしまいです。
この増減表が作れれば、グラフの概形が分かったも同然です。途中に山と谷があることもわかります。グラフは次のようになります。
$(-1,-1)$, $(0,0)$, $(1,1)$ の3点をつなぐ、という発想では、山や谷があることがわかりませんでしたが、微分を使えばわかるようになります。また、具体的な場所もわかるようになります。
おわりに
ここでは、微分を使って増減表を書き、グラフの概形をかく方法を見てきました。導関数の符号を調べることで、グラフの増減がわかり、山や谷の場所が正確にわかるのでしたね。このことを用いれば、いろんな関数のグラフがかけるようになります。