【基本】独立な確率変数の積の期待値
ここでは、独立な確率変数の積の期待値に関する性質を見ていきます。
独立な確率変数の積の期待値
【基本】確率変数の独立の冒頭で、 $E(XY)$ が $E(X)E(Y)$ と等しくならない例を見ました。実は、この2つは、一般的には同じになるとは限りません。しかし、独立であれば同じになります。このことを簡単なケースで示してみましょう。
2つの確率変数 $X,Y$ があって、互いに独立とします。また、値は、 $x_1,x_2$ と $y_1,y_2$ の2種類ずつしかとらないとし、それぞれの値をとる確率を $p,q,r,s$ としましょう。
$X,Y$ は独立なので、例えば、 $P(X=x_1, Y=y_1)$ は $P(X=x_1) P(Y=y_1)=pr$ と一致します。なので、同時分布は次のようになります。
$X$
$Y$
|
$y_1$ | $y_2$ | 計 |
$x_1$ | $pr$ | $ps$ | $p$ |
$x_2$ | $qr$ | $qs$ | $q$ |
計 | $r$ | $s$ | $1$ |
これを踏まえると、 $E(XY)$ は次のようになります。
\begin{eqnarray}
E(XY)
&=&
(x_1y_1)pr+(x_1y_2)ps+(x_2y_1)qr+(x_2y_2)qs \\[5pt]
&=&
x_1p(y_1r+y_2s)+x_2q(y_1r+y_2s) \\[5pt]
&=&
(x_1p+x_2q)(y_1r+y_2s) \\[5pt]
\end{eqnarray}最後の式は、 $E(X) E(Y)$ そのままですね。
とり得る値がさらに多い場合も同様に示すことができます(教科書では省略されていることが多いです)。
一般に、次のことが成り立ちます。
この「確率変数が独立である」という条件はとても大事です。これがない場合は、 $E(XY)=E(X)E(Y)$ が成り立つとは限りません。
3つ以上の場合
確率変数が3つ以上の場合も同様に成り立ちます。
つまり、確率変数 $X_1,X_2,\cdots,X_n$ が互いに独立なとき\[ E(X_1X_2\cdots X_n)=E(X_1)E(X_2)\cdots E(X_n) \]となります。
これをもとにして、【応用】確率変数の期待値の問題を別の方法で解いてみます。
$k$ 回目に出た表の枚数を $X_k$ とすると、 $X$ は $X_k$ たちを掛けたものになります。また、 $X_k$ たちは独立なので、 $E(X)$ は $E(X_1)$ の $n$ 乗になります。
\begin{eqnarray}
E(X_1)=0\cdot \frac{1}{4}+1\cdot \frac{1}{2}+2\cdot \frac{1}{4}=1
\end{eqnarray}なので、 $E(X)=1^n=1$ と求められます。だいぶ楽に求められますね。
おわりに
ここでは、確率変数が独立の場合に、積の期待値が期待値の積になることを見ました。「独立」という条件は大事です。これがない場合は、成り立つとは限らないので注意しましょう。