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【基本】確率変数の和の期待値

ここでは、確率変数の和の期待値について見ていきます。

📘 目次

確率変数の和の期待値

2つの確率変数 $X,Y$ があったときに、 $Z=X+Y$ とすると、 $Z$ も確率変数となります。この $Z$ の期待値 $E(Z)$ について考えてみます。

【基本】同時分布で見た例を使います。あたりが2本入った10本のくじから、Aさんが1本、Bさんが2本くじを引きます。このとき、引いたあたりくじの数を、それぞれ、 $X,Y$ とおきます。

このとき、 $X,Y$ の同時分布は次のようになります(詳しくは上のリンク先)。

$X$
$Y$
$0$ $1$ $2$
$0$ $\dfrac{7}{15}$ $\dfrac{14}{45}$ $\dfrac{1}{45}$ $\dfrac{4}{5}$
$1$ $\dfrac{7}{45}$ $\dfrac{2}{45}$ $0$ $\dfrac{1}{5}$
$\dfrac{28}{45}$ $\dfrac{16}{45}$ $\dfrac{1}{45}$ $1$

このことから、 $E(Z)$ を具体的に計算すると、次のようになります。
\begin{eqnarray} & & E(Z) \\[5pt] &=& 0\cdot\frac{7}{15}+1\cdot\left(\frac{14}{45}+\frac{7}{45}\right)+2\cdot\left(\frac{1}{45}+\frac{2}{45}\right) \\[5pt] &=& \frac{21+6}{45}=\frac{3}{5} \\[5pt] \end{eqnarray}少し計算が大変ですね。

ちなみに、 $E(X),E(Y)$ は次のようになります。
\begin{eqnarray} E(X) &=&\frac{1}{5} \\[5pt] E(Y) &=& \frac{16+2}{45}=\frac{2}{5} \\[5pt] \end{eqnarray}先ほどの計算結果と見比べると、 $E(X)+E(Y)$ が $E(Z)$ と一致していますね。これはたまたまでしょうか?

確率変数の和の期待値の性質

先ほどの例では、 $E(X)+E(Y)$ が $E(Z)$ と一致していました。実は、これは他の確率変数の場合でも成り立ちます。以下では、簡単なケースでこれを示してみます。

確率変数 $X,Y$ の同時分布が次のようになっていたとします。それぞれ、2つの値だけをとる状況を考えます。

$X$
$Y$
$y_1$ $y_2$
$x_1$ $p$ $q$
$x_2$ $r$ $s$

このとき、 $E(X),E(Y)$ はそれぞれ、次のようになります。
\begin{eqnarray} E(X) &=& x_1(p+q) + x_2(r+s) \\[5pt] E(Y) &=& y_1(p+r) + y_2(q+s) \\[5pt] \end{eqnarray}一方、 $E(Z)$ は次のようになります。 \begin{eqnarray} E(Z) &=& (x_1+y_1)p+(x_1+y_2)q\\ & & +(x_2+y_1)r+(x_2+y_2)s \end{eqnarray}$E(X)+E(Y)$ を計算し、 $p,q,r,s$ の係数をそれぞれ考えると、 $E(Z)$ に等しいことがわかります。

とりうる値がもっと多い場合も、同様に示すことができます(ほとんどの教科書では省略していると思いますが)。

一般に、確率変数の和の期待値について、次の性質が成り立ちます。

確率変数の和の期待値の性質
2つの確率変数 $X,Y$ について、次が成り立つ。\[ E(X+Y)=E(X)+E(Y) \]

3つ以上の確率変数の和

確率変数が3つ以上の場合も同様です。確率変数 $X,Y,Z$ があった場合、 $E(X+Y+Z)$ を考えます。 $X+Y$ と $Z$ に分ければ、これは $E(X+Y)+E(Z)$ に等しいということで、もう一度分ければ、 $E(X)+E(Y)+E(Z)$ となります。

一般に、確率変数 $X_1,X_2,\cdots,X_n$ に対して、次が成り立ちます。\[ E\left(\sum_{k=1}^n X_k\right)=\sum_{k=1}^n E (X_k) \]

この性質を使えば、例えば、【基本】確率変数の期待値で見た問題もかなり簡単に解けます。コインを6枚投げて、表が出た枚数だけ100円硬貨がもらえるとき、もらえる金額 $X$ の期待値を求める問題をもう一度考えてみます。

6枚のコインを、コイン1からコイン6と名付けて、コイン $k$ が表になるときに $X_k=1$ で、裏なら $X_k=0$ となる確率変数を考えると、\[ X=100X_1+100X_2+100X_3+100X_4+100X_5+100X_6 \]と表せます。 $X_k$ たちは分布が同じなので、期待値も同じだから、
\begin{eqnarray} E(X) &=& 6E(100X_1) &=& 600E(X_1) &=& 600\cdot\frac{1}{2}=300 \end{eqnarray}となります。だいぶ楽に求められますね。

おわりに

ここでは、複数の確率変数の和の期待値について見てきました。和の平均は、平均の和になること、また、これを利用すると計算が楽になる場面があることを見ました。

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