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【応用】確率変数の期待値

ここでは、確率変数の期待値に関する問題を見ていきます。

📘 目次

例題1

例題1
2枚のコインを投げて表が出た枚数をメモする。これを $n$ 回繰り返したとき、メモした $n$ 個の数の積を $X$ とする。 $X$ の期待値を求めなさい。

表の枚数は、$0,1,2$ の3通りの可能性があり、起こる確率は、それぞれ、 $\dfrac{1}{4}, \dfrac{1}{2}, \dfrac{1}{4}$ です。

$X$ は、各回で表が出た枚数を掛けたものです。 $0,1,2$ たちを掛けていくのですが、最終的に期待値を計算したいので、 $X=0$ となる確率は計算結果に影響しません。各回の表の枚数が $1$ か $2$ の場合だけ考えればいいです。

$X=2^k$ となる確率を考えましょう($k$ は $0\leqq k\leqq n$ を満たす整数)。 $n$ 回の中で、表が2枚出るのが $k$ 回で、残りの $n-k$ 回は表が1枚のケースなので
\begin{eqnarray} P(X=2^k) &=& {}_n\mathrm{C}_k \left(\dfrac{1}{4}\right)^k \left(\dfrac{1}{2}\right)^{n-k} \\[5pt] &=& {}_n\mathrm{C}_k \left(\dfrac{1}{2}\right)^{2k} \left(\dfrac{1}{2}\right)^{n-k} \\[5pt] &=& \dfrac{ {}_n\mathrm{C}_k}{2^{n+k}} \\[5pt] \end{eqnarray}となります。

このことから、期待値は
\begin{eqnarray} E(X) &=& 0\cdot P(X=0)+\sum_{k=0}^n 2^k \cdot P(X=2^k) \\[5pt] &=& \sum_{k=0}^n 2^k \cdot \dfrac{ {}_n\mathrm{C}_k}{2^{n+k}} \\[5pt] &=& \frac{1}{2^n} \sum_{k=0}^n {}_n\mathrm{C}_k \\[5pt] \end{eqnarray}となります。最後の $\sum$ のところは覚えていないと難しいですが、二項定理を使います(参考:【標準】二項定理と式の証明)。これを使うと \begin{eqnarray} E(X) &=& \frac{1}{2^n} \cdot(1+1)^n=1 \\[5pt] \end{eqnarray}と求めることができます。

例題2

例題2
1枚のコインを $n$ 回投げる。表が出た回数 $k$ に応じて、 $2^k$ 円が得られるとする。得られる金額の期待値を求めなさい。

得られる金額を $X$ 円としましょう。

$X=2^k$ となる確率は、$n$ 回コインを投げて表が $k$ 回出る確率なので、\[ P(X=2^k)={}_n\mathrm{C}_k\cdot\frac{1}{2^n} \]となります。

なので、期待値は
\begin{eqnarray} E(X) &=& \sum_{k=0}^n 2^k \cdot P(X=2^k) \\[5pt] &=& \sum_{k=0}^n 2^k \cdot {}_n\mathrm{C}_k\cdot\frac{1}{2^n} \\[5pt] &=& \frac{1}{2^n} \sum_{k=0}^n 2^k \cdot {}_n\mathrm{C}_k \\[5pt] \end{eqnarray}となります。最後の $\sum$ のところは、先ほどと同様に、二項定理を使います。すると、 \begin{eqnarray} E(X) &=& \frac{1}{2^n} \cdot(1+2)^n=\frac{3^n}{2^n} \\[5pt] \end{eqnarray}と求めることができます。なので、得られる金額の期待値は $\dfrac{3^n}{2^n}$ 円と求められます。

おわりに

ここでは、期待値を求める問題を見てきました。最初は確率の問題でしたが、途中から二項定理を使った計算問題になりました。他にも、数列の和の計算が必要になる問題もあり、他の分野と融合した問題が出題されることがあります。

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