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【基本】近似式

ここでは、微分を用いて、関数の値の近似式について見ていきます。

📘 目次

近似式

平均値の定理は、次のような内容でした(参考:【基本】平均値の定理)。

$f(x)$ は、$a\leqq x\leqq b$ で連続で、 $a\lt x \lt b$ で微分可能であるとします。このとき、 $a\lt c \lt b$ で次を満たす $c$ が存在します。\[ \frac{f(b)-f(a)}{b-a}=f'(c) \]左辺は平均変化率です。平均値の定理が言っていることは、この区間の中で、この平均変化率と微分係数とが等しくなるような場所がある、ということです。

この式を変形すると、次のように書くことができます。\[ f(b)=f(a)+f'(c)(b-a) \]こう書くと、この式は「$f(b)$ の値を知りたいときに、右辺を使って計算すればいい」ととらえることができます。ネックになるのは $f'(c)$ ですが、微分の定義より、\[ \lim_{b\to a}\frac{f(b)-f(a)}{b-a}=f'(a) \]なので、 $b$ と $a$ がすごく近いなら、 $f'(c)$ は $f'(a)$ にすごく近い値になっています。このことを利用して、$f(b)$ のだいたいの値を得ることができます。

例えば、 $f(x)=\sqrt{x}$ として、 $a=100$, $b=101$ のときを考えてみましょう。代入すると
\begin{eqnarray} \sqrt{101} &=& \sqrt{100}+f'(c)(101-100) \\[5pt] &=& 10+f'(c) \end{eqnarray} となります。 $f'(c)$ がわからないし、そもそも $c$ もわからないので、もちろん $\sqrt{101}$ もわからないのですが、もしもざっくりとした値でいいなら、先ほどの話から、$c=a$ とすればいいんですね。\[ f'(x)=\frac{1}{2\sqrt{x}} \]なので、 $f'(a)=\dfrac{1}{20}$ です。こうして、\[ \sqrt{101} \fallingdotseq 10+\frac{1}{20}=10.05 \]となります。 $\fallingdotseq$ は値が近いことを表す記号で、ニアリーイコールと読みます。

実際の値は、$\sqrt{101}=10.0498\cdots$ なので、ピッタリの値ではないですが、たしかにかなり近い値になっていますね。

$b=a+h$ として書き直すと、$h$ が $0$ に近いときは\[ f(a+h) \fallingdotseq f(a)+f'(a)h \]となります。特に、 $a=0$ のときは\[ f(h) \fallingdotseq f(0)+f'(0)h \]となります。

関数の値の近似式
$f(x)$ を微分可能な関数とする。
$h$ が $0$ に近いとき、 $f(a+h) \fallingdotseq f(a)+f'(a)h$ が成り立つ。
特に、 $f(h) \fallingdotseq f(0)+f'(0)h$ が成り立つ。

数学の世界では、近い値を求めても意味がないこともありますが、応用分野、例えば、物理の分野では、近い値がわかれば十分、ということもあります。そのような場合には、微分を用いて、近い値で代用することがあります。

なお、右辺 $f(a)+f'(a)h$ は $h$ についての一次式なので、このような近似を、一次近似ということがあります。

$y=f(a)+f'(a)x$ とすると、これは $y=f(x)$ の $(a,f(a))$ での接線です。なので、グラフで考えれば、もとの関数を接線で近似していることに対応しています。

近似式と極限

近似式を使って、極限の答えの予想に使う方法を見ていきます。

【標準】三角関数などの微分と極限値では、次のような極限の値を求める問題を考えました。\[ \lim_{x\to 0}\frac{e^{3x}-1}{x} \]これを、近似式を使って考えてみます。

$f(x)=e^{3x}$ とすると、 $f'(x)=3e^{3x}$ です。なので、 $x$ が $0$ の近くでは、
\begin{eqnarray} e^{3x} &=& f(x) \\[5pt] &\fallingdotseq& f(0)+f'(0)x \\[5pt] &=& 1+3x \\[5pt] \end{eqnarray}なので、\[ \lim_{x\to 0}\frac{e^{3x}-1}{x}=3 \]と予想できます。

この方法は、近似式を使った変形を行っており、厳密性を欠いているため、解答では使わない方がいいでしょう。答えの予想には使えますが、実際の解答では、同値変形を使った式変形を用いたほうがいいでしょう。

数学IIIの問題では、極限を答える問題が多く、この「近似式を用いた答えの予想」ができるだけでも、役立つ場面はあります。

おわりに

ここでは、近似式について見てきました。数学の分野では直接使える場面は少ないかもしれませんが、応用の分野ではよく使いますし、答えの予想にも使えるので、マスターしておきましょう。

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