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【標準】二次近似式

ここでは、二次式で近似する方法を見ていきます。

📘 目次

二次近似

【標準】近似式で、いろいろな関数に対して、近似式を計算してみました。近似式をもう一度書いておくと、 $f(x)$ が微分できるとき、 $h$ が $0$ に近ければ\[ f(a+h) \fallingdotseq f(a)+f'(a)h \]が成り立つ、というものですね。

ここで、$f(x)=\cos x$ としてみます。こうすると $f'(x)=-\sin x$ なので、 $a=0$ のときは $f'(a)=0$ となってしまいます。そのため、\[ \cos h \fallingdotseq 1 \]となります。これは間違ってはないのですが、 $h$ を動かしても右辺が固定なのはちょっとイマイチですね。

$f(a)+f'(a)h$ は、 $h$ についての一次式なので、この式で近似する方法を一次近似といいます。近似するときに使う関数は他にもたくさんあります。予想できると思いますが、二次式で近似することもできます。

二次式で近似できる根拠は後半で説明するとして、もし近似できたらどういう式になるかを考えてみます。 $f(a+h)$ が $ph^2+qh+r$ で近似できたとしましょう。

このとき、 $h=0$ としたときの値は近くあって欲しいので、 $r=f(a)$ となっていてほしいですね。

また、微分をして、 $h=0$ としたものも近くあって欲しいです。値の変化の割合が近いということですからね。計算すると\[ q=f'(a) \]となります。

まだ $p$ がわかりませんが、同じ考えでいくと、2回微分をした後に $h=0$ としたものも近いという条件があるとよさそうです。接線の傾きも同じように変化する、ということですからね。これを計算すると\[ 2p=f^{\prime\prime}(a) \]となります。

結局、\[ f(a)+f'(a)h+\frac{f^{\prime\prime}(a)}{2}h^2 \]という式で近似すればよさそうだ、と予想できます。

実際、二次近似ではこの式を使います。この流れを踏まえると、三次や四次の近似がどうなるかも予想できるでしょう。

二次近似の根拠

それでは、上で見た二次近似の根拠を見ていきます。【基本】近似式で見たように、平均値の定理を用います。また、平均値の適用する関数は、上で見た答えの予想からうまく作ります(以下で出てくる $F(x)$ です)。

$f(x)$ は2回微分可能だとします。 $a\leqq x \leqq b$ とします。このとき、次のような関数 $F(x)$ を考えます。
\begin{eqnarray} F(x)=f(x)+f'(x)(b-x)+A(b-x)^2 \end{eqnarray}ここで、 $A$ は $F(a)$ が $f(b)$ と一致するように決めます。この $A$ は今は得体の知れない値ですが、あとでちゃんと式で表します。

こうすると、 $F(x)$ は微分可能で、 $F(a)$ も $F(b)$ も $f(b)$ となるので、等しいことがわかります。平均値の定理から\[ \frac{F(b)-F(a)}{b-a}=F'(c) \]かつ、 $a\lt c\lt b$ を満たす $c$ が存在しますが、分子は $0$ なので左辺は $0$ だから、 $F'(c)=0$ です。この微分を計算すると
\begin{eqnarray} F'(x) &=& f'(x) \\ & &+f^{\prime\prime}(x)(b-x)-f'(x) \\ & &-2A(b-x) \\[5pt] &=& f^{\prime\prime}(x)(b-x) -2A(b-x) \\[5pt] \end{eqnarray}となるので、 $F'(c)=0$ と $b\ne c$ から\[ A=\frac{f^{\prime\prime}(c)}{2} \]となります。

以上から、 $a\lt c \lt b$ で
\begin{eqnarray} f(b) &=& F(a) \\[5pt] &=& f(a)+f'(a)(b-a) +\frac{f^{\prime\prime}(c)}{2}(b-a)^2 \end{eqnarray}を満たす $c$ が存在します。ここで、 $b\to a$ のとき、 $f^{\prime\prime}(c) \to f^{\prime\prime}(a)$ なので、$b$ が $a$ に近いときは\[ f(b) \fallingdotseq f(a)+f'(a)(b-a)+\frac{f^{\prime\prime}(a)}{2}(b-a)^2 \]となります。 $h=b-a$ と置きなおすと\[ f(a+h) \fallingdotseq f(a)+f'(a)h+\frac{f^{\prime\prime}(a)}{2}h^2 \]となります。

こうして、二次近似の式が得られました。

二次近似
$f(x)$ を2回微分可能な関数とする。
$h$ が $0$ に近いとき、次が成り立つ。\[ f(a+h) \fallingdotseq f(a)+f'(a)h+\frac{f^{\prime\prime}(a)}{2}h^2 \]

これを使うと、冒頭で見た $\cos$ は次のようになります。
\begin{eqnarray} \cos h \fallingdotseq 1-\frac{1}{2} h^2 \end{eqnarray}例えば、 $1^{\circ}=\dfrac{\pi}{180}$ で考えると \begin{eqnarray} \cos 1^{\circ} & \fallingdotseq & 1-\frac{1}{2} \left(\frac{\pi}{180}\right)^2 \\[5pt] & = & 0.99984784\cdots \\[5pt] \end{eqnarray}となり、実際の値 $0.99984769\cdots$ と比べてもかなり近い値が得られることがわかります。

一次近似と誤差

二次の近似式を考える途中で
\begin{eqnarray} f(b) &=& f(a)+f'(a)(b-a) +\frac{f^{\prime\prime}(c)}{2}(b-a)^2 \end{eqnarray}を満たす $c$ が $a$ と $b$ の間にあることを示しました。この式の前半をよく見ると、一次の近似式となっています。そこで、上の式を次のように変形してみます。 \begin{eqnarray} f(b) -f(a)-f'(a)(b-a) &=& \frac{f^{\prime\prime}(c)}{2}(b-a)^2 \end{eqnarray}こうすると、 $f(b)$ とそれを近似した $f(a)+f'(a)(b-a)$ との差が右辺である、と見ることもできます。

$f^{\prime\prime}(c)$ の具体的な値がわからなくても、$a$ と $b$ の間での $f^{\prime\prime}(x)$ の最大値なら、ざっくりとわかることもあります。この最大値を $M$ とおくと、一次近似式による誤差は $\frac{M(b-a)^2}{2}$ 以下であるとわかります。

おわりに

ここでは、二次式で近似する方法を見ました。試験などでは、手計算が難しいので実際の値を用いた二次式の近似計算は出題されないかもしれませんが、一次近似のときと似た流れで示せることはおさえておくといいでしょう。

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