東京大学 理系 2023年度 第4問 解説
問題編
問題
座標空間内の4点 $\mathrm{O}(0,0,0)$, $\mathrm{A}(2,0,0)$, $\mathrm{B}(1,1,1)$, $\mathrm{C}(1,2,3)$ を考える。
(1) $\overrightarrow{\mathrm{OP}}\perp \overrightarrow{\mathrm{OA}}$, $\overrightarrow{\mathrm{OP}}\perp\overrightarrow{\mathrm{OB}}$, $\overrightarrow{\mathrm{OP}}\cdot \overrightarrow{\mathrm{OC}}=1$ を満たす点 $\mathrm{P}$ の座標を求めよ。
(2) 点 $\mathrm{P}$ から直線 $\mathrm{AB}$ に垂線を下ろし、その垂線と直線 $\mathrm{AB}$ の交点を $\mathrm{H}$ とする。 $\overrightarrow{\mathrm{OH}}$ を $\overrightarrow{\mathrm{OA}}$ と $\overrightarrow{\mathrm{OB}}$ を用いて表せ。
(3) 点 $\mathrm{Q}$ を $\overrightarrow{\mathrm{OQ}}=\dfrac{3}{4}\overrightarrow{\mathrm{OA}}+\overrightarrow{\mathrm{OP}}$ により定め、 $\mathrm{Q}$ を中心とする半径 $r$ の球面 $S$ を考える。 $S$ が三角形 $\mathrm{OHB}$ と共有点を持つような $r$ の範囲を求めよ。ただし、三角形 $\mathrm{OHB}$ は3点 $\mathrm{O,H,B}$ を含む平面内にあり、周とその内部からなるものとする。
考え方
(1)(2)は言われた通りに計算するだけですが、(3)で、(1)(2)をどう使うかを考えましょう。ベクトルや図形の性質を使えば、無駄な計算を減らすことができます。
球をそのまま考えるのは難しいので、ある平面で切って考えるといいでしょう。
解答編
問題
座標空間内の4点 $\mathrm{O}(0,0,0)$, $\mathrm{A}(2,0,0)$, $\mathrm{B}(1,1,1)$, $\mathrm{C}(1,2,3)$ を考える。
(1) $\overrightarrow{\mathrm{OP}}\perp \overrightarrow{\mathrm{OA}}$, $\overrightarrow{\mathrm{OP}}\perp\overrightarrow{\mathrm{OB}}$, $\overrightarrow{\mathrm{OP}}\cdot \overrightarrow{\mathrm{OC}}=1$ を満たす点 $\mathrm{P}$ の座標を求めよ。
解答
$\mathrm{P}$ の座標を $(p,q,r)$ とすると、 $\overrightarrow{\mathrm{OP}}\perp \overrightarrow{\mathrm{OA}}$ より内積が $0$ だから\[ 2p=0 \]であり、 $\overrightarrow{\mathrm{OP}}\perp\overrightarrow{\mathrm{OB}}$ より\[ p+q+r=0 \]であり、 $\overrightarrow{\mathrm{OP}}\cdot \overrightarrow{\mathrm{OC}}=1$ より\[ p+2q+3r=1 \]である。これらから、 $p=0$ であり、 $q+r=0$ と $2q+3r=1$ より $q=-1, r=1$ であるので、座標は\[ (0,-1,1) \]である。(答)
解答編 つづき
問題
(2) 点 $\mathrm{P}$ から直線 $\mathrm{AB}$ に垂線を下ろし、その垂線と直線 $\mathrm{AB}$ の交点を $\mathrm{H}$ とする。 $\overrightarrow{\mathrm{OH}}$ を $\overrightarrow{\mathrm{OA}}$ と $\overrightarrow{\mathrm{OB}}$ を用いて表せ。
解答
$\mathrm{H}$ は直線 $\mathrm{AB}$ 上の点なので、 $\overrightarrow{\mathrm{OH}}=(1-s)\overrightarrow{\mathrm{OA}}+s\overrightarrow{\mathrm{OB}}$ をみたす $s$ が存在する。このとき、\[ \overrightarrow{\mathrm{OH}}=(2-s,s,s) \]となる。
$\overrightarrow{\mathrm{AB}}\perp \overrightarrow{\mathrm{PH}}$ より
\begin{eqnarray}
(-1,1,1)\cdot (2-s,s+1,s-1) &=& 0 \\[5pt]
-(2-s)+(s+1)+(s-1) &=& 0 \\[5pt]
-2+s+s+1+s-1 &=& 0 \\[5pt]
3s &=& 2 \\[5pt]
s &=& \frac{2}{3} \\[5pt]
\end{eqnarray}となるから、\[ \overrightarrow{\mathrm{OH}}=\frac{1}{3}\overrightarrow{\mathrm{OA}}+\frac{2}{3}\overrightarrow{\mathrm{OB}} \]と表すことができる。(答)
解答編 つづき
問題
(3) 点 $\mathrm{Q}$ を $\overrightarrow{\mathrm{OQ}}=\dfrac{3}{4}\overrightarrow{\mathrm{OA}}+\overrightarrow{\mathrm{OP}}$ により定め、 $\mathrm{Q}$ を中心とする半径 $r$ の球面 $S$ を考える。 $S$ が三角形 $\mathrm{OHB}$ と共有点を持つような $r$ の範囲を求めよ。ただし、三角形 $\mathrm{OHB}$ は3点 $\mathrm{O,H,B}$ を含む平面内にあり、周とその内部からなるものとする。
解答
$\mathrm{O,A,B}$ で決まる平面を平面 $\alpha$ とし、 $\overrightarrow{\mathrm{OT}}=\dfrac{3}{4}\overrightarrow{\mathrm{OA}}$ とする。
(1)より、$\overrightarrow{\mathrm{OP}}$ は平面 $\alpha$ に対して垂直である。よって、 $\mathrm{Q}$ から平面 $\alpha$ に下した垂線は点 $\mathrm{T}$ で交わる。平面 $\alpha$ 上では、次のようになっている。($\mathrm{M,R}$ の定義は後述)
なお、座標から、 $\mathrm{AB}=\mathrm{OB}=\sqrt{3}$ と計算できる。
ここで、 $\overrightarrow{\mathrm{OH}}=\overrightarrow{\mathrm{OP}}-\overrightarrow{\mathrm{PH}}$ であり、どちらも $\overrightarrow{\mathrm{AB}}$ と垂直なので、 $\overrightarrow{\mathrm{OH}}\perp\overrightarrow{\mathrm{AB}}$ である。よって、 $\mathrm{T}$ から直線 $\mathrm{OH}$ に下した垂線の足を $\mathrm{R}$ とすると $\overrightarrow{\mathrm{OR}}=\dfrac{3}{4}\overrightarrow{\mathrm{OH}}$ となる。 $\mathrm{AB}=\sqrt{3}$ なので $\mathrm{AH}=\dfrac{2}{3}\sqrt{3}$ だから\[ \mathrm{TR}=\frac{3}{4}\cdot \dfrac{2}{3}\sqrt{3}=\frac{\sqrt{3}}{2} \]となる。よって、 $r$ の最小値は
\begin{eqnarray}
& &
\sqrt{\mathrm{TQ}^2+\mathrm{TR}^2} \\[10pt]
&=&
\sqrt{\mathrm{OP}^2+\frac{3}{4}} \\[5pt]
&=&
\sqrt{2+\frac{3}{4}} \\[5pt]
&=&
\frac{\sqrt{11}}{2} \\[5pt]
\end{eqnarray}となる。
次に、最大値を考える。 $\mathrm{OA}$ の中点を $\mathrm{M}$ とすると
\begin{eqnarray}
\mathrm{TB}
&=&
\sqrt{\mathrm{TM}^2+\mathrm{MB}^2} \\[5pt]
&=&
\sqrt{\frac{1}{4}+2} \\[5pt]
&=&
\frac{3}{2}
\end{eqnarray}であり、これは $\mathrm{OT}$ と等しい。よって、最大値は、$S$ が $\mathrm{B,O}$ を通るときであり、その値は
\begin{eqnarray}
& &
\sqrt{\mathrm{TQ}^2+\mathrm{TB}^2} \\[5pt]
&=&
\sqrt{2+\frac{9}{4}} \\[5pt]
&=&
\frac{\sqrt{17}}{2}
\end{eqnarray}となる。
よって、求める範囲は $\dfrac{\sqrt{11}}{2} \leqq r \leqq \dfrac{\sqrt{17}}{2}$ …(答)