東京大学 理系 2014年度 第3問 解説
問題編
問題
u を実数とする。座標平面上の2つの放物線
\begin{eqnarray} C_1 &:& y=-x^2+1 \\ C_2 &:& y=(x-u)^2+u \end{eqnarray}を考える。 $C_1$ と $C_2$ が共有点をもつような u の値の範囲は、ある実数 a, b により、 $a\leqq u \leqq b$ と表される。(1) a,b の値を求めよ。
(2) u が $a\leqq u \leqq b$ をみたすとき、 $C_1$ と $C_2$ の共有点を $\mathrm{ P }_1 (x_1,y_1)$, $\mathrm{ P }_2 (x_2, y_2)$ とする。ただし、共有点が1点のみのときは、 $\mathrm{ P }_1$ と $\mathrm{ P }_2$ は一致し、ともにその共有点を表すとする。\[ 2|x_1y_2-x_2y_1| \]を u の式で表せ。
(3) (2)で得られる u の式を $f(u)$ とする。定積分\[ I=\int_a^b f(u)du \]を求めよ。
考え方
(1)では、「グラフが共有点を持つ」条件を、方程式の解の条件で言い換えて考えます。(2)は、 y を x で置き換えてから、解と係数の関係を用いて u で表します。
(3)は置換積分です。ルートの部分があるとうまく計算できないので、ここが消えるように変数を置き換えます。一般的にはノーヒントで解くのは難しい問題ですが、東大の入試問題としては標準的な計算問題です。
解答編
問題
u を実数とする。座標平面上の2つの放物線
\begin{eqnarray} C_1 &:& y=-x^2+1 \\ C_2 &:& y=(x-u)^2+u \end{eqnarray}を考える。 $C_1$ と $C_2$ が共有点をもつような u の値の範囲は、ある実数 a, b により、 $a\leqq u \leqq b$ と表される。(1) a,b の値を求めよ。
解答
(1) $C_1$ と $C_2$ が共有点をもつことは\[ -x^2+1 = (x-u)^2+u \]が実数解を持つことと同値である。これは\[ 2x^2 -2ux +u^2+u-1 = 0 \]と変形できる。この判別式を D とすると、求める条件は $D\geqq 0$ となる条件なので
\begin{eqnarray}
u^2-2(u^2+u-1) & \geqq & 0 \\
-u^2 -2u +2 & \geqq & 0 \\
u^2 +2u -2 & \leqq & 0 \\
\end{eqnarray}となる。 $u^2 +2u -2 = 0$ の解は $u=-1\pm\sqrt{3}$ なので、この二次不等式の解は\[ -1-\sqrt{3} \leqq u \leqq -1+\sqrt{3} \]となる。
よって、 $a=-1-\sqrt{3}$, $b=-1+\sqrt{3}$ と求められる。
解答編 つづき
問題
(2) u が $a\leqq u \leqq b$ をみたすとき、 $C_1$ と $C_2$ の共有点を $\mathrm{ P }_1 (x_1,y_1)$, $\mathrm{ P }_2 (x_2, y_2)$ とする。ただし、共有点が1点のみのときは、 $\mathrm{ P }_1$ と $\mathrm{ P }_2$ は一致し、ともにその共有点を表すとする。\[ 2|x_1y_2-x_2y_1| \]を u の式で表せ。
解答
(2) $\mathrm{ P }_1$, $\mathrm{ P }_2$ は $C_1$ 上の点なので\[ y_1 = -x_1^2+1, \quad y_2 = -x_2^2+1 \]が成り立つ。よって
\begin{eqnarray}
2|x_1y_2 -x_2y_1|
&=&
2|x_1(-x_2^2+1) -x_2(-x_1^2+1)| \\
&=&
2|x_1x_2(x_1-x_2) +x_1-x_2| \\
&=&
2|(x_1-x_2)(x_1x_2+1)| \\
\end{eqnarray}となる。
ここで、(1)より $x_1$, $x_2$ は、ともに\[ 2x^2 -2ux +u^2+u-1 = 0 \]の解なので、解と係数の関係から $\displaystyle x_1x_2 = \frac{u^2+u-1}{2}$ が得られる。また、
\begin{eqnarray}
|x_1-x_2|
&=&
\frac{u+\sqrt{-u^2-2u+2} }{2} -\frac{u-\sqrt{-u^2-2u+2} }{2} \\[5pt]
&=&
\sqrt{-u^2-2u+2} \\[5pt]
\end{eqnarray}となる。よって
\begin{eqnarray}
2|x_1y_2 -x_2y_1|
&=&
2 \sqrt{-u^2-2u+2} \left(\frac{u^2+u-1}{2}+1\right) \\[5pt]
&=&
(u^2+u+1) \sqrt{-u^2-2u+2} \\[5pt]
\end{eqnarray}と表すことができる。
解説
ここでは途中で解の公式を使いましたが、 $|x_1-x_2|$ を求めるときに、2乗してから解と係数の関係を使う、という方法でも解くことができます。
解答編 つづき
問題
(3) (2)で得られる u の式を $f(u)$ とする。定積分\[ I=\int_a^b f(u)du \]を求めよ。
解答
(3)
\begin{eqnarray}
I
&=&
\int_a^b (u^2+u+1) \sqrt{-u^2-2u+2} \ du \\[5pt]
&=&
\int_a^b (u^2+u+1) \sqrt{-(u+1)^2+3} \ du \\[5pt]
\end{eqnarray}と変形できる。
ここで、 $u+1=\sqrt{3}\sin\theta$ とすると、 $\displaystyle \frac{du}{d\theta} = \sqrt{3}\cos\theta$ となる。また、 $u=a$ のとき $\sin\theta=-1$ で、 $u=b$ のとき $\sin\theta=1$ なので、
\begin{eqnarray}
I
&=&
\int_{-\frac{\pi}{2} }^{\frac{\pi}{2} } \{ (\sqrt{3}\sin\theta-1)^2 +\sqrt{3}\sin\theta \} \sqrt{-3\sin^2\theta+3} \times \sqrt{3}\cos\theta d\theta \\[5pt]
&=&
\int_{-\frac{\pi}{2} }^{\frac{\pi}{2} } ( 3\sin^2\theta -\sqrt{3}\sin\theta+1 ) \cdot 3\cos^2\theta d\theta \\[5pt]
&=&
6\int_0^{\frac{\pi}{2} } ( 3\sin^2\theta +1 ) \cos^2\theta d\theta \\[5pt]
&=&
6\int_0^{\frac{\pi}{2} } \left(3\cdot\frac{\sin^2 2\theta}{4} +\frac{1+\cos 2\theta}{2}\right) d\theta \\[5pt]
&=&
6\int_0^{\frac{\pi}{2} } \left(\frac{3}{4}\cdot\frac{1-\cos 4\theta}{2} +\frac{1+\cos 2\theta}{2}\right) d\theta \\[5pt]
&=&
6\int_0^{\frac{\pi}{2} } \left(\frac{7}{8} -\frac{3\cos 4\theta}{8} +\frac{\cos 2\theta}{2}\right) d\theta \\[5pt]
&=&
6\left[ \frac{7}{8}\theta -\frac{3\sin 4\theta}{32} +\frac{\sin 2\theta}{4} \right]_0^{\frac{\pi}{2} } \\[5pt]
&=&
\frac{21}{8}\pi \\[5pt]
\end{eqnarray}と求められる。
解説
$\sqrt{a^2-x^2}$ の形の積分は、 $x=a\sin\theta$ と置換するのが基本です。そのあとも、半角の公式や倍角の公式を使うなどの変形が必要ですが、東大の計算問題としては標準的なレベルです。なお、途中で奇関数の積分の性質を用いて、計算を一部簡略化しています。