東京大学 文系 2016年度 第2問 解説
問題編
【問題】
A、B、Cの3つのチームが参加する野球の大会を開催する。以下の方式で試合を行い、2連勝したチームが出た時点で、そのチームを優勝チームとして大会は終了する。(a) 1試合目でAとBが対戦する。
(b) 2試合目で、1試合目の勝者と、1試合目で待機していたCが対戦する。
(c) k試合目で優勝が決まらない場合は、k試合目の勝者と、k試合目で待機していたチームが$k+1$試合目で対戦する。ここでkは2以上の整数とする。なお、すべての対戦において、それぞれのチームが勝つ確率は$\frac{1}{2}$で、引き分けはないものとする。
(1) ちょうど5試合目でAが優勝する確率を求めよ。
(2) nを2以上の整数とする。ちょうどn試合目でAが優勝する確率を求めよ。
(3) mを正の整数とする。総試合数が$3m$回以下でAが優勝する確率を求めよ。
【考え方】
状況が複雑なので、まずはありうるケースを書き出して考えてみましょう。
(1)では、まず1試合目でAが勝つかBが勝つか、2通りあります。
もし1試合目でAが勝った場合、2試合目でAが勝つと2試合目で優勝してしまうことになるので、2試合目は「A対C」でCが勝つケースしかありません。3試合目でCが勝つとCが優勝してしまうので、3試合目は「B対C」でBが勝つケースしかありません。4試合目の勝者がBだとBが優勝してしまうので、4試合目は「A対B」で勝者がA、そして、5試合目は「A対C」でAが勝って優勝する。Aが5試合目で優勝するには、このケースしかありません。
同じように考えると、1試合目でBが勝った場合、2試合目は「B対C」でCが勝つ、3試合目は「A対C」でAが勝つ、4試合目は「A対B」となりますが、このとき、4試合目でAが勝つとこの時点でAは優勝、Bが勝つと5試合目でAが優勝することはありません。つまり、1試合目でBが勝った場合、5試合目でAが優勝するケースはないことがわかります。
以上のことから、優勝が決まらないためには、「前の試合で勝ったチームが次の試合で負ける、前の試合で待機していたチームが勝つ、前の試合で負けたチームが待機」の場合しかないことがわかります。そのため、1試合目でAが勝ったとき、その後どのチームが勝つかは1通りに決まり、Bが勝った時も1通りに決まってしまいます。
これを使って、(2)を解いていきます。(2)ができれば、(3)はそれを使った計算問題です。
解答編
【問題】
A、B、Cの3つのチームが参加する野球の大会を開催する。以下の方式で試合を行い、2連勝したチームが出た時点で、そのチームを優勝チームとして大会は終了する。(a) 1試合目でAとBが対戦する。
(b) 2試合目で、1試合目の勝者と、1試合目で待機していたCが対戦する。
(c) k試合目で優勝が決まらない場合は、k試合目の勝者と、k試合目で待機していたチームが$k+1$試合目で対戦する。ここでkは2以上の整数とする。なお、すべての対戦において、それぞれのチームが勝つ確率は$\frac{1}{2}$で、引き分けはないものとする。
(1) ちょうど5試合目でAが優勝する確率を求めよ。
(2) nを2以上の整数とする。ちょうどn試合目でAが優勝する確率を求めよ。
(3) mを正の整数とする。総試合数が$3m$回以下でAが優勝する確率を求めよ。
【解答】
(1)
kを2以上の整数とするとき、$k-1$試合目でXが勝ちk試合目でXとYが対戦するとき、そのk回目の試合を「X-Y」と書くことにする(XとYはA・B・Cのどれか)。
2試合目は、「A-C」か「B-C」しかない。
2試合目が「A-C」の場合、2試合目で優勝者が出ないためにはCが勝つしかなく、3試合目は「C-B」となる。同様に、4試合目は「B-A」、5試合目は「A-C」とならなければいけない。5試合目でAが勝つと、Aが優勝する。
一方、2試合目が「B-C」の場合、先ほどと同様に考えると、3試合目は「C-A」、4試合目は「A-B」、5試合目は「B-C」とならなければいけない。しかし、この場合Aが優勝することはない。
よって、1試合目から5試合目までの勝者が「ACBAA」となる場合しかないので、求める確率は、$\frac{1}{2^5}=\frac{1}{32}$となる。
(2)
ずっと優勝が決まらないとすると、2試合目が「A-C」のとき、3試合目以降は、「C-B」「B-A」「A-C」となり、以降これが繰り返されることになる。つまり、lを正の整数とするとき、$3l$試合目は「C-B」、$(3l+1)$試合目は「B-A」、$(3l+2)$試合目は「A-C」となる。もしn試合目でAが優勝するには、「A-C」の試合でAが勝つ場合しかない。よって、$n=3l+2$のときしかない。このとき、優勝する確率は、各試合で勝つチームが1通りしかないので、$\displaystyle \left( \frac{1}{2} \right)^n$となる。
2試合目が「B-C」の場合も同様で、ずっと優勝が決まらないとすると、3試合目以降は、「C-A」「A-B」「B-C」となり、以降これが繰り返されることになる。つまり、lを正の整数とするとき、$3l$試合目は「C-A」、$(3l+1)$試合目は「A-B」、$(3l+2)$試合目は「B-C」となる。もしn試合目でAが優勝するには、「A-B」の試合でAが勝つ場合しかない。よって、$n=3l+1$のときしかない。このとき、優勝する確率は、各試合で勝つチームが1通りしかないので、$\displaystyle \left( \frac{1}{2} \right)^n$となる。
以上から、求める確率は以下の通りとなる。
nが3の倍数のとき:0
nが3の倍数でないとき:$\displaystyle \left( \frac{1}{2} \right)^n$
(3)
(2)より、求める確率は、$\displaystyle \left( \frac{1}{2} \right)^n$をnが1から$3m$まで足し、nが1のときと3の倍数のときを引けばよい。よって、
\begin{eqnarray}
& & \sum_{n=1} ^ {3m} \left( \frac{1}{2} \right)^n -\frac{1}{2} -\sum_{n=1} ^ m\left( \frac{1}{2} \right)^{3n} \\[5pt]
&=&
\frac{\frac{1}{2}\left(1-\frac{1}{2^{3m} }\right)}{1-\frac{1}{2} }
-\frac{1}{2}
-\frac{\frac{1}{8}\left(1-\frac{1}{8^m}\right)}{1-\frac{1}{8} }
\\[5pt]
&=&
1 -\frac{1}{8^m} -\frac{1}{2} -\frac{1}{7} +\frac{1}{7\cdot 8^m}
\\[5pt]
&=&
\frac{5}{14} -\frac{6}{7\cdot 8^m}
\end{eqnarray}となる。
【解答終】
【解説】
いろんなケースがあるように見えますが、書き出してみると2試合目以降の勝者は自動的に決まっていくことがわかります。そのことに気づけば、難しくはないでしょう。